Q.デバイスによって違う音量・音質に困惑しています。A.大きく4つの原因が考えられます。

Q&A

Q.デバイスによって違う音量・音質に困惑しています

質問者
DTM初心者で、クラシック楽曲を作りたく、色々と検索する中、こおろぎ様のブログにたどり着きました。

交響曲までいきませんが、三重奏程度の曲を自作し、何とか各種プラグインを使って10曲ほど音圧・音量もそろえ、モニタースピーカーでチェックしています。

曲(特に音量)同士に差がないよう注意して何とか聞ける程度になったのはいいのですが、今度はそれらをiPhoneやMP3プレーヤーに同期して聴くと、ボリュームを上げたら音割れしたり、高音の「サー」というノイズが目立ったりで、とても他者に聞かせられるシロモノではなくなっているのです。

Youtubeのプロモーションピデオなどをイヤホンで聴くと、さすがにエンジニアのかたの腕でしょうか、最大音量にしても、音は確かに大きくなりますが、音割れや「サー」というノイズは全くありません。

それは、エンジニアさんのご技量やプロ仕様の機材のためでしょうか。それとも、楽曲自体に完璧なミキシング・マスタリングがなされていたら、どんなデバイスに読み込ませても上記Youtubeのように「音割れ」や「ノイズ」など発生しない、と解釈してよいのでしょうか。

色んなモノで聴けば聴くほど「こっちはいいけど、あっちはダメ」と落ち込んでばかりで、「CDに焼く」という当初の目的に進めないのです。。。

「デバイスによっての違い」に関して、ご教示・ご助言のほどよろしくお願い致します。

A.大きく4つの原因が考えられます

こおろぎ
楽曲自体にきちんとしたミキシング・マスタリングがなされていたら、様々なデバイスで再生させても、音割れやノイズは発生しにくくなります。

エンジニアさんはあらゆる方法、場所で音楽が聴かれることを想定してミックス・マスタリングをしています。

また、技量や機材などの差もありますので、原因は1つだけではなく、複合的なものです。

デバイスによって違う音量・音質になってしまう可能性は大きく4つの原因が考えられます。

1 音源
2 モニター
3 編曲、ミキシングの周波数バランス
4 音圧

1 品質のよい音源を使う

sax

音質がよい音源ではないと、倍音が少なく、周波数の山が鋭く、ピーキーなので、音量を上げた時に歪みやすくなります。

特に三重奏などの、音が少ないアンサンブルにおいては顕著です。

また、そういったピークをミックスで修正することも難しいです。単体でも鳴りがよい音源を買いましょう。

総合音源ではなく、専用の音源のほうが個々の質が高いです。

EAST WEST、8Dio、VIENNAなどは有名ですね。

■EAST WEST

■8Dio

■VIENNA

私は、ストリングスはAudio broのLa Scoring Stringsを使っています。

■La Scoring Strings | Audio bro

自分のよく使う楽器から1つずつ揃えていくのも手だと思います。

2 音がよく見えるモニター環境を

speaker

そこそこのオーディオインターフェイス、モニタースピーカーできちんと音作りできれば、どの機器で再生しても音割れやノイズは発生しにくくなります。

デバイスによってノイズが聴こえる、というのも、モニターに聴こえない周波数がある等の問題かもしれません。

オーディオインターフェイスについては、古いものでなければ、最近のものはある程度品質がよいので大丈夫かなと思います。

なるべくはヘッドフォンではなくスピーカーで作業したほうがよく、スピーカーはリスニング用ではなく「モニタースピーカー」がよいです。

サイズは大きい方が低音は出ますが、そのぶん音量を出さないときちんと鳴りきらないので、普段作業する音量を考慮して選びましょう。

あと、アンプ内臓の「パワードスピーカー」ならアンプを買う必要がないので、そちらがおすすめです。

はじめて買うのであれば、YAMAHAのHSシリーズあたりがコストパフォーマンスが高く、よさそうです。

created by Rinker
ヤマハ(Yamaha)
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ちなみに私は、オーディオインターフェイスはRME Fireface UC、モニターはFOSTEXのNF-01Aを使っています。

IK Multimediaの音響補正プラグインARC System 2もおすすめです。

■ARC System 2 | IK Multimedia

3 周波数に偏りがない編曲、ミキシング

mix

編曲やミキシングで周波数に急な山ができないようにすること。そうすることで環境によって音量と音質のバランスが崩れるのを防げます。

これは耳とアナライザーを使って調節します。モニター環境がイマイチでも、アナライザーである程度は補えるはずです。

アナライザーで見た時、100Hzあたりをてっぺんにして、なだらかな山型になるのが基本です。
新しいSkitchファイル_021516_100509_PM

音圧だけを考えるのならば、この線はまっ平らになったほうがいいのですが、人間の耳は高域のほうがよく聴こえるので、平らにするとシャリシャリしたサウンドになってしまいます。なので、これが聴感上でフラットに聴こえる基本形です。

実際に見ていきましょう。

良い例。全体的になだらかになっていますね。若干低域と高域が上がった、「ドンシャリ」なサウンドになっています。

GIF-compressor

悪い例。飛び抜けた周波数があると、音量が上がりにくく、歪みやすい。

2-compressor

低域が多く、中域が少ないと、低域が出ないような小さいスピーカーで聴いた時、中域で補えないのでスカスカに聴こえます。また、エネルギーも偏っているので、低域が無くなったら音量も大きく下がったように聴こえるでしょう。

フラットに近いほうが再生環境の影響を受けづらいのはこのためです。

編曲では、同じ音を重複しすぎたり、ボイシングのバランスが悪いと周波数バランスに偏りが出てきます。美しく聴こえるボイシングは周波数も美しい。

周波数に偏りがない編曲をすることで、ミックスも楽になります。

4 適切な音圧があるか

wave

「サー」というノイズに関しては、音圧が低すぎて再生機器自体のノイズが聴こえている、というのも原因としてありえます。

CDに収録するのであれば、音圧はRMS-10dbあたりが基本ですが、オーケストラ系の作品であればそこまで出さなくてもよいです。

オーケストラ系だと、コンプレッサー、リミッターはあまり使わず、音量が大きい所だけボリュームのオートメーションで下げたり、盛り上がりが持続している部分だけリミッターで抑える、といった感じで、音質を保ちつつ適度に音圧を上げます。

また、1曲の中で音量差が激しいと、再生機器によってダイナミクスの感じが違ってくるとは思います。それはオーケストラ系の宿命みたいなものなので、あまり気にしないようにしましょう。

おわりに

結局のところ、お金を使わないで改善できるのは3、4のみなので結局は課金ゲーなのですが、3、4を気をつけているだけでもかなり違うと思います。

できる範囲でやって、マスタリングだけエンジニアさんにやって頂くという選択肢も考えておくとよいかもしれません。

では。