技術はあるのに楽曲がウケない人は「企画力」が足りない

教則本・その他本

AKB48をはじめ数々のヒットを生み出している秋元康さんの「企画脳」を読みました。

企画脳 (PHP文庫)

この本は会社員の方に対して書かれた本だと思うんですが、まるまる楽曲制作にも当てはまるので、置き換えながら紹介します。企画力を鍛える。その基本的な考え方を身につけるための内容になってます。

企画力とは、その通り企画をする力。目的達成のためにどういう手段で解決するのか考える力です。

これは楽曲のコンセプトから、作曲、作詞、編曲、プロモーションまで、活動から制作まで使える応用範囲が大きい能力です。

演奏や打ち込みの技術的なうまさ、表現力などは「音楽力」ですが、それとは別の能力「企画力」も同じくらい音楽制作には必要だなと感じました。

早速、企画のしかたから見ていきましょう。

マジョリティとマニアックの間で、受け取る人に向けてフォーカスを合わせていく

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企画をどうやって創りだしていくのか ?それには 、僕なりの 、秋元流の方法論がある 。それは 、 「差別化 」ということである 。

「たぶん、他の人たちはこうくるだろう」と予想がつくとき、その「予定調和」をどれだけ崩していけるか。採用する側が期待している企画像を、それだけ裏切れるか。

例えば、自分が豆腐料理を作るとしたら、  ~ 世間的に受け入れられるマジョリティと、一部の人にだけ受け入れられるマニアックさの幅を作るのである。~ この振れ幅のなかで 、企画としての豆腐料理の一皿に 、だんだんフォ ーカスを合わせていくのである 。

自分が集めた 「食材 」の中で 、いちばん合わないものは何か 。いちばん 「真逆 」にあるものは何か 。それを考えることが 、はじめの一歩と言えるだろう 。

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「マジョリティ、普通、マッチするもの」と「マニアック、異端、ミスマッチなもの」。

まずは最大限大きく振り幅をとって、そこから受け取る人に向けてフォーカスを合わせていく。

どこにフォーカスを合わせるかも大事ですよね。大衆向けだとより「普通、マッチするもの」よりになるだろうし、マニアックな層向けだと「異端、ミスマッチなもの」よりなものになっていくはず。

音楽でも、大衆的すぎるのはつまらない、マニアック過ぎるのはわからない。

例えば編曲だったら「ポップスにフリージャズを入れてみよう」という振れ幅をまず作って、ほとんどフリージャズだと、それがわかる人にしかわからないものになる。間奏に少しだけだったら誰でもわかるかもしれない。その混ぜ具合を伝えたい人、使われる場面に合わせて調節する。みたいな。

クオリティはしっかりと

変化球はあくまでも変化球にしかすぎないのだ。話題性をつくるには奇をてらったものも必要だが、奇をてらうことが「核」になっては負けてしまう。”

変化球勝負を挑みながらも、けっして「王道」を忘れない。それが、企画を本物にするポイントである。

音楽での「王道」、それは曲そのもののクオリティですね。奇をてらってもクオリティが出てなければ本物にはなれない。

企画力だけではなく質も。両方を高めていくことが大事です。

ちょうど、企画もしっかりしてて、かつクオリティも出ている曲があります。

大衆寄りにするため誰でもわかる「女子アナ」というマッチングにしたのかな、とか、歌詞も王道でわかりやすいもの、ネット上、一部でウケてるものなどのバランス感、とか色々と考察できる部分がありますね。

特にボカロ曲は企画が面白いものが多い印象があります。人間じゃないからこそ、人間でやると非現実的だったり、浮いちゃったり、恥ずかしいような曲もできるんですよね。

歌唱力では生歌に勝てないからこそ、他の軸で勝負している、という事でもあると思います。

立場で戦い方を変える

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フリーでいるということは、自分がそのプレゼンに勝つための強力な技がなければいけないのだ。

「ほかの代理店さんは、こうくるだろうな。だから、僕はこの手でいこう」と考える。~小回りな方法を選択すべきだと考えるのだ。

逆に、大きな代理店と組んでプレゼンするときには、小さな代理店はそうしたパワープレイではなく、奇をてらったことをやってくるに違いない。

奇をてらった方法に勝つためには、「王道」で安心感のある企画で勝負したほうがいいのではないか。

その市場で自分が弱者だったら奇をてらった方法、強者だったら「王道」で安心感のあるもの。

楽曲も、有名な人は王道でも安心感をもって聴いてもらえる。逆に、有名でない人は王道を外して揺さぶっていったほうがいい。

コンペなど、直接勝負する場面で特に使える考え方だと思います。

みんなが情報だと思っていないことに気づく

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最初に”自分が集めた 「食材 」の中で 、いちばん合わないものは何か 。それを考える”とありましたが、その 「食材 」のストック方法にもコツがあるようです。

発想や企画のヒントは、日常の中に転がっていて、それを「記憶」するところからはじまる

情報をいくら集めても 、集めれば集めるほど 、最大公約数しか示さなくなってしまう 。情報が多くなればなるほど 、平均化して当たり前になってしまうのだ 。

マスメディアを通じて流される情報や 、インタ ーネットで公開されている情報よりも 、みんなが情報だと思っていないことに気づくことのほうが 、じつは情報としての価値は高いということである 。他の人は情報だと思わずに通り過ごしたり 、見過ごしたりしていることを 、 「そうなのか 」と気づくこと 。それが本当の情報なのだ 。

映画を観てもダメな奴はダメなのだ。反対に、映画を観なくても電車に乗って車内吊りの広告を見ているだけでも、あるいは、道で配っているチラシを手にしただけでも、何かを吸収できる人間はいる。

普段から自分の視点での面白いもの、情報を見つけておくこと。それが徐々に積もって企画の際の振り幅が出せるのだと思います。

確かに、平凡な曲ほどこうした振り幅が少ない、最大公約数に近いものだなと感じます。

これって、「価値を認識する能力」の差、「マーケット感覚」とも似ていますね。

川の流れ理論

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二メートルくらい先に丸太に乗った先輩が流れていて、自分がいて、後輩が二メートルくらい後にいる。川の流れは延々ずっと変わらない

その流れから一歩抜きん出ていく発想や企画を実現させていくためには、~ 一度根性を決めて丸太を一度陸に出し、トラックにのせて走ってから、新しい場所に丸太を流してやるしかない。

企画そのものとは離れますが、活動、生活のしかたが「同じ川の流れに乗らない」というのは大切ですね。

同じ流れに乗ると同じ軸で能力が高い人、同じくらいの能力でも実績がある人にはいつまでも勝てない。

リズムからどうやってはみ出すか。放送作家だった秋元さんはそれが作詞だった。

ああ、僕はそれがブログだったのだなあと。

おわりに

最近、自分の技術がそこそこ上がってきて、質は高くなったように感じるのですが、まだまだ面白さが足りないなと思っていました。

この本を読んで、技術とは別の能力、企画力が足りていなかったなと感じました。それもあって、最近は1曲ごとに意識して企画するようにしています。

楽曲のなかでコントロールできる部分が少ない編曲だけでも、リズムの入れ方、楽器の選び方、和音の響かせ方など、色々と企画できることがあります。しかし、上流となる作曲、作詞の時点で面白くないものはどうしても振り幅を大きくできないんですよね。

編曲よりも作曲、作詞、それよりも楽曲のコンセプト。上流からきちんと企画をすることが、素晴らしい曲が作れるポイントではないでしょうか。

あと、こういう発想力、企画力というのは、才能なんだろうなと思っていたんですが、訓練である程度のレベルまでいけそうだなと、認識を改めました。

「企画脳」読みやすく、わかりやすく編集されていてサクッと読めるのでおすすめです。

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見たことあるタイトルだと思ったらこんなブログも書いてましたね。本の内容は似てて、「人を振り向かせるプロデュースの力」 のほうがより具体的。上の「企画脳」のほうが根幹の基礎っぽい感じです。

プロデュース力は音楽を作れることと同じくらい大事だ