Q.NIの規約にサウンドライブラリへの使用はダメだと書いてあるのですが、ストックサービスへの登録はできますか?
III. 使用範囲
8.~この製品(特に、サンプル、インストゥルメント、プリセット)をサウンドライブラリ、サンプルライブラリ、サンプルベースの製品またはその他の音楽インストゥルメントの作成のために使用すること、あるいは各種シンセサイザー用のサウンドライブラリやバーチャル・インストゥルメントとして使用することは固く禁じられています。
A.できます。
この規約の「サウンドライブラリ」というのは「音源などの製品内で読み込むサウンドのライブラリ」というような意味で、「ストック型サービスに登録した楽曲」のことではないと考えられますので、問題ないと思います。
せっかくなので念のため、こおろぎの顧問弁護士、佐藤宏紀さんに聞いてみました。
まず第一印象として、駄目だとは思えないですね。
この「エンドユーザー用使用許諾契約」の禁止事項は、Native Instruments(以下、NIといいます。)がやってほしくないことをNIが禁止するためにあるわけです。
NIが自社のインストゥルメントを「ストック型サービスに登録する楽曲」の制作に使ってほしくないと言い出したら、客がSpectrasonicsやIK Multimedia等に逃げてしまいます。
そういうのに使う用のライセンスが別にあるんなら話は別ですけど、ないですから。すると、この契約書で禁止されているとしたらNIのシェアが本当に減りますよね。
ですから、駄目だとは考えにくいですね、契約書を読む前からもう。
しかしまあ、「音楽ライブラリ」に使うなと書いている会社もあるにはあるようですね。
例えば、作曲家AさんがX社の製品xを使って作って「みんな使ってね」って配布した楽曲aを、作曲家Bさんがサンプリングして楽曲bを作ったような場合には、作曲家BさんはX社に金を払わずに製品xを使うことになりかねないので、そういうのは困るよということでしょう。
そういう会社が禁止するのも「音楽ライブラリ」への使用であって、単発の1曲への使用ではないですけどね。
では、NIの契約書を具体的に読んで検討してみましょう。
契約は、①文言を読んで、そこから②契約当事者の意思を読み取って、解釈されます。
まず、①文言の話をしましょう。
問題は、「エンドユーザー用使用許諾契約」の「III. 使用範囲」の第8項でした。
この第8項は、冒頭の部分でまず「使用できます」が書いてあって、続く部分に「禁じられています」が書いてある構成です。
冒頭の「使用できます」の部分を見てみます。要するに、「サウンドライブラリ」が「提供する」「サンプル、インストゥルメント、プリセット」は「使用できます」ということです。
「サウンドライブラリが購入製品の一部である場合、EULAに加えて以下が適用されます(サウンドライセンス同意)。
提供されたサンプル、インストゥルメント、プリセットは、サウンドライセンス同意の規定のもと、Native Instrumentsによる事前の同意なく、商用または非商用の音楽・サウンド制作に使用できます。」
ということは、ここにいう「サウンドライブラリ」というのは、「サンプル、インストゥルメント、プリセット」を「提供する」もののことのようです。
そこから考えると、続く「サウンドライブラリ(略)の作成のために使用すること(略)は固く禁じられています。」の「サウンドライブラリ」も、「サンプル、インストゥルメント、プリセット」を「提供する」ものを意味することになりそうです。
要するに、KONTAKTのサンプルのライブラリとか、MASSIVEのプリセットのライブラリとか、そういうもののことでしょう。
また、ストック型サービスのサイトを適当にいくつか見てみても、「サウンドライブラリ」の文字列は見当たらないです。
ここから考えても、文言上、「サウンドライブラリ」をストック型サービスの楽曲群を含むように読むのは難しそうです。
ただ、「サウンドライブラリ」をストック型サービスの楽曲群を含むように読むのも絶対に無理というものでもないですけどね。
サウンドの一種が音楽だ、ストック型サービスは音楽をライブラリにして売ってる、と言われたらまあそうかなという気もしてきます。
というわけで、文言だけでははっきりしないので、次に、②契約当事者の意思を考えましょう。
NIは何をされたくなくてこの条項を書いたのでしょうか?
意味がわかりやすい部分を読めばよくわかるでしょう。
「音楽インストゥルメントの作成のために使用すること、あるいは各種シンセサイザー用のサウンドライブラリやバーチャル・インストゥルメントとして使用することは固く禁じられています」等と書いてありますね。
これは例えば、KONTAKT音源のサンプルとか、MASSIVEのプリセットとかを使って、新しくVSTiを作ったりとか、他のサンプラー(LogicのEXS24とかAIRのStructureとか)用の音源を作ったりとか、そういうことをするなよということです。
この第8項全体を、そういう目的で書かれた条項だと思って読むと、この「サウンドライブラリ(略)の作成のために使用すること(略)は固く禁じられています。」の「サウンドライブラリ」を、ストック型サービスの楽曲群を含むように解釈するのはやはり難しいと思います。
おわりに
完全に言い切ってもらったのでスッキリしました。
実は、僕もフリーBGMを始めたときにこの問題は悩みました。他のデベロッパーの規約ですが。似たような言葉が多くて混乱しますよね。
規約関係について、もうちょっと突っ込んで調査中です。ではでは。
弁護士、佐藤宏紀さんへのご相談は以下へ
佐藤さんはご自身でも音楽を制作されていて、音楽方面への理解が深いです。
該当の部分は以下です。