”物語”を作り、巻き込むという方法

教則本・その他本

”物語”を作り、巻き込むという方法について。

「のめりこませる技術」 誰が物語を操るのか を読んで考えた事です。

のめりこませる技術 ─誰が物語を操るのか

この本は”物語”の具体例や、なぜのめり込むのか、という分析がたっぷり入った本です。めっちゃ分厚いので読むのに半年くらいかかりました。

ここで言う”物語”というのはファンタジーのような「お話」だけのことではないです。受け手側の行動や情報も含めた「物語」。

例えば、AXE、Nike+などの広告、メタルギア・ソリッド、グランド・セフト・オートなどのゲーム、同人誌、リミックス、マッシュアップ、MADなどの二次創作、BloggerやYouTube、Twitterなどのネットメディアまで。

そういった「物語」を作り、巻き込むにはどうしたらいいのかな、というのが今回のテーマ。

”物語”そして”物語るという行為”は人間という存在の核

本書の一番最初がこの言葉なのですが、人間が物語を認識しようとする衝動は強く、物語など存在しなくても、それを物語として認識するといいます。

例えば、三角形と四角形の物体がただ動いているだけでも、それぞれ何を表しているのか、2つにどういった関連があるのか…といった物語を作り出す。

人は物語を作らずに、語らずにはいられない。と。

世界を丸ごと作り込む事で深みが生まれる

「気軽に映画を楽しみたいだけの人は、細部まで深く掘り下げなくても映画を楽しめる。でも筋金入りのファンが深く入り込むほど、まったく別次元の世界が姿を現すわけだ。

ちょっと掘り下げても何百倍掘っても崩壊しない世界を作るんだ。でも奥にある物を掘り出さなくてもちゃんと楽しむ事ができる。知りたい人だけが知ればいい。それこそよくできたサイエンス・フィクションってものだ」

– ジェームズ・キャメロン

「アバター」のキャメロン監督の言葉ですが、他にもスターウォーズやディズニーのように、人々を深く惹きつける物語には「わかりやすさ」と「深さ」がある。

世界そのものをしっかり作りこむ事で、受け手側も二次創作をしたりといった、新たな物語を付加できる土壌になる。

「わかりやすさ」と「深さ」の同居については前回「プロデュース力は音楽を作れることと同じくらい大事だ」で書いた”白と黒”の例えと似てますね。中途半端なものは誰にもウケない。

”物語やキャラクターは受け手に共有されて価値を増す。共有されて意味を深め、より人気を増す”

ヒトは、大好きな物語を何度でも語り直さなければ気が済まない動物なのだ。もし、何か飛び切り特別な意味を持つ物語に出会ったら、表面だけなぞって満足できるようなものではない。その奥にあるものを求めずにはいられないのだ。

その物語の中に自分を想像してみずにはいられない。

『スターウォーズ』の事を考えて見てください。ライトセーバーがあってデス・スターがあって、フォースがあって、いろんなもので遊ぶ事ができるでしょう。

遊び自体が無二の体験になる上に、そのことを友達に話すのも楽しい。最高の物語からはさまざまな遊びが生まれ、最高の遊びからは最高の物語が生まれる

”遊び”と”物語”は2つで一つなんですよ。人類が進化の過程で出くわした、最初の教育技法だというわけですよ。

物語はシェアされ、物語られ、遊ばれて価値を深める。コントロールできない部分もありますが、そのようにコンテンツを設計する、という事はできるはず。

勘違いしやすいのですが、こちらから「~してください」とお願いするのはダメだということです。語りたくなる、シェアしたくなる、遊びたくなるようにコンテンツを設計する。「遊べ!」と言われると気持ちが萎えるじゃないですか。

物語化するミュージシャン

”物語”を作っているミュージシャン、という事で注目したいのが、オルタナティブロックバンド「THE NOVEMBERS」。

THE NOVEMBERS

マーケティングを担当している高野 修平(@groundcolor )さんはアルバム「Rhapsody in beauty」のマーケティングについて解説するエントリーを書いています。

第一章:THE NOVEMBERSがドロップする新作アルバム「Rhapsody in beauty」で描いたマーケティングの全貌 | THE GREAT ESCAPE

シェアCD、レターアドなどの施策を通して大きな物語を作っていますね。

高野さんの著書「始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング」でも参考としてもこの「のめりこませる技術」が挙がっています。

そういえば、この前THE NOVEMBERSのライブを見てきたんですが、音が壁みたいでした。

自分を物語化してみる

self_700

作られた「お話」だけじゃなく、アーティスト自体にも適用できると思うんですよね。

例えば、気になるアーティストがいたら、wikipediaやSNS、ブログを漁って、その人の辿って来た、断片化された物語を探す旅に出るわけで。

SNSに投稿する言葉はその人の物語の続きを書いているっていう事じゃないのかな、とか。

そういう視点で行動すると面白そうじゃないですか?

おまけ

日本人プレイヤーは現実とゲーム世界を完全に切り離して考える事ができるので、自分が悪者を演じることに抵抗がないそうだ。だからおそらくロリコンや触手ポルノアニメにもあまり抵抗がないのだろう。

これがCool Japan。

大規模な同人誌即売会には何千というアマチュアが美麗に製本された自作のマンガを携えて参加し、よく知られた人気キャラが禁断の欲望に従って行動したり、どこから見ても知的財産権保護に関する法律に抵触する行為を繰り広げるのだ。

同人誌について翻訳されると皮肉たっぷりな文章になりますね。

こういった感じで日本の文化についても色々書いてあります。

おわりに

と、こんな感じで、まず手始めに自分のプロフィールをストーリー仕立てにしてみるのはいかがでしょうか。

この本、「ネットとは、分断された物語である」とか、「ツイッターはソーシャルスロットマシーン」だとか、他にも面白そうな事が書いてあります。ただ分厚い。

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