【第一回】 テレビドラマ劇伴の仕事をもらうまでの流れ【スキャット後藤、こおろぎ対談】

音楽でメシ

先日、私、こおろぎはMBS・TBSドラマ「となりの関くんとるみちゃんの事象」の「となりの関くん」のドラマの中で流れる音楽、いわゆる「劇伴」を担当しました。

■MBS・TBSドラマ「となりの関くんとるみちゃんの事象」 公式サイト

はじめてのテレビドラマ劇伴ということで、戸惑ったことやわからない事が多く、大変苦労しました。

そこで、これから劇伴の仕事をやりたい方の参考になればいいなと思い、「となりの関くん」の音楽プロデューサーで、十数年テレビの劇伴、CMの仕事をしているスキャット後藤さんと劇伴について対談をして、それを公開することにしました。

出せる情報は全部出していきたいと思いましたので、対談の内容に捕捉や編集を入れています。

というわけで、第一回は「スキャット後藤さんとこおろぎの出会いから、テレビドラマ劇伴の仕事をもらうまで」です。

スキャット後藤
こんにちは。スキャット後藤です。
こおろぎ
こおろぎです。
スキャット後藤
ここのところ一緒に仕事をいくつかやって、なんかこれコンテンツにできると面白いかなと思ってね。
こおろぎ
はい、面白そうです。
スキャット後藤
面白そうです(笑)このテンションの低い感じ(笑)2人ともしゃべりなれていないっていうね。

つながりはTwitterから

スキャット後藤
こおろぎ君と初めて会ったのは2014年かな?

もともとは僕がTwitterで全然意識なく適当にガーっとフォローしてた中の1人で。

ツイートも読んでいたのか読んでないのかよくわからないけども、でもたまに見ると、ああ、なんか面白いこと書いてるなっていう。

こおろぎ
割と無意識な感じで。
スキャット後藤
割と無意識な感じで。で、こおろぎ君のブログを目にすることが多かったのかな。

音楽で飯を食うにあたって、自分の仕事の取り方だったりとか、収入を書いたりとかしてるところとか、この人なんなんやろみたいな(笑)

僕の普段仕事をしているスタンスと全然違うやり方でやっているのが面白いなと思って。すぐそういう人に興味を持ってしまうので。

フリーランスでもテレビの劇伴はできる

スキャット後藤
Twitterで最初にやり取りしたのって覚えてる?
こおろぎ
「フリーランスでアニメの劇伴できないのかな」ってツイートしていたところに後藤さんが「できますよ」って返信してきたのが最初ですね。

スキャット後藤
そう、それ覚えてる。

若い子とかを見ていると「事務所入らないとなになにができない」みたいな。

声優さんでもそうだし、作曲家でも、そういう人はやっぱり多くて、でもそれは学校でそういうふうに教えられてたりとか、本にそういうふうに書いてあるとか、知らない人はそう思っちゃうから。

でも僕はずっとフリーランス、2000年にフリーになったので15年目かな?

こおろぎ
ずっとフリーなんですよね?
スキャット後藤
もともとはゲーム会社に入っていたこともあるけれども、ほぼずっとフリーでやってて。

テレビの番組やったりとか、CMとかやってきた。フリーでは小っちゃい仕事が多かったりはするけども。それでもテレビアニメもやったこともあるし、ドラマの劇伴とかもやったりしてたので。

フリーランスだとできないっていうのを書いてて、すぐ、できるよみたいな感じで返信して(笑)

仕事のギャラのこととかも「こういう場合だといくらぐらいでないと仕事がもらえない」とか、こおろぎ君が書いているの見て、僕は「いや違うぞ、違うぞ」と思って。

こおろぎ
(笑)
スキャット後藤
そういうことじゃないぞ、みたいな。例えば会社に所属してて仕事をすると、1曲5万で受けれるけども、フリーだとこれぐらいしかもらえないみたいなことなら書いてたことがあった。
こおろぎ
なんかどっかに書いてましたね。
スキャット後藤
そうそう、それを見ながら、ああ、なんか違う、違うから教えてあげたいって、おせっかいな感じだけども。

僕も仕事をする上で、従来のやり方ではなくて、自分のスタンスでやっぱりやりたいなっていうのがあって。

もともとCMにしてもテレビの音楽にしても、どういう経緯でやっていいのか全然わからずにずっとやってきたっていうか。たまたま頼まれたから、誰も教えてくれる人もいないので。

だから自分がやっていることが正解かどうかもわかんないけども、いろんな仕事をしていくとプロダクションが変わったりディレクターとかプロデューサーが変わると、あ、これは共通のやり方なんやなって思ったりとか、そこで知っていって。

こおろぎ
なるほど(笑)
スキャット後藤
教えてくれる人がいないので。もう用語とかなにもかも、仕事の進め方もわかんないから。

で、そんなやりとりがちょろっとあって、それからだいぶ経って、noteでちょっとしたやり取りがあったんやね。

内容はちょっと覚えていないんやけども。それで、noteで話せる内容じゃないっていうか、一言で終わることじゃないなと思って。

僕が、「会おうよ」みたいな感じになって、いつかの昼、新宿で会うことになったよね、新宿三丁目のお店でお昼を食べたのを覚えてる。それがつきあいの始まりやけど、でも多分1年ぐらい前とか、2014年かな。

こおろぎ
そうですね。多分2014年だと思います。
スキャット後藤
で、去年で、それから1,2回会ったぐらいなのかな。飲み会に誘ったのあったよね。
こおろぎ
はい、忘年会。
スキャット後藤
忘年会は、音楽関係の、30歳前後で売れている作曲家さんもいたり歌い手さんがいたりとか、結構すごいいろんな人が。
こおろぎ
すごいメンバーでした…
スキャット後藤
まあそういうのとか、あれもいたよね、NAKEDさんの忘年会。あれも不思議な面白い人がいろいろね。

普段ネットのやり取りだけでは会わないような人たちのところに1回連れて行ってみようみたいな感じで(笑)

こおろぎ
(笑)

メモ

声をかけていただいたのはTwitter、Blog、noteなどがきっかけでした。そういった自分のメディアがあるというのが活きましたね。現代においてソーシャルのつながりの重要性は無視できません。

レスポンスの早さは大事

スキャット後藤
それで、具体的に仕事したのは今年入ってから?
こおろぎ
はい、そうだと思います。
スキャット後藤
ちょっと情報解禁になっているかどうか分かんないけど、ゲームの仕事を2本やったよね。
こおろぎ
はい、そうですね。短い間隔で。
スキャット後藤
PS VITAとスマホのゲームBGMの。20曲とか30曲ある中の数曲やってもらった感じ。
1回仕事してみたいなと思ったときに、頼める案件がたまたまあったっていうのがあります。

で、それから結構立て続けに仕事をお願いしてて、こおろぎ君のやり取りを比較的やるようになって、ああ、この人ちゃんとやる人やなっていう。作る曲がどうのこうのではなくて、その仕事のレスポンスのよさだったりとか。

※そのスマホのゲームはこちら。

スキャット後藤
で、それ見てたから仕事としてはすごい安心で。やり取りしてても「ああ、ちゃんとここまではわかってる、考えている人なんやな」っていうのは。

偉そうで申し訳ないけどそういうふうに思ってて。

こおろぎ
そこが大事なんですね。
スキャット後藤
レスポンスは仕事において大事。

初めてやる人だったりとか、これから仕事をやろうとしてる新人、若手の人なんかは、仕事のやり方っていうのがわかってないから。仕事に対する覚悟とか考え方とかどこまで、っていうのが。意気込みはすごく強くあるんだけども。

で、レスポンスが悪い人っていうのがたまにいて。

1回ボーカリストやりたいって資料もらっていたのか、僕がたまたま知り合ったからホームページかなんかニコ動かなんか見て、聴いて、ああなんかいい声やなと思って、その人にこういうCMのオーディションがあるっていうのをメールかなんかで送ったら、5日ぐらい返ってこなかったことがあって(笑)

しばらくは結構レスポンスよかったけど、ピタッと止まって、返信が5日後みたいなこともあって。

僕なんか仕事の依頼みたいなことがあって、例えば着信が残っているとかメールで、こういう仕事あるんですけどいけますか?ってなると、とりあえずやるっていう意志は伝えておかないと、って思って。

そうじゃないと「ほんなら次の人にお願いしようかな」「この人だめかもしんないな」ってやっぱり考えちゃうし。

早めに返さないといけない連絡はすぐ返す。

特に新人など、仕事のやり方が把握出来てない人はこまめに連絡をとって確認しながら進めるとよいですね。

こおろぎ君に(劇伴を)お願いしたら話としては面白いなと思って(笑)

スキャット後藤
あれいつかな電話したの。いつもはメールで「こんな仕事あるけどどう?」って言ってた気がするけど。
こおろぎ
はい、いつもはメールですね。
スキャット後藤
その前に僕はこおろぎ君のTwitterを見ていて、「めっちゃくちゃ忙しい」って書いてたけども。

最初のやり取りをしたときに「フリーランスでもアニメの仕事ができますよ」って軽くリプライしたけども、これをこおろぎ君にお願いしたら話としては面白いなと思って(笑) アニメじゃなくてドラマやけど。

こおろぎ
面白いです(笑)
スキャット後藤
それもいきさつがあって、

「となりの関くん」っていうのと「るみちゃんの事象」っていう、10分ちょっとものの2本立てドラマで「るみちゃんの事象」のほうを僕はお願いをされていた。

で、プロデューサーから「もう1つのとなりの関くんっていうほうの音楽が決まってなくて、誰かいませんかね~」っていうの言われてたけど、3回目ぐらいの連絡のときに「後藤さんやらないですか?」みたいなこと言われて。

普通なら「やりますよ」って言うところを「いや僕はいいっす」っていう(笑)

こおろぎ
なんでそう返事したんですか(笑)
スキャット後藤
なんとなく。
こおろぎ
なんとなく。
スキャット後藤
で、そのとき「後藤さん経由で誰かいませんか」みたいな話があって、もうパッとこおろき君が浮かんで。

そのプロデューサーに「ちょっと1人浮かんだので連絡してみるので、明日返事をするのでちょっと待ってもらえますか?その人がもしだめやったら僕のほうでは無理かも」みたいなことを伝えた気がする。

で、こおろぎ君に電話をして「ちょっと仕事の相談があるんだけども」みたいな。

となりの関くんっていうドラマがあって、その劇伴をって電話をしたら、なんか心なしか震えている感じが、電話越しに伝わってきて。それは忙しいからこれ以上仕事を詰め込むと、っていうことなのか。

こおろぎ
いろんな動揺が入ってましたね(笑)
スキャット後藤
仕事が、果たしてちゃんとできるのかなということもあったのかもしれないし、ちょっとそれは僕にはわかんないけども。

今まではやってた仕事はどういうのが多かったんですか?

こおろぎ
いつもはゲームや歌モノがほとんどなので。舞台の音楽はやったんですけど、ドラマの劇伴は初めてで。

その不安もありつつ、忙しいのもありつつ、どうしようかなと。一瞬考えたんですけど「やります」って割と早く答えたような気がします。

スキャット後藤
うん、いやもうすぐ言ったよ(笑)やりますって。

「忙しいけど大丈夫?」って言ったら「やります、なんとかします」みたいな。で、すぐ僕はプロデューサーに連絡して「やる人がいたのでお願いします」みたいな。

でもプロデューサーに「こういう音楽を作る人にお願いします」とか、プロフィールとか一切送ってないけどね(笑)

「見つけたんで、お願いすることにしましたから」みたいな感じで。監督に「こういう人にお願いしたいんですけど」っていう話をしたわけでもなく。

そのプロデューサーとは何回も仕事をしている人だったので、っていうのもあるかもしれなけど。で、実際劇伴をやることになりました。

こおろぎ
なりました!
・レスポンスは早く

どうやって仕事をもらうのか、そこまでが一番むずかしいんじゃないのかなと思います。

仕事の規模が大きくなるにつれ、人づたいになるんですよね。いわゆる「コネ」。

この、コネクションの作り方は色々な方法があるはず。僕は、営業や人と交流するのが苦手なので、メディアで一方的に発信し続けるという方法をとってます。

あとは、普段から1つ1つの仕事をきちんとやる。とにかく誠実に仕事をして信頼をしてもらう事が大事だなと思ってます。

関連リンク

【第二回】 テレビドラマ劇伴のスケジュールについて
【第三回】 「サントラを聴いているだけでは劇伴はできない」テレビドラマ劇伴のつくりかた
【第四回】 「漫才、コント、テレビを見てきたことが活きている」テレビドラマ劇伴の上達方法
【第五回】 テレビドラマ劇伴のMA、監督の違い、音楽学校について

プロフィール

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スキャット後藤

 
へなちょこ作曲家。京都市出身。かわいくてたのしくてちょっといじわるな音楽をつくってます。TV :「となりの関くんとるみちゃんの事象」「太鼓持ちの達人」「俺のダンディズム」「殺しの女王蜂」「A-Studio」「きらきらアフロ」Game :「シバ・カーリーの伝説」「POSSESSION MAGENTA」

■ツイッター @scatgoto
■Webサイト http://www.cutecool.jp/

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