打ち込みドラムについてプロドラマーといろいろ話してみた【ドラ聞き第三回】

テクニック

【第一回】【第二回】に続き、ドラムについてプロドラマーに聞いてみたシリーズ三回目。

今回は雑談に近い話題。

引き続き神田リョウ氏(@tatakiyagroove )との対談形式です。

理解するのが難しい楽器じゃない?

こおろぎ
他の音源もそうだけど、リアルになるほどその楽器の知識が必要になるよね。

だから、最近、楽器を買うのにハマってるんだよね。楽器って触ったほうがわかるから。

でも、ドラムセットはさすがに買えない。その点でもやっぱり、身近じゃないから理解するのが難しい楽器だなと思う。

神田リョウ
買っても置いておくのが大変ですもんね。

レジェンドを聴いてほしい

こおろぎ
参考になるプレイヤーを教えて欲しいです。沢山いそうだけど…
神田リョウ
やっぱり、それぞれのジャンルにレジャンドがいるから、そのレジェンドは聴いてほしい気持ちはありますけどね。

ドラムのセレクトはレジェンドの演奏がベーシックというか、スタンダードになってる気はしてます。

音源をサンプリングしときのプレイヤーの音のイメージもおそらく、レジェンドの演奏なんですよね。

ロックだったらジョン・ボーナムがいて、ツェッペリンのサウンドに近くなってるとか。

神田リョウ
ファンクだったらクライド・スタブルフィールドとかの、JBっぽいサウンド的になってるとか。

神田リョウ
ジャズだと、ジーン・クルーパとかアートブレイキーとか、バディ・リッチとか

神田リョウ
エルビン・ジョーンズとか

神田リョウ
まだまだたくさんいます。

そういうのを聴くと見えてくるかもしれない。なんでこのセットの音がラインナップとして選ばれてるかっていうのもわかるかもしれないっすね。

「聴いておくべき、世界が選ぶ偉人ドラマー100選」みたいなページあったりするじゃないすか。まとめサイトとか。

あの辺は全部聴くっていうのは勉強になると思ってて。



「最も偉大なドラマー TOP100」を米ローリングストーン誌が発表 – amass

神田リョウ
ストーンズだったりとか、スタジオ系だと、ジェフ・ポーカロとか、スティーブ・ガットとか。

わりと著名人の名前が連なってるんですけど、そこには理由があるからで。

それを聴くとイメージってつくと思う気はするんですよね。

で、その時代とか年代によってサウンドも違うから、そういうのも見えてくるし、それが一つのグローバルスタンダードだと思って聴くのもいいと思います。

そうしていくと、なんとなく「このセットはあの人のイメージだな」とかわかるんで、そうすると選びやすくなってくるんじゃないすかね。

こおろぎ
先に欲しい音がイメージできてないと、っていうところだよね
神田リョウ
そうすね。イメージしておくほうが何かと捗る

ドラマーと打ち込みの人の考え方

神田リョウ
打ち込みの人のシンバルの考え方って ドラマーが考えるところとちょっと違うんすよね。

例えばEDMとか、ほんとにナマっぽくないR&Bとか、あんまり頭にクラッシュを入れるっていうのがそんなに多くないような気がしてて。

それより、切り替わる前にリバースが入ってたりとか。そこで合図を送ってる気がしてるんですよね。

たぶん解釈のしかたがちょっと違ってて。

ロックとかポップスの歌モノは頭にクラッシュ入ってるんですけど。

こおろぎ
やっぱり、ポップスだと入れたほうが締まるよね

でも、R&Bとかは入れちゃうとダサくなっちゃったり。

神田リョウ
そうそう。たぶんそこで解釈とかが違ったりしてて。

残響よりもむしろアタック感のほうが必要なのかな?みたいな。

例えばHIPHOPとかR&Bでも、頭ににクラッシュの代わりに808のカウベルの音がコーンって入ってたりとか。

「チーン」だけの1発だけのほうがいいのかな?みたいな。

新しいサウンドはないの?

こおろぎ
最近出てきた新しいサウンド、ってないの?
神田リョウ
あんまり新しいドラムの音ってたぶんないですよ今。

ドラムって音色の方向性はそんなに多くなくて。いろんなところが色んなものを作ってるから種類はいっぱいあるけど。

ドラムセット自体は、一番新しいタイプの楽器なんですよね、現代的な。でも、打楽器って考えると一番プリミティブだから。

結局ドラムセットが担ってる部分ってそんなに進化してない。

ドラムで歌うような、メロディックなドラミングもあったりはするんですけど、基本的にはバンドの屋台骨を支えることの方が圧倒的に多い。

やっぱり今の時代でも「1930年、40年代くらいの古臭い音が欲しいんだよね」っていう時があるってことは、その根本的にはあんまり変わってないことだと思ってて。

そういう意味でいうと、DTMのほうがよっぽど進化しているような気がします。

こおろぎ
曲の中でのドラムの音作りは変わってきている感じがするんだよね。
神田リョウ
ドラムセット自体は変わってないんですよね。ただ、DTMのほうに寄ってきてるんだと思いますよ。

だから「クラップが乗るからチューニングはちょっと下げとこう」っていう発想になったりするし。

あとは、生ドラムにトリガーしてキックにアタックを増やしたりとか。ライブでもRECでもそういう考え方ですね。

その意味でトラックメイカーの人たちの考えてるスネア1発とかキック1発とかのほうが、俺はクリエイティブだなって思う。

こおろぎ
マイキングもビートルズくらいからそんなに変わってないっていう話も聞くし、大きく変わっているのは、アレンジや、ミックス段階での加工のトレンドなんだろうね。

「誰々っぽい感じのサウンドで」と言われたときは

神田リョウ
悔しいけど「誰々っぽい感じのサウンドで」って言われたりするんですよ。

結構そうやって言われて、ブチ切れて帰る、とかっていう武勇伝はちょいちょい聞きますけど。

こおろぎ
僕らの世界だと、リファレンスが当たり前だったりするから、それは怒ることじゃないというか。そういう感覚はプレーヤーと違うんだろうな。
神田リョウ
やっぱりその人のプライドがあるんでしょうね。僕はニコニコしてますけど(笑)

でも、やっぱり、それを言う人にはイメージがあるんですよね。

それを、なんとなく理解するときって、そのイメージが浮かんだ時で。その人だったらこう叩くかな、って考えて叩いたりする。

ヒップホップっぽい感じのドラムって考えたら、トラックメイカーのサウンドをイメージするときもあるし、逆に、クエストラブみたいなドラマーを想像するときもあるし。

神田リョウ
みんなそれぞれドラマーに求めていることが実は違ったりもしてて。人間っぽいビートを求めてる時と、ドラマーとしての発想を求めている時があったりする。
こおろぎ
クライアントの意図を読むのが大事だよね。

そういうときって、頼めないから代わりに呼んだんじゃなくて、イメージしたサウンドに近いプレイヤーを言ってるだけなんだよね。

ポイントを押さえつつ、自分のサウンドを出してけばいいと思う。

ドラマーっていろんなジャンルに対応できるイメージってない?

こおろぎ
神田リョウとして、どういうジャンルが得意とかってのはある?
神田リョウ
あー、僕個人としてはファンクとかヒップホップとか。ダンスビートが好きで。

大体の音楽のルーツがダンスビートだったりするんですけど。4つ打ちとか。

4つ打ちの曲ってだいたい打ち込みでなんとかなったりするんですよね(笑)

こおろぎ
確かに(笑)
神田リョウ
そういう難しいところがあるんですけど

ロックもやるし、なんでもやりたいカメレオンドラマーです。

こおろぎ

でも、ドラマーってわりといろんなジャンルに対応できるイメージはあると思ってて。それもドラムキットのくだりと関係あるのかな。

神田リョウ
プレイヤーは別だと思いますね。

スタジオ系ミュージシャンと、バンド系ミュージシャンは根本的に違う感じだし。

スタジオ系の人も、ジャズは全くですっていうタイプの人もいるし。逆に、ジャズはできるけどビート物は弱いとかあると思うし。

まあ、通ってるか通ってないかだけだったりするんですけど。

僕の出身がジャズだったから、ジャズは苦手だなと思いつつもきたらやる。ビートのほうが好きだけど。

ただ、ロックのセットでジャズをやるのは結構大変ですね。

ジャズっぽいセットってのはある程度、決まったサウンドがあるから。

ロック仕様になってるセットでジャジーに演奏すると、そこまで鳴らなくていいのに…みたいなサウンドになっちゃう。

レコーディングの仕事が減っているのでは?

こおろぎ
ドラム音源の質が高くなってきて、プレイヤーのレコーディングの仕事は減ったりしないのかなと思ってて。
神田リョウ
減ってるとは思いますよ。なんとなく。
こおろぎ
ドラムは単音の重なりだから、打ち込みで一番生っぽく聴かせやすい楽器なんだよね。
神田リョウ
確かに、まあ「でも大変だ」とかあんま言いたくないですけどね俺は。
こおろぎ
それでもちゃんと価値が出せる人は出せるからね。
神田リョウ
「音楽売れねえのはYoutubeのせいだ」って言ってる感じとあんま変わんないから。

「いやおめーの努力不足じゃね?」って思うところはやっぱあって。あんま言いたくないけど。

でも、そうやって淘汰されるもんだとも思ってて。

ループ集を出したんですけど、

■ドラムループ集『EDOMAE LOOPS -RYO KANDA & TRIP edition-』

「なんでお前がループ集出したんだよ」みたいな話になるじゃないですか。「それがあれば、ドラム頼まなくてもよくなっちゃうじゃん」って。

でも、ループ集出したのは「やっぱ生のドラムっていいよね」って思ってもらえたらいいなと思って。

こおろぎ
深い…
神田リョウ
やっぱ循環するものだと思ってるんですよ感覚って。

急にヴィンテージっぽいサウンドが流行ったりとか。でもまたこう、パキッとしたものがきて、今またBack to 80’みたいな感じになってるじゃないですか。

人の感覚ってこう、飽きては思い出して飽きては思い出しての繰り返しな気がするから。

そうなってこう、一つの自分のループが入ったときに「あ、なんか生の音っていいよね」ってどっかでなればうれしいし。

まあ自分なりのHIPHOPでもあるんですけど。そのループ集を出したこと自体が。

盛り上がればいいなと思って、とにかく、業界が。

だから、むしろ打ち込みをする人に、こう、「どうやったら生のドラマーっぽくなりますか?」

みたいなものはめっちゃアドバイスしたいんですけどね。

こおろぎ
まさに今日とか(笑)
神田リョウ
そうそうそう。

「こうするとすげー生っぽいから意識するといいよ」とか、全然伝えたいっすもんね。

俺はドラム自体はなくならないと思ってるから。特性上。

元々ライブの楽器だと思ってるんで。

こおろぎ
確かに、元をたどるとライブの楽器だもんね。
神田リョウ
そうそう。

もちろんその、レコーディングの現場はたぶん、なくなりようがないと思うんですよね。

そのライブの音が最終的に欲しいってなったときには、叩かなきゃいけない。

こおろぎ
どうしても、ライブ感があるサウンドって打ち込みだと無理だもんなあ。
神田リョウ
なんかその、打ち込みの人VSプレイヤーみたいな構図が、俺はちょっとわかってなくて。

一緒にやったらいいじゃん、みたいな。

こおろぎ
作る曲とか目的によって、みたいな。
神田リョウ
そうそう、そこに金銭とかが発生するからちょっとややこしくなるけど。

そうじゃなくて「いいものを一緒に作る」っていうことだけ考えたら関係ないはずなんですよ、ほんとうは。

「仕事がなくなっちゃうからやめてくれよ」っていう気持ちならわかるけど、それを音楽のせいにしちゃいけなくて。

打ち込みをやる人には打ち込みをやる理由があって、プレイヤーにはプレイヤーの理由があるから。

それはシェアしたほうがいいと思ってる。

おわりに

プロドラマーに聞くドラムのお話はこれでおしまいです。
キットのことだけ聞くつもりが、かなり色々話していただいちゃいました。

プロフィール

神田リョウ

ダンスで培ったリズム感とグルーヴ、表現力には支持が厚く、幅広い音楽性に裏打ちされたダンスビートは特に評価が高い。メジャー、インディーズを問わず活動を展開する。

【織田哲郎】、【BoA】、【WHITEJAM】、【井上苑子】等のツアードラマーとしての参加や、日本最大級のストリートパフォーマンス集団 【TAPJAMCREW】のプロデューサー兼ドラマーとしても活動する。

またKORG社製品デモンストレーターの顔も持ち、ドラムをはじめ、パーカッションから電子打楽器まで使いこなす”踊れるドラマー”。

その他、インストバンド『Fango Inc.』、リズム&ドラム・マガジン 連載セミナー『#月イチ1グルーヴ』、ドラムループ集『EDOMAE LOOPS -RYO KANDA & TRIP edition-』発売。など。

Instagramに毎日投稿するドラム演奏動画『#一日一グルーヴ』も話題。

■Twitter(@tatakiyagroove )

■Web

■ドラムループ集『EDOMAE LOOPS -RYO KANDA & TRIP edition-』

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リンク

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