【第一回】【第二回】に続き、ドラムについてプロドラマーに聞いてみたシリーズ三回目。
今回は雑談に近い話題。
引き続き神田リョウ氏(@tatakiyagroove )との対談形式です。
理解するのが難しい楽器じゃない?
レジェンドを聴いてほしい
ドラムのセレクトはレジェンドの演奏がベーシックというか、スタンダードになってる気はしてます。
音源をサンプリングしときのプレイヤーの音のイメージもおそらく、レジェンドの演奏なんですよね。
ロックだったらジョン・ボーナムがいて、ツェッペリンのサウンドに近くなってるとか。
そういうのを聴くと見えてくるかもしれない。なんでこのセットの音がラインナップとして選ばれてるかっていうのもわかるかもしれないっすね。
「聴いておくべき、世界が選ぶ偉人ドラマー100選」みたいなページあったりするじゃないすか。まとめサイトとか。
あの辺は全部聴くっていうのは勉強になると思ってて。
わりと著名人の名前が連なってるんですけど、そこには理由があるからで。
それを聴くとイメージってつくと思う気はするんですよね。
で、その時代とか年代によってサウンドも違うから、そういうのも見えてくるし、それが一つのグローバルスタンダードだと思って聴くのもいいと思います。
そうしていくと、なんとなく「このセットはあの人のイメージだな」とかわかるんで、そうすると選びやすくなってくるんじゃないすかね。
ドラマーと打ち込みの人の考え方
例えばEDMとか、ほんとにナマっぽくないR&Bとか、あんまり頭にクラッシュを入れるっていうのがそんなに多くないような気がしてて。
それより、切り替わる前にリバースが入ってたりとか。そこで合図を送ってる気がしてるんですよね。
たぶん解釈のしかたがちょっと違ってて。
ロックとかポップスの歌モノは頭にクラッシュ入ってるんですけど。
でも、R&Bとかは入れちゃうとダサくなっちゃったり。
残響よりもむしろアタック感のほうが必要なのかな?みたいな。
例えばHIPHOPとかR&Bでも、頭ににクラッシュの代わりに808のカウベルの音がコーンって入ってたりとか。
「チーン」だけの1発だけのほうがいいのかな?みたいな。
新しいサウンドはないの?
ドラムって音色の方向性はそんなに多くなくて。いろんなところが色んなものを作ってるから種類はいっぱいあるけど。
ドラムセット自体は、一番新しいタイプの楽器なんですよね、現代的な。でも、打楽器って考えると一番プリミティブだから。
結局ドラムセットが担ってる部分ってそんなに進化してない。
ドラムで歌うような、メロディックなドラミングもあったりはするんですけど、基本的にはバンドの屋台骨を支えることの方が圧倒的に多い。
やっぱり今の時代でも「1930年、40年代くらいの古臭い音が欲しいんだよね」っていう時があるってことは、その根本的にはあんまり変わってないことだと思ってて。
そういう意味でいうと、DTMのほうがよっぽど進化しているような気がします。
だから「クラップが乗るからチューニングはちょっと下げとこう」っていう発想になったりするし。
あとは、生ドラムにトリガーしてキックにアタックを増やしたりとか。ライブでもRECでもそういう考え方ですね。
その意味でトラックメイカーの人たちの考えてるスネア1発とかキック1発とかのほうが、俺はクリエイティブだなって思う。
「誰々っぽい感じのサウンドで」と言われたときは
結構そうやって言われて、ブチ切れて帰る、とかっていう武勇伝はちょいちょい聞きますけど。
でも、やっぱり、それを言う人にはイメージがあるんですよね。
それを、なんとなく理解するときって、そのイメージが浮かんだ時で。その人だったらこう叩くかな、って考えて叩いたりする。
ヒップホップっぽい感じのドラムって考えたら、トラックメイカーのサウンドをイメージするときもあるし、逆に、クエストラブみたいなドラマーを想像するときもあるし。
そういうときって、頼めないから代わりに呼んだんじゃなくて、イメージしたサウンドに近いプレイヤーを言ってるだけなんだよね。
ポイントを押さえつつ、自分のサウンドを出してけばいいと思う。
ドラマーっていろんなジャンルに対応できるイメージってない?
大体の音楽のルーツがダンスビートだったりするんですけど。4つ打ちとか。
4つ打ちの曲ってだいたい打ち込みでなんとかなったりするんですよね(笑)
ロックもやるし、なんでもやりたいカメレオンドラマーです。
でも、ドラマーってわりといろんなジャンルに対応できるイメージはあると思ってて。それもドラムキットのくだりと関係あるのかな。
スタジオ系ミュージシャンと、バンド系ミュージシャンは根本的に違う感じだし。
スタジオ系の人も、ジャズは全くですっていうタイプの人もいるし。逆に、ジャズはできるけどビート物は弱いとかあると思うし。
まあ、通ってるか通ってないかだけだったりするんですけど。
僕の出身がジャズだったから、ジャズは苦手だなと思いつつもきたらやる。ビートのほうが好きだけど。
ただ、ロックのセットでジャズをやるのは結構大変ですね。
ジャズっぽいセットってのはある程度、決まったサウンドがあるから。
ロック仕様になってるセットでジャジーに演奏すると、そこまで鳴らなくていいのに…みたいなサウンドになっちゃう。
レコーディングの仕事が減っているのでは?
「いやおめーの努力不足じゃね?」って思うところはやっぱあって。あんま言いたくないけど。
でも、そうやって淘汰されるもんだとも思ってて。
ループ集を出したんですけど、
■ドラムループ集『EDOMAE LOOPS -RYO KANDA & TRIP edition-』
「なんでお前がループ集出したんだよ」みたいな話になるじゃないですか。「それがあれば、ドラム頼まなくてもよくなっちゃうじゃん」って。
でも、ループ集出したのは「やっぱ生のドラムっていいよね」って思ってもらえたらいいなと思って。
急にヴィンテージっぽいサウンドが流行ったりとか。でもまたこう、パキッとしたものがきて、今またBack to 80’みたいな感じになってるじゃないですか。
人の感覚ってこう、飽きては思い出して飽きては思い出しての繰り返しな気がするから。
そうなってこう、一つの自分のループが入ったときに「あ、なんか生の音っていいよね」ってどっかでなればうれしいし。
まあ自分なりのHIPHOPでもあるんですけど。そのループ集を出したこと自体が。
盛り上がればいいなと思って、とにかく、業界が。
だから、むしろ打ち込みをする人に、こう、「どうやったら生のドラマーっぽくなりますか?」
みたいなものはめっちゃアドバイスしたいんですけどね。
「こうするとすげー生っぽいから意識するといいよ」とか、全然伝えたいっすもんね。
俺はドラム自体はなくならないと思ってるから。特性上。
元々ライブの楽器だと思ってるんで。
もちろんその、レコーディングの現場はたぶん、なくなりようがないと思うんですよね。
そのライブの音が最終的に欲しいってなったときには、叩かなきゃいけない。
一緒にやったらいいじゃん、みたいな。
そうじゃなくて「いいものを一緒に作る」っていうことだけ考えたら関係ないはずなんですよ、ほんとうは。
「仕事がなくなっちゃうからやめてくれよ」っていう気持ちならわかるけど、それを音楽のせいにしちゃいけなくて。
打ち込みをやる人には打ち込みをやる理由があって、プレイヤーにはプレイヤーの理由があるから。
それはシェアしたほうがいいと思ってる。
おわりに
プロドラマーに聞くドラムのお話はこれでおしまいです。
キットのことだけ聞くつもりが、かなり色々話していただいちゃいました。
プロフィール
神田リョウ
ダンスで培ったリズム感とグルーヴ、表現力には支持が厚く、幅広い音楽性に裏打ちされたダンスビートは特に評価が高い。メジャー、インディーズを問わず活動を展開する。
【織田哲郎】、【BoA】、【WHITEJAM】、【井上苑子】等のツアードラマーとしての参加や、日本最大級のストリートパフォーマンス集団 【TAPJAMCREW】のプロデューサー兼ドラマーとしても活動する。
またKORG社製品デモンストレーターの顔も持ち、ドラムをはじめ、パーカッションから電子打楽器まで使いこなす”踊れるドラマー”。
その他、インストバンド『Fango Inc.』、リズム&ドラム・マガジン 連載セミナー『#月イチ1グルーヴ』、ドラムループ集『EDOMAE LOOPS -RYO KANDA & TRIP edition-』発売。など。
Instagramに毎日投稿するドラム演奏動画『#一日一グルーヴ』も話題。
■Twitter(@tatakiyagroove )
■ドラムループ集『EDOMAE LOOPS -RYO KANDA & TRIP edition-』
だから、最近、楽器を買うのにハマってるんだよね。楽器って触ったほうがわかるから。
でも、ドラムセットはさすがに買えない。その点でもやっぱり、身近じゃないから理解するのが難しい楽器だなと思う。