プロドラマーの神田リョウ氏(@tatakiyagroove )にドラムのことを聞くシリーズ、【第一回】の続き、第二回「打ち込みフレーズ編」です。
フレーズについてはあまり聞く予定ではなかったんですが、話題に出てきたのでまとめました。
ハイハットと人間らしさ
DAWにはヒューマナイズっていう、タイミングを揺らす機能があるんだけど、それを使ってランダムに揺らしただけだと人間の揺れ方じゃないんだよね。そこが難しくて。
強拍がジャスト気味で、弱拍は揺れが大きいとか。叩く場所や音色も強拍と弱拍で違ったりとか、複雑で。
その微妙なニュアンスがやっぱ難しいんだろうなと思って。
ライドとかはこう、ふわーっていう成分でごまかせるんですけど。ハイハットだけは難しいんだろうなっていう人が多い。
「ハイハットだけ叩きに来てほしい」っていう現場もありましたからね(笑)
でもハイハットが生で入るだけでも全然違いそう。
足で踏んで、開き具合を調整して、叩く場所で音が変わるっていう。
打ち込みで、ライドにいってるときの左足のゴーストモーションがかすかに入ったりしてると結構うれしい。
だから、前は生の演奏の左足を見て、いつ踏んでるか、っていうのをずっと確認してた。
あとニュアンス…ですよね。課題は。
ハットはやっぱね。ライドもそうだと思うんだけど、一番ごまかしが効きづらいっていう。
そこまで人間上手に叩けないぞ、っていう意味で、いい意味で人間っぽくっていうか、やむを得ない部分を表現するのが難しい。
ドラマーだったら叩いてるだけでそのグルーヴになるけど、打ち込みは数字で調整していかないといけないから。
人間のグルーヴを具体的な数字に落とし込まなきゃいけない、っていう辛さがあって。
セオリーで「何ティックずらす」って書いてあっても、実際のテンポや曲調で数字が全然違うから意味がない。
スネアのゴーストノート
自然なニュアンスをつけたくて入れてるゴーストノートが不自然になっちゃってるからもったないなって思って。
それだったら入れないほうがいいんじゃないか、っていう。
ループ集にはゴーストノートも入れたりしてるんですけど。そういうの欲しいかなあって思って。
人間っぽくしようとすればするほど不自然になってる部分って、皮肉にもあるなあって。
4音以上同時に鳴っていなければある程度人間っぽくはなる
あとは、同時発音数は間に合ってるけど、フレーズの運び的に厳しい時がある。
フィルインで「どうやってもその速度ではそこにはいけないんだよ」っていうのが感覚的にわかったりするんですよね。
それだとどっちかの手が2度打ちになって難しい。
レコーディングでクオリティ高いデモ曲が送られてきて、「これを完コピでお願いします」っていうときに「あれ、腕1本足りない」みたいなのがあったりする。
でも、フィルを考えてる時、これいけんのかな?とか結構あるけれど、実際は考えてもわからないからそのままにしちゃえ、っていうのも結構多い。
フレーズとして良ければ別にいいと思うけども。叩いてもらうなら気にしないとダメだけど。
縦の揃え具合
音符で書くと、クラッシュとキックと揃ってるんですけど、実際は微妙にそろってなかったりするんですよ。
「ドチ」みたいな。
でも揃ってないからかっこいいっていうビートもあったりして。
縦をそろえようってすると、それだけでタイトな感じになるんですよ。演奏は。
そういう部分かな。あえて揃えないグルーヴというか、そういうものが持ってる人間っぽさ、っていうのがあるし。
完璧すぎないかっこよさみたいなのが打ち込みでもあるといいすね。
HIPHOPとかだと、MPC叩いてたりとか、あえてズレてるのがカッコいいっていうJ Dilla的な発想もあるし。多様化してるとは思うけど。
僕も基本ジャスト気味で、揃ってるのが気持ち悪かったらズラすし、逆にズレてるのが気持ち悪かったらそろえる。
誰かが叩いているつもりで打ち込んでみる
「あの人のライドシンバルはどんな音だったっかな?」みたいな。やっぱり結構聴き込まないときついのかな。
ギターやベースだと、音が1つしかないから「その人の音」っていうのがすごくわかりやすいんだけど。
このサウンドってあのひとじゃない?とか。
たぶん同じくらい聴かないとわからないというか。好きになりすぎないと、見えないかもしれないっすね。
どういう人が叩いてるか、っていうのをイメージしてキットを選ぶってのは結構重要かもしれない。
「あの人っぽいギター」っていうのと同じで。あのドラマーっぽいサウンドで、その人が叩いているイメージで打ち込んでいくといい感じでヒューマナイズされたりとか。
たぶん、自分が叩こうとするイメージでやるから迷うんかな、っていう。
誰かが叩いているつもりで打ち込むといいかも。
プロフィール
神田リョウ
ダンスで培ったリズム感とグルーヴ、表現力には支持が厚く、幅広い音楽性に裏打ちされたダンスビートは特に評価が高い。メジャー、インディーズを問わず活動を展開する。
【織田哲郎】、【BoA】、【WHITEJAM】、【井上苑子】等のツアードラマーとしての参加や、日本最大級のストリートパフォーマンス集団 【TAPJAMCREW】のプロデューサー兼ドラマーとしても活動する。
またKORG社製品デモンストレーターの顔も持ち、ドラムをはじめ、パーカッションから電子打楽器まで使いこなす”踊れるドラマー”。
その他、インストバンド『Fango Inc.』、リズム&ドラム・マガジン 連載セミナー『#月イチ1グルーヴ』、ドラムループ集『EDOMAE LOOPS -RYO KANDA & TRIP edition-』発売。など。
Instagramに毎日投稿するドラム演奏動画『#一日一グルーヴ』も話題。
■Twitter(@tatakiyagroove )
■ドラムループ集『EDOMAE LOOPS -RYO KANDA & TRIP edition-』
スネアのニュアンスとか、ゴーストの感じとか、キックの感じとかはいいグルーヴ作れてたりするんですけど。
どうしても、ハイハットと、ライドのあたりの金物が。
ライドは、ふわーっていう成分でまだごまかせるんですけど、ハットがどうしても難しいんだろうなと思ってて。
打ち込みだったら、グリッドどおりに、チ、チ、チ、チ、チ、チ、って書いていけばもちろん早いんですけど、人間だから、そうなりようがないから。
二拍とかでもチ、チ、チ、チ、チ、チ、チ、チ、っていうダイナミクスがあって。
そこの、微妙な人間っぽさが出づらいんですよね。
自分でハイハットだけ買って録るほうが早いんじゃねーかって思うくらい。