10年以上編曲の仕事をやっているわけですが、編曲は1から作曲するよりも作業時間がかなり長いような気がしているので、時間を計算してみることにしてみました。
仮想のプロジェクトの場合で平均的な時間を考えてみます。
・5分の元気な曲
・期間1~3か月
・編成はドラム、ベース、ブラスセクションの打ち込み、ギターだけは僕が生で入れたものにする。
・ミックスまではやらず、パラデータで納品
という、わりといつもやっている形で計算してみます。
各工程は、メールをしたり、データを書き出したりという時間も含みます。
打ち合わせ 2時間
メールでやりとりをしたり、SkypeやLINEで話します。ほとんどの場合、直接は会いません。
ここで大まかな楽器編成や雰囲気を確認します。
1コーラスのラフ 20時間
まずは、1コーラスのラフを作成し、初稿とします。
あまりにも最終の形が見えないと聴く方も判断できないので、最初の時点で7、8割くらいのものを作ります。
デモの耳コピー 2時間
大体、デモは伴奏とボーカルが一緒になったオーディオデータなので、テンポを合わせたり、メロディやコードを耳コピしたりします。
ドラム、ベース、ブラスセクションの仮打ち込みとギターの仮録音 10時間
ドラムやベースはざっくりですが、ブラスのメロディラインはここでほとんど決めるので時間がかかります。
この工程でのリテイク 8時間
1コーラスめは方向性を決定するものなので、リテイクの量にかなりばらつきがあって、1回でOKなこともあれば、十数回のリテイクで1か月以上かかることもあります。
不当に長い場合は追加料金にします。
フルコーラスのラフ 9時間
フルコーラスのラフ作成 5時間
ABサビは大体コピー&ペースト、イントロ、間奏、アウトロを新たに作る
フルコーラスのリテイク 4時間
方向性が固まっているので、そこまで大幅な変更はありません。ここでキーやテンポ等の大幅な変更がある場合は追加で請求します。
詰め 11時間
レコーディングをして、各パートのフレーズやニュアンスを詰めていきます。
ギター録音、編集4時間
ドラム、ベース、ブラスセクション、オルガン各平均2時間づつ。計8時間
特にブラスは、ニュアンスやボイシング、音色を詰めるのに時間がかかります。
リテイク 2時間
この段階になると、あまり直すところはないです。
ただ、プロジェクト自体が重くなってくるので、開いたり書き出したりするだけで数十分を消費します。
パラデータ書き出し 3時間
1トラックづつ、ミスをしていないか、ニュアンスがおかしくないか、確認しながら書き出します
合計 42時間
フリーランスとしては、最低時給2,000円をもらわないと辛いので、料金の最低ラインは税抜き84,000円にしたい感じですね。
編曲は自作曲に比べてコスパが悪い
編曲するのは自分の曲ではないので、自分が管理・コントロールするということはほぼゼロ。
買い取りで印税配分がないこともほとんど。
また、編曲には色々な知識が必要であり、
・ブラスアレンジ
・ストリングスアレンジ
・コーラスアレンジ 等
それぞれの楽器に応じた編曲技法や、コードワークも。
少なくとも、作曲者よりコードに精通していないとコミュニケーションがとれません。
それらを内容に応じて新たに習得する時間的コストもかかる。
そして、相手の要望をくみ取るコミュニケーションスキルも必要。編曲はアーティストのこだわりが強い分、リテイクがかなり多い傾向にあります。
また、個人からの依頼が多いので、決まった締切りがなく、数か月かかることも多いです。
一方、自分で1から作るインストなどの作曲は、2分の曲が6時間くらいで作れたりしますし、自分の資産になる場合も多いので、それを元手に継続して稼げ続けます。
作曲を依頼される方は企業や、個人でプロダクトを作っている方が多く、締切が2週間~1ヵ月くらいで、拘束期間も短い。
比べて考えると編曲って仕事としてはパフォーマンスがかなり悪いんですよね。精神的な負担も大きい。
というわけで、特に歌モノの編曲はインストの作曲に比べて高い料金に設定しています。