第三回に続き、スキャット後藤、こおろぎ対談、第四回です。
今回は「音楽プロデューサーとしてのスキャット後藤さんの役割」「漫才、コントを見てきたことが仕事に活きた」「自分で作品を作ってみるのが一番いい」など、劇伴をうまく作れるようになるにはどういうことをしたらいいのか、という話が中心です。
音楽プロデューサー、スキャット後藤さんの役割
「この場面はこうしようこうしよう」みたいなことを僕は言っていたような。「こういう曲調のほうがいいんじゃないか」とか、という感じかな。
1話でだいぶ曲ができて、そのストックを2話にはめたり、2話用に作ってはめていったときに、「こことここ、曲が足りないからこういう曲調がほしい」みたいなことを。
僕が印象的なのは、将棋の回の王。倒れちゃう。
ここはピアノ曲がいいと思って、いままであった僕の曲をガイドで1回あてて、そのとおりの悲しい感じの曲を作ってもらって…まあそういうことやねんね。
もうだいぶ昔のような感じがして…何もわからないので、とりあえず把握をしていかないといけないなと常に思ってて。
それでも全然間に合ってなかったんですけど。
今までやってきた音楽と全然違う作り方をしなきゃいけない場面っていうのがあって、まず「台本を見て音をつける」っていうのがもうわからなかったりとか。
今回は台本や映像を見たりして「なになにのテーマがいるな」とか、「毎回こういうシーンが出てくるから」、「ちょっと特殊なシーンがあるからそういう曲を作らないとだめなのかな」というのをリスト化して作ってもらって。
僕は普段そうなんやけども。それが劇伴の面白さだと思っているので。
テレビドラマの劇伴もいくつかやったけども、そこに違う作家さんを呼んできてお願いして曲を作ってもらうってことは毎回あって、それは面白いかなと。
そういうこともみんなあんまりやらないみたいだけど、僕は積極的にやっていて、いろんなカラーも出るし、っていうのもあって。
で、そのときは「この人はこういう曲を書くから」っていうのがわかっていて、全部お膳立てというか「何も考えなくてこういう曲を書いてくれればいいから」っていうか、それでも作っている本人はいろいろ考えるらしいんやけども、作ってもらって、でも普通に作ってもらうだけではまるのがわかっているから。
「ここでこういう曲調で明るい曲を作ってください」って。
「普通に作ってもらってハマるのがわかっている」っていう頼み方、それって劇伴をやっているっていうのとは、劇伴として使われているっていうだけで、劇伴の仕事をしたっていう感じではないと思うんよね。
今回は、映像に音楽がついてない状態っていうのを見てもらって。僕は「こういうシーンはこういう曲を作ったほうがいい」とは言うけれども、結局自分で考えなきゃいけない。
曲自体を作れるっていう、それだけじゃないですかね。そんなに「やっててよかったな」みたいなのなかったような気がするんですけど。
わからないことのほうが多すぎて。編集を考えたりだとか、そういうのも今まで意識してこなかったので。
今までなかったことを取り入れることに精一杯でしたね。
僕はそこまでドラマを見たりは普段しないんだけども、僕は京都出身、関西で、だからといって別に僕は吉本新喜劇とかあんまり見なかった。そこまで好きではなかったんやけども。
昔2丁目劇場っていうのがあって、ダウンタウンだったりとか、千原兄弟だったりとか、サバンナだったりとか、ああいう人たちが20何年前とかにネタをやっていたのを片っ端から大好きで見てて、繰り返し覚えるくらい見ていて。
コントとかって間合いとかすごく大事で、「こうなると面白い」とか、その間っていうのをすごい覚えてる。
音楽をつけるときでも、「こういうつけ方をすると笑えるけども、こうしちゃうと台無しにしちゃう」とか。
関くんのときも僕何回か言ったと思うけど、「ここで落とすためのフリなので、ここでこういうミスリードをしないと成立しないから」っていうのとか。
完全に僕は漫才とかを見て覚えて。
だからどういう撮り方をしているから面白いとかっていうのは、無意識で。
「多分これ寄っているカットだと面白くないんだろうな」とか、すべてに意味があるって、僕は音楽やる前から思うことがあって。
編集でもこれはどういう意味で、「なんでこのカットが入っているのかな」とか、「このセリフがあるから」とか、そういうのが結構活きている気はするかな。
だから劇伴をするたびに、ドラマの劇伴をやりたいって思ったことってほぼなく、今やっているので、なんか研究していたわけでもない。
そこのノウハウっていうかそこで聴いてたものはあんまり活かされてないかなあ。
やっぱりテレビ見てて、漫才、コントを見てたときのほうが、それのほうが仕事には活きているかな。
間合いなど、映像の事を理解しておく。
お気に入りのシーン
2分ぐらい?ちょっと長めに作ってるもんね。
1、2日で作りましたね。
他の曲はもう途中から、僕がこういう曲を書いて、っていうのを指示待ちみたいな感じなっていったもんね、だんだん。
やっぱり難しくって当然やなと思ったし。
昨日の自分を越えていかないといけないっていう。常に
あとの話は使い回しが多くなってきたんで、1話ごとに1曲、2曲を集中して力を注げばいいっていう感じでしたけど、最初はもう大変で…
しかも言っていることがいまいち飲み込めない。そこがもどかしくて。
文字数がすごいあって、すごい説明してくれているんですけど、飲み込めないっていうのがつらかったですね。
昨日の自分を越えていかないといけないっていう、常に。それがきつい。
僕も出し惜しみなく、とりあえず伝えられることっていうのは伝えていくっていうのはあるなと思ったから、だいぶ手の内を。
そのときに、なんの曲か覚えていないけど「あれよかった」って言ったら、こおろぎ君にボソっと「初めてほめられました」って言われた(笑)
僕は何回かやってきてそれを自分の中で「こういうときはこう」っていう実感があるもんだけど、その言葉だけポンって渡されてもピンとこないっていうのもよくわかるし、それにのっとってやったとしても、本当の意味がわからずそうしてたと思う。
自分で作品を作ってみるのが一番早い
自分でドラマみたいなのを作って音つけるっていうのを、ニコニコかYouTubeかなんかに投稿したりして、1回そういうのを実際に自分でやってみたほうがいいなって。
じゃないと多分わかんないよなーとは思いました。やってみて。
サントラ聴いて真似しているだけじゃだめだと。
「この映像にはピアノのこういう曲が合いますよね」みたいな話を、映像の仕事あんまりやってない人と話をするとやっぱりあるんやけども、シーンに合っている合ってないではないよね。音楽のつけ方っていうのは。
誰目線の音楽なんだとか、何に対してとか、この曲をつけることにどういう意味がつくのかとか。そこだけじゃなくて、前後がどうなっているかとか、っていうところがあるんだよね。
僕はさっきの漫才みたいなことと、あと一つは、とにかくわかんないから自分で音をつけてみて、それを見てどういう感情になるかなっていうのはすごくその仕事の中で検証したかな。
今でも「この1音があったほうがいいのかないほうがいいのか」とか、「まだあったほうがこのセリフが」とか、「こういう曲だとこのセリフがたってくる」とかっていうのがあるから、それを見つけることとかはするかな。
僕はなんか、バカな感じというか、ちょっと変わった作品が多いから、いわゆる普通の恋愛ものだったりとか、探偵ものみたいなとかサスペンスは、そんなの全然なくて、笑える要素みたいなちょっと変わったものが多いので。
関連リンク
【第一回】 テレビドラマ劇伴の仕事をもらうまでの流れ
【第二回】 テレビドラマ劇伴のスケジュールについて
【第三回】 「サントラを聴いているだけでは劇伴はできない」テレビドラマ劇伴のつくりかた
【第五回】 テレビドラマ劇伴のMA、監督の違い、音楽学校について
プロフィール
スキャット後藤
へなちょこ作曲家。京都市出身。かわいくてたのしくてちょっといじわるな音楽をつくってます。TV :「となりの関くんとるみちゃんの事象」「太鼓持ちの達人」「俺のダンディズム」「殺しの女王蜂」「A-Studio」「きらきらアフロ」Game :「シバ・カーリーの伝説」「POSSESSION MAGENTA」
■ツイッター @scatgoto
■Webサイト http://www.cutecool.jp/
プロデューサーってついているけど、全然プロデューサーっぽいことしてなかった気がするけど(笑)