楽器を自分で作れる「3Dプリンタ」は作曲家に必要なのか?

ガジェット・PC

闇の作曲家こおろぎです。

3Dプリンタを購入してみました。

3Dプリンタとは、プラスチックなどの色々な素材で立体の造形物を作ることができる機械です。

市販されていたり、無料で配布されているデータや自分で作ったデータをプリントすることができます。

僕が買ったのはCreality Ender-3 V2 Neoというモデル。

「2023年、今初めて買うならこれしかない」くらいの勢いで言われてるものです。

これを一ヶ月前に買って使い込んだ感想と、音楽家が3Dプリンタを購入したらどう使えるのかについ書いていきます。

最高

まず全体の感想を言うと最高でした。

数年前からなんとなく欲しいなーと思ってたんですが、いざ買ってみると思っていた以上にテンションが上がりますね。
もうすでに最高すぎて見た目もこんな風に整えてしまいました。

楽器やパーツが作れる

実際に音楽家が3Dプリンターをどう使えるのか確かめるために、いろいろなものをプリントしてみました。

Folded Tabor Pipe【折りたたみのテイバーパイプ(ケルトの笛)】

結論から言うと、笛が最も3Dプリンターに向いています。

なぜかと言うと、笛はサウンドが素材の影響を受けにくいんですよね。
あと構造が単純なのでモデリングもプリントもしやすい。

ここでいう笛は、オカリナ、ティンホイッスル、リコーダーなどの直接穴を塞ぐタイプ。

また、そういうメカニカルキーがないような、穴を直接塞ぐタイプの原始的な笛は、キーごとに違う笛を使わなければいけない。

あらかじめいろんなキーの笛を揃えておくんじゃなくて、都度プリントして使うみたいなことができるかもしれないです。

「レコーディングがボーカルの都合で半音下げになっちゃった」みたいな時でも半音下げの笛を今日プリントして明日使おうみたいなこともできるかもしれない。

低い音程の、管が長い楽器は難しいかもしれないんですが、 この笛のように管を折り畳んだような感じのデザインだったら低い音まで出せるかもしれないです。

知り合いの作曲/演奏家さんも3Dプリンターで笛を作ってると言っていました。

シェイカー


竜の鱗がついたようなデザイン。

2つのパーツでできており、中にお米を入れています。

サウンドはなかなかよいです。

これはすっかり子供の遊び道具になりました。継ぎ目が見えず、精度が高いので開くこともほとんどないんですが、中身が出てもお米なので安全です。

シェイカーは音程なども計算する必要がなく、形や中の素材なども色々なものが試せて、オリジナルのデザインを作りやすそうです。

ベル


サウンドは思った通り全然ダメです。

やはり素材がプラスチックなので、プラスチックそのものを鳴らす楽器は貧弱なサウンドになりますね。

このベルは分離しているパーツを中に組み込んでプリントできるというのがウリで、3Dプリンタのデモンストレーションのような感じのモデルです。

しかし、真ん中の柱も折れちゃったんですよね…

やはり、そこまで強度もないので、弦を張ったりとか、そういう楽器にもあまり向かないのかなと思います。

トランペットのマウスピース

Bach 1-1/2Cというもの。手持ちはBach 10-1/2Cなのですが、同じモデルが無かったので単純比較はできません。

これはなんと3Dプリンタ製のほうが音程が合わせやすい。絶対サイズのせいだけど。

口当たりはザラザラです。

さすがに本番用では使えなさそう。

マウスピースを買う前に、一旦いろんな種類のものをプリントしてじっくり使ってみてからきちんとしたものを買う、というのもアリかもしれない。

そういうプロトタイプ、モックアップ的な使い方もできるかなと思います。

自作ケーブルホルダー


今までのものは配布されているデータでしたが、自分で作ってみているのがケーブルホルダー。

電源ケーブルや音声ケーブルを壁に固定するためのものです。

すでに3種類くらいは作りました。

ケーブルホルダーなら簡単な形でいいし、小さいし、荒が目立たない部分に使うので試しに作ってみるならちょうどいい。

市販のものだと気に入ったものがほとんどないんですよね。

色がイマイチだったり、両面テープやネジで固定するものばかりだったり、画鋲で固定するようなものがないとか。USBのコネクターが通らないとか。

あとロットが多すぎて100個単位でしか入っていないとか。そういうものばかり。

今後オリジナル楽器も作りたい

慣れてきたら音楽関連のものもオリジナルで作っていきたいなとは思っています。

楽器そのものではなく、楽器を装飾するものや補助具みたいなものもいいかなと。

NUVOのスチューデントフルートというプラスチックのフルートを持っているんですが、メカニカルキーもプラスチックでできています。

壊れた時に、根性を出せば代わりのパーツを作れるかもしれない。

楽器や機材のカラーバリエーションが欲しい人におすすめ

市販の楽器や機材はカラバリが少ない。

特に音楽機材は白か黒ばかり。

自分で作ることで、カラーのバリエーションが出せます。

フィラメントの色も多様で、ツヤあり、ツヤなし、クリア、グラデーションなどがあります。

本体もランニングコストも案外安い

僕が購入したCreality「Ender-3 V2 Neo」はだいたい44000円くらい。

フィラメントが1kg2300円~3300円くらいです。

といっても1kgのプラスチックってなかなか使い切らない。

例えばこの笛はひとつ16グラムなんですよね。

ゴミも毎回すこし出るので、この笛を作るのに約20g消費するとします。

そうするとフィラメント1kgでこの笛が50個作れます。

さらに、電気代はめちゃくちゃざっくりですが一時間で5円くらい。

この笛を作るのに3時間ぐらいかかったので、

この笛一個約60円で作れることになります。

3Dプリンタ本体も安いまあまあ安いんですれども、材料や電気代などのランニングコストも案外安い。

Creality Ender-3 V2 Neoについて

僕の買ったCreality「Ender-3 V2Neo」という機種自体についてもお話します。

これは初めて買う3Dプリンターに最高でした。

3Dプリンタには何種類か方式があるんですが、これはFDM方式(熱溶解積層方式)と言われるもの。

フィラメントという材料を熱で溶かして、上からニュルニュルと積み重ねていくというものです。

この方式の特徴は、とにかく扱いやすいこと。そのかわり出力されたものはちょっとザラザラしている。

なので、細かい装飾品や小さいフィギュアみたいなものにはあまり向きません。

造形サイズは220*220*250mmで、まあまあの大きさといったところ。

おそらく目いっぱいのサイズだとプリントに数十時間はかかります。

セットアップ、使い方、メンテナンスが簡単

セットアップは簡単です。

まず届いた時に組み立てるパーツが少ない。

細い配線はほとんど繋がった状態で届き、4つくらいの大きな部品を組み立てます。

説明書も日本語で操作パネルも日本語。初期設定も10分くらい。

使い方も簡単。

まず3Dモデルのデータを用意します。

だいたい「stl」と言う拡張子のファイルなんですが、

それが売っていたり、無料で配布されていたり、モデリングソフトで自分で作ったりということができます。

用意した3 Dモデルのデータを専用のスライスソフトに読み込みます。

スライスソフトは実際にEnder-3がどういう風にプリントするのかという設定をするソフトです。
とりあえずスライスというボタンを押すと、最適化されたデータが生成できます。

設定を詰めなくてもそれなりのものができます。

そうすると、gcodeというデータが生成されるので、それを付属のmicroSDカードに入れます。

そのmicroSD カードを3D プリンターに挿し、

画面で「プリント」を押すと、最後に保存したモデルがトップに表示されるので、選んでプリント。

確認の画像が表示されるので間違いが少ない

そうするとプリントが始まります。

事前に調整などをしなくても、思いついた時に電源を入れて、データを入れてカード挿してボタンを押すだけで印刷が始まるので気軽にプリントできるんですよね。
ソフトの扱い方も最適化されていて本当にストレスが少ない。

フィラメントの供給がうまくいかず、途中で出なくなっちゃったりという事はありましたが。そこはパーツを自作して解決できました。

今のところそれくらいなので、紙のプリンターよりも扱いが簡単だと思いました。

紙のプリンターってインクが詰まりだしたり、かすれだすと一生治らないじゃないですか。

ああいうのが嫌なので、僕は紙のプリンターを持ってないんですよね。コンビニで全部印刷してます。

メンテナンスも簡単

フィラメントを取り換えるのもそこまで難しくはないし、フィラメントは乾燥したところに保管すれば開封後2、3週間以上持ちます。

うちはカメラやマイクの防湿庫があるのでそこに入れようと思ってます。

あとはたまにノズルなどの清掃をするくらい。

基本的にメンテナンスはそれくらいです。

毎回使うたびに時間をかけて掃除などをやらなきゃいけないということは全くないです。

音と匂いについて

音量については、そこそこファンの音がします。

僕の家のパソコンが最高に頑張ってる時のファンの音よりもちょっと大きいくらい。

めちゃくちゃうるせえっていう感じではないです。音量や音質が一定で変動がないのでうるさく感じない。

横でプリントしながら作曲もできます。ミックスはちょっと難しいかもしれないですが。

匂いについては、

まだPLAという材料しか使ったことがないんですが、PLAに関しては匂いはかなり少ないです。

ちょっとだけ換気をしておけばほとんど気にならないレベル。
ABSなど、他の材料を使うと匂いなどが出るみたいなんですが。

プリント速度

プリント速度は遅いです。ケーブルホルダーのような小物で15~30分、楽器などになると2時間以上はかかります。
これはどの機種も大差ないようです。

AnkerのM5という、プリント速度が従来の5倍の速度のものが出たので、気になっています。

AnkerMake M5 3Dプリンター、FDM3Dプリンター、5倍速でインテリジェント、印刷時間を70%カット、スムーズな0.1mmディテール、AIカメラによるエラー検出、オートレベリング、統合ダイカストアルミニウム合金
Anker

音楽家に3Dプリンタは必要なのか?

3Dプリンターを買う前はそこまでは使わないだろうなと思っていたんですが、

実際に買ってみると、「こういうものが作れるな」とか「こういうものが何かこういうものが作れるな」という発想が湧いてくるんですよね。

道具があることによってアイデアが浮かんで来るという。

今は安くなっているし、あまり使わない気がしなくても試しに買ってみるというのは結構ありなんじゃないかなと思ってます。

そして音楽家で3Dプリンターを使っている人も少ないので差別化になりそうだし。

あと、音楽家もモデリングソフトを使えた方が何かと楽しい。

Blenderで作ってるんですが、めちゃくちゃいいです。

◆Blender

何故かというと応用範囲がバカみたいに広い。

3DCGやアニメーションなどもできたりするので、遊び道具として可能性がでかい。

CADと言われるような設計専用のソフトもあるんですが、それはモデリング用にしか使えないので、趣味でモデリングをやるならBlenderのほうがおすすめです。

実際、僕も最初はBlenderで3DCGやアニメーションやUnity用のモデルなどを作って遊んでたんですが、今回そのまま3Dプリンターのモデリングに応用できました。

今後もいろいろ作ってみて面白いものが出来たらSNS(@kohrogi34 )などに投稿したいと思います。

ではまた。

動画