アニメの『劇伴』(ゲキバン)についてのまとめ。
第四回は、二回目の「劇伴の作り方」からこぼれてしまった内容をいくつか。
使われ方を理解する
劇伴の使い方を考えるのは、選曲、音響監督、監督など、音楽家とは違う役割の人ですが、
どう使われるのか、演出がわかっているほうが逆算して作れるので、よい劇伴になる。
どのシーンのどこに、どういった音楽がつくのか、どこから音楽がはじまるのか、どう終わるのか、など。
テンポ感
音楽をつける場面のテンポ感を考えて作る。
基本的に、実写よりもアニメのほうがテンポが速い。また、作品によってもテンポが違う。
ざっくりですがBPMで区切ってみました。
BPM70~85
気持ちが沈んだ時、より落ち着いている場合
BPM85~100
通常の会話。
会話の内容を聞かせたい場合、音楽はBPM100くらいまでにする。
BPM100~120
歩くような、動きのある軽快なテンポ
このくらい速いテンポになると、会話がサラッと流れていくような印象になる。
BPM130~
元気、動きのあるテンポ。
ダンス曲のように、音楽が場面のテンポ感を引っ張るようになる。
BPM180~200
騒がしく、まくし立てるような印象。長くは使わない。
リズムや音の入れ方、拍子やハネるかどうかでテンポ感も変わってくる。
BPMは心拍数とも密接な関係があるとかないとか。
感情のグラデーション
劇伴は細かく複雑な感情のグラデーションを表現しなければいけない。
例えば、嬉しい時はどういう風に嬉しいのか。
底抜けに「やったー!」という感じなのか、自分の中からジワジワと湧き上がってくるような嬉しさなのか。走り出したくなるような、ワクワクする嬉しさ、それとも、軽くスキップするような嬉しさなのか。
それに合わせてリズムや和音の使い方も変化させていく。
悲しみ
悲しい場面を表現するとき、普通の3和音の、どマイナーでコテコテのメロディを入れてしまうとクサくなってしまう。
そういったものはむしろギャグのシーンで使われる。
大切な人が死んで、絶望的に悲しいときは、ほとんど音をつけないほうが悲しかったりする。
そういう音の作り方は、演出の理解力も必要になる。
笑い
直接的に、音楽そのもので笑わせるということはほとんどない。
パロディくらい。
「この素晴らしい世界に祝福を!」は音楽を使って笑わせている場面と、そのバリエーションが多い
第1話「この不当な裁判に救援を!」
■3:53~ 情けないシーンに情けない曲、といったストレートなもの、
■3:45~ 過剰に演出している
■9:05~、12:45~ 真剣な音楽をぶつ切りにする。
真剣な音楽ほどフリがきくので、ぶった切るような使い方をすると面白くなる。
おまけ
タカノユウヤさんのエントリーから
■アニメーションの劇伴にはどんな特徴がある? 『犬夜叉』など国内外の作品をもとに解説
アニメーションは「映像そのものから得ることができる情報が実写に比べると少ない」ため、実写よりも劇伴や効果音の数が非常に多く必要となるのだ。
おわりに
一応これで劇伴まとめは一区切りとしますが、今後も研究していきます。
参考リンク
内容的には90%くらいこの方たちから得た情報です。
■スキャット後藤さん(@scatgoto )
・ブログ「へなちょこ作曲家、スキャット後藤の南房総生活」
■井内 啓二さん (@inai909 )
・コラム「劇伴一直線」
■タカノユウヤさん(@yuya_27957 )
・ブログ「劇伴とその表現についてのメモ」
スキャット後藤さんとの対談もおすすめ。