今回から、映画やテレビドラマ、演劇やアニメで流れる伴奏音楽である「劇中伴奏音楽」の略、『劇伴』(ゲキバン)についてのまとめを何回かに分けて書いてみます。
ドラマ、映画、舞台など、劇伴にも色々ありますが、主にアニメ劇伴の話が中心です。
第一回目はアニメ劇伴の種類。
どういう場面、どこにつけるために使われる音楽なのか、という役割の分類です。作るときにも、どういう役割を担う曲なのか、というのを考えて作るのが重要です。
劇伴の種類
・情景曲
・感情曲
・状況曲
・状況内音楽
大ざっぱに4つに分けました。実際は混ざっていることもある。
情景曲
美術を補って作品の世界観を作る背景的、景色的な曲。
各1話の冒頭はほとんどが情景曲で始まる。
場所を説明するため、場面が切り替わったときに流れることも多い。
■例『けものフレンズ 1話「さばんなちほー」』冒頭~
■例『凪のあすから 第1話「海と大地のまんなかに」』00:55~
感情曲
登場人物の感情に対してつけられる曲。
人物そのもののキャラクター、感情の細分化とその変化、演出、会話のテンポ感などを把握し、表現する。
少しでもズレると台無しになってしまうので、個人的には劇伴で最も難易度が高い。
ほとんどの場合セリフと同時に流れるため、あまり記憶に残らない。
例えば主人公の女の子がクラスメイトの男の子に、自分の好意を伝えるといったベタなシーンを想像してみて下さい。 最初から相手のことが好きで好きでたまらず押しまくりな場合って、音楽も最初からある程度旋律が乗り易いのですが、 逆に友人として話しているうちに相手への恋心に気付いて会話の最中に刻々と心情が変化していく場合、 その変化が訪れるまでは明確な旋律が乗せづらかったりします。そもそもこの場合、音楽が先行してメロウな旋律を 歌い始めると、音楽としての台詞が先に主張してしまうことになるので、観客は主人公の気持ちがどこへ向かうのか、 会話を聞かずとも結末が解ってしまう、という壮大なネタバレを引き起こしてしまう可能性があるんですね。
基本的には私たちが生活していて感じる数々の心情を音楽として転化したものになるわけですが、 監督さんから「悲しい音楽を書いて下さい」とだけオファー頂いたとしても、愛する人を失った悲しみなのか、 今朝の髪型がバッチリ決まらなかった程度のものなのか、掘り下げる必要があるわけです。 意外と国語の読解力が必要とされる分野なのではないか、と常々思っています。
■【2】劇伴音楽における演出論 其の壱 | 【ROCK’in MAILMAN COLMUN】劇伴一直線 by 井内 啓二
■例『俺物語!! 第1話 俺のものがたり』16:54~
繊細な感情表現ですね。はっきりと恋に落ちる音は楽ですが、こういった曖昧な音を書くのは難しい。
状況曲
戦闘やチェイスシーン、ホラーな場面などにつけられ、その状況を説明するもの。バトルもの、スポーツものに多い。
叙情曲や情景曲は、映像の中にあるものを表現したものが聴こえている、という感じだけれど、こちらは外に向けて説明したり、そう感じさせたり、演出のフリだったりということが多い。
ピンチの時の曲や、いわゆる「勝利確定BGM」もこれ。
■例『ダイヤのA -SECOND SEASON- 第1話 真夏の咆哮』6:35~
ダイヤのAの劇伴はテレビでもよく使われていて、状況曲のお手本が詰まっています。
■例『競女!!!!!!!! 第1話「瀬戸内競女養成学校!!!!」』13:53~
まっとうにスポーツものの状況曲をつけていて、それがお笑いとしての面白さにつながっている。
■競女!!!!!!!! 第1話「瀬戸内競女養成学校!!!!」 | プライム・ビデオ
状況内音楽
テレビ、ゲーム、ショッピングモールの放送、キャラクターが楽器を演奏している音など、映像の中で実際に流れている音楽。
感情を暗喩したり、悲しい時にあえて明るい音楽が流れている(対位法)、というのも状況内音楽を使った演出ではよくある。
状況内から状況外(実際に流れてはいないが映像にはつけられている曲)に途中で変化する事もある。
■例『エロマンガ先生 #1「妹と開かずの間」』5:51~
アニメの中での生放送内で流れている曲。
■例『響け!ユーフォニアム 第1話「ようこそハイスクール」』18:30~
実際に楽器を演奏するシーンが多く、どう感情と絡ませていっているのか、というのが聴きどころ。
おわりに
劇伴というのは、景色や感情、場面、あらゆるものを音楽として表現する能力が必要なんですよね。
勉強の整理がてら書いていくので、学びがあったらその都度更新します。
参考リンク
内容的には90%くらいこの方たちから得た情報です。
■スキャット後藤さん(@scatgoto )
・ブログ「へなちょこ作曲家、スキャット後藤の南房総生活」
■井内 啓二さん (@inai909 )
・コラム「劇伴一直線」
■タカノユウヤさん(@yuya_27957 )
・ブログ「劇伴とその表現についてのメモ」