防音室は買うとめちゃくちゃ高いので、作ってみようかな、という方も多いと思います。
僕の家の防音室は自作なのですが、そういったDIYミュージシャンのために費用など詳細の解説と、設計図を公開してみようと思います。
この防音室はバラしての移動も比較的簡単で、釘ではなく全部ネジで組み立てるので、切ってもらった材料を発注すれば静かに組み立てられます。
詳細
■主な用途
・ボーカル、笛、小さなパーカッションの練習、レコーディング
・ギターの練習
■外寸
幅101cm × 奥行き121cm × 高さ222cm(換気扇含まず)
■内寸
幅80cm × 奥行き100cm × 高さ197cm
■重量 約150kg
■遮音性能 D-35
■費用 材料費6万円
用途 ボーカル
主にボーカル録音、レコーディングを行うボーカルブースとして使用しています。
あとはリコーダー、ピアニカ、タンバリン、シェイカ-などの録音。アンプだけ入れて、リアンプするのにも使えそうです。
大きさ 0.8畳
ヤマハ、アビテックスの0.8畳タイプに近いです。
図 | 定型タイプの防音室 AMCVA08H
僕の作業部屋は5畳なのですが、ものすごく圧迫感があります。中は狭く、アコースティックギターは練習ができてもレコーディングは無理です。配線、机の設置を頑張ればゲーム実況は出来そう。
重さ 150kg
住宅の積載荷重は180kg/㎡なので人が入るとギリギリアウトな気がします。重量は正確に量ってはいないのですが。
組み立ては天井の設置以外は1人でできます。バラしはかろうじて1人でできました。
遮音性能 D-35
体感的には、ボーカルはどんなに大きな声で叫んでも話し声程度。サックスは筒抜けて聴こえます。パーカッションの低音も漏れます。数字上ではヤマハのアビテックスと同じ性能ですが。
記事を書くにあたって遮音性能を計測してみました。発生する音-聴こえてくる音=遮音性能です。
iPhoneアプリ「騒音計 – サウンドレベルメーター」でバッハ様の曲を計測
防音室内 75dB
防音室の外 40dB
75-40=35
ということでD-35 ということにしましたが、きちんとした機器、測り方ではないので、正確ではないと思います。参考程度で。
費用 6万円
タッカーや電動ドライバーは必須なので、買わなければならない方はその費用も追加になります。
※追記 2016.2 資料が見つかり、5万円から6万円に訂正しました。
外観
上の方。カメラの都合で画面に収まりません。ベースの大きさと比較してみてください。
入り口側。天上ギリギリ。
入り口側、下の方。
裏側の換気扇。
型番は ナショナル 気調換気扇 FY- 12ZH1
夏場は換気扇だけでは暑いです。ブースの外でエアコンを付けていても暑い。長い時間ブースで練習、録音する方はエアコンの導入を検討したほうがいいです。
配線用の穴。
壁に中と外を繋ぐキャノンプラグが取り付けてあったんですが、マイクからケーブル1本でプリアンプに繋いだほうが接点が少なくなって絶対音がいいよね、ということで外しました。
所々ネジをサボって手抜き工事になっております。お父さんごめんなさい。なお、接続は全てネジです。
入り口。ゴムがあって隙間が開かないようになってる。
蝶番。ここも締めた時に隙間が開かないようになってます。
内観
それでは中に入りましょう。正面。
レコーディングの時に反射音を入れないようにするため、ボーカルの声が当たるほうに突っ張り棒で毛布を吊るしてます。
機材は
・マイク Blue dragonfly
・ポップガード Stedman Proscreen
・ヘッドフォン SONY NDR-CD900ST
・ヘッドフォンアンプ SAMSON S-MONITOR
・マイクスタンド
・譜面台
・USBカメラ
このマイクスタンドはブーム形ですが、片手で調節できるストレートスタンドのほうが楽でいいと思います。
譜面台は、折りたためないタイプのほうががっしりしてていいと思う。または譜面台を使わずに、譜面を直接吊るすクリップのようなものを使うのも場所をとらなくていいかも。
USBカメラは配信用です。ブース内とのやりとりのために使うのもいいと思う。今思いつきました。
中のパネルは等間隔に穴が空いている有孔ボード。反射音が多いので、もっと穴が大きいもので良かったかな。
有孔ボードの効果は防音ではなく吸音。裏に貼ってあるグラスウールが穴を通ってきた音を吸います。穴の凸凹で反響音がまろやかになる効果もあるらしい。穴に金具を通してヘッドフォン掛けにもしてます。
正面の上にはエアコンの吸入口。低音が結構出るので、静かな曲の時は切っておいたほうが良さそう。電源アダプターはヘッドフォンアンプのものです。
上から。僕の体が入らざるをえなかったのですが、狭さが伝わると思います。
下から。非日常感がいい感じ
最後にグルっと動画で内部全体。狭いですね。
構造
パネルを6枚作って、組み合わせて箱を作る要領で制作しています。
これならば引っ越しや移動させる時にバラバラにせず、パネルまで分解して持ち運べばいいのです。
パネルの断面
内側から発せられる音を有孔ボードの穴からグラスウールで吸音、外側に遮音シートを配置し、そこまでの音を遮音。
グラスウールはこんな感じで端っこをタッカーで貼り付けました。写真は参考にお借りしたものです。
図 | 防音工事実施(施工現場実況中継)- タンノイのヨークミンスター/TANNOY YORKMINSTER
グラスウールを調べてみましたが”低音域から高音域まで幅広い吸音特性”らしいです。厚みは10cmあるとよさそう。200Hz辺りから下の低音にはあまり効果がないようです。
図 | 旭ファイバーグラス株式会社 – グラスウールの吸音性・防音効果
設計図配布
せっかくなので実際の設計図を配布します。
こんな感じで、工程が書いてあります。
すべてのページの観覧、ダウンロードはこちらから。
改善点
新しく同じような防音室を作るとしたらどう改善するか、考えました。
ブチルテープがベトベトしてくるので使わない
ブチルテープというもので色々な所を貼り付けてたんですが、引っ越しの時にめちゃめちゃベタベタして黒いものがいたる所にくっついて大変でした。ベタベタしないやつを使いましょう。
エアコン導入
とにかく暑いので、エアコンを導入したほうがよいのかなとは思うんですが、直接取り付けるとうるさそうなので、ダクトみたいなのを作ってそこから送り込むようにしてはどうか。大工事になりそうな予感。
下に防振支持を噛ませる
防音室の下にゴムか何かを噛ませて床を浮かせると防振性能が上がるっぽい。ドラムなど、打楽器を入れないならそこまで効果を感じないのかもしれないけど。
もっと広くする
狭いと楽器も入らないし、反射音もよくない。ギターくらいは入ってほしい。
壁を斜めにする
反射音をまろやかにするため、なるべく平行に向かい合った面を減らしたい。設計とか作るのが大変そうだけど。
道具
主にタッカーと電動ドライバーの2つ。グラスウールの断熱材カッターも必要かも。
タッカー
グラスウールを貼り付けます。
電動ドライバー
大量にネジを使うのでこれがないと手が死にます。充電式ではなく、有線のほうがバッテリーの劣化がなくてよいです。
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断熱材カッター
グラスウールを切ります。めちゃくちゃチクチクするので気をつけましょう。
材料は注文するお店で全部切ってもらえばいいと思いますが、場合によってはノコギリ等も必要になってくるでしょう。
市販の防音室まとめ
参考に簡潔ですが市販のものをまとめてみました。
僕が防音室を作った200x年は安い防音室が存在していませんでしたが、近年はだんぼっちなど、作る値段と変わらない安価なものもありますね。
D-30くらいが一般的みたいですが、スペック上ではわからない防音性能の違いもあるとは思います。
レンタルがあります。遮音性能 Dr-30。価格48万円〜と最も高価。
大きい「トール」のほうでも79,800円と、かなり安い。防音性能はD-30程度と十分。耐久性、時間経過による劣化には弱そう。
周りを囲うだけのシンプルな作りなので、移動が簡単そう。性能は(-30dB/1kHz)と意外によい。低音には弱そう。222,200円。
詳細不明。約30万円。
おわりに
演奏家が楽器を買うように、ボーカリストは防音室を買ってもいいんじゃないの、と前から言っております。
長い目で見るとスタジオやカラオケに行くよりも安いし、環境音が入らないレコーディングがすぐできるし、たまに叫べるしいいことずくめです。自宅に1つ防音室はいかがでしょうか。
ここまでいかにも僕が作って来たかのように書きましたが、以前シェアハウスをしていた、バンド「雨ニモ負ケズ」のメンバー、sotti(@sotti_amenimo )のお父さんに設計図、材料の用意、主な制作をしていただきました。今回の設計図公開も許可をいただきました。ありがとうございました。
参考
防音対策.comというサイトに防音等の仕方がわかりやすく書いてあるので記事を書くのに参考になりました。
設計図をもう一回。
※追記
Youtubeで紹介しました。
内装をいろいろいじりました。