アニメの『劇伴』(ゲキバン)についてのまとめ。
三回目は僕が勝手に選ぶアニメ劇伴の参考作品。
今まで紹介したものも含んでいます。
エロマンガ先生
テンポの緩急、感情の振り幅を柔らかい音で、最小限の音数で表現している、お手本のような劇伴。
日常的な会話のものから、ストーリーを展開する音楽まで。
黒子のように、存在感を感じさせないけれど、物語の雰囲気や演出をしっかり支える音楽になっている。
まだ終わっていない作品だけれど、基準となる作品だと思ったので。
■音楽 : 菊谷知樹
ダイヤのA
緊張感や熱気を感じる、スポーツもの劇伴の参考。
音自体はシンプルだが効果的で、ニュースでも利用頻度が高い。
スポーツもの特有の、時間が長く引き伸ばされる「カイロス時間」の音楽のつけかたや、試合中に同じような場面が続くときに、どう緩急をつけていくのか、というのも注目ポイント。
1期の1話はそういった曲があまりなかったので、2期の1話。
■音楽:Frying-Pan(Tom-H@ck)
この素晴らしい世界に祝福を!
音楽を使ったコメディの演出の参考。
ストレートに笑わせるものや、シリアスな音楽ををフリにして笑わせている場面など、バリエーションが多い。
ほとんどの場面に音楽がついており、使われている量も多い。
またもや1期の1話はそういった曲があまりなかったので、2期の1話を張っています。
■音楽:甲田雅人
競女!!!!!!!!
こちらは「このすば」と違い、音楽で笑う雰囲気にする場所がないが、ギャグ作品になっている。
すごく変なことをやっているのに、通常のスポーツもののようなシリアスで熱い音楽がついていることによって、面白さが引き立っている。
全話を通して、純粋なギャグタッチで笑わせる場所が1箇所しかない。
1話だと13:54~がわかりやすい。
■音楽:松尾早人
物語シリーズ
記号化された映像と同調している音楽。
ミニマルな音楽とまくしたてるような会話のリズム感が長く続き、トランス状態のような感覚に陥る。
1話だと16:21のようなシーン。
■音楽:神前 暁
ARIA
ほとんど景色にしか音楽がついていない作品。
音楽で緊張させる場面がほとんどないので、ずっとゆったり見ることができる作品になっている。
恥ずかしいセリフ禁止!
■音楽 Choro Club feat. Senoo
トムとジェリー
動きに音をつける「ミッキーマウジング」の参考。
ミッキーマウジングについては、音を合わせるほど低年齢向けな演出になると言われている。
これほど映像に音楽を合わせるとなると、技術的には超難しい。
■曲 スコット・ブラッドリー(Scott Bradley)
サムライチャンプルー
江戸時代の日本が舞台だが、HIPHOPを取り入れ、全体的にアングラな雰囲気になっている。
尖ったコンテキストで音楽を入れるとスタイリッシュになる、という作品の参考。
こういう演出は一見カッコいいですが、見る人の感情が入り込まない危険性もあるので、狙いすまして使用する必要がある。
■音楽 Tsutchie、fat jon、Nujabes、FORCE OF NATURE
新世紀エヴァンゲリオン
要所でクラシックを使い、通常とは違うコンテキストで音楽を入れることによって、独特のスタイリッシュさが出ている。
それ以外の音楽も、効果的で覚えやすく、かつ作家性も強くて素晴らしい。
もはや古典ですが、見ておく価値がある作品ですね。
■音楽:鷺巣詩郎
おわりに
まだまだありそうな気がしますが、とりあえず思いついたものを書いてみました。
分析するときには「どういう意図でどういうものを作るべきか」というところまで落とし込んで、実際に作るときには似た作品を参考にせず自分の感覚で作っていく、というところまでいけるとよいのかなと考えています。
多くの場合、1話は「つかみ」になり、他の話とは音楽の使い方が違うので、紹介しづらいという学びもありました。
参考リンク
劇伴の知識は90%くらいこの方たちから得ました。
■スキャット後藤さん(@scatgoto )
・ブログ「へなちょこ作曲家、スキャット後藤の南房総生活」
■井内 啓二さん (@inai909 )
・コラム「劇伴一直線」
■タカノユウヤさん(@yuya_27957 )
・ブログ「劇伴とその表現についてのメモ」