ピストン/デヴォート「和声法―分析と実習」のレビュー。
主にクラシック音楽で使われる和声を解説した本です。
和声とは”西洋音楽の音楽理論の用語のひとつであり、和音(コード)進行、声部の導き方および配置の組み合わせのことである。メロディ、リズムと共に音楽の三要素のひとつとされる。– Wikipedia”
ポピュラー和声の本との大きな違いは”声部の導き方および配置の組み合わせ”の部分ですね。使用されているコード(和音)自体はほとんど同じです。
クラシックの場合、1つのメロディの集合として和音を考えてるので、つながりや流れにすごく気を使っているのです。もちろん他のジャンルでも応用できる考え方です。
今回はもう一つわりと有名な和声の本和声の原理と実習とこの本をくらべてみます。
良いところ
・実際の楽譜が例として大量に出てくる
・近代和声を取り扱っている
・現代語に近いので理解しやすい
悪いところ
・実習が自由すぎる
和声の原理と実習は言葉の言い回しが古くて、それにつまずくこともあるのですが、こちらのほうが現代っぽいので理解が簡単です。
あと、実習もあるんですけど、答えがないので良いのか悪いのかわからないという。和声の原理と実習はかなり固めに書かれてて答えがはっきりしてるので、実習はこっちのほうが身に付くかもしれないです。特に古典音楽に関しては。
近代音楽については触れられてないので、ピストンの本でしか学習できません。
もくじ
■第1部 慣用期の調的和声法
1. 音楽の素材:音階と音程
2. 和音
3. 長旋法における和声進行:声部進行の原則
4. 短旋法
5. 調性と旋法性
6. 第1転回形 数字つき低音
7. 旋律の機能と構造
8. 非和声音
9. 旋律の和声づけ
10. 4-6の和音
11. 終止定型
12. 和声リズム
13.フレーズの和声構造
14. 転調
15. 属7の和音
16. 2次ドミナント
17. 変則的な解決
18. 音楽のテクスチャー
19. 和声分析の諸問題
20. セクエンツ
21. 減7の和音
22. 不完全形の長9和音
23. 非ドミナント和声 7の和音
24. 9、11、13の和音
25. 半音階的な変位和音:上方変位のIIとVI
26. ナポリ6の和音
27. 増6の諸和音
28. 他の半音階的和音
■第2部 慣用期以後
29. 和声法の歴史的考察
30. 慣用的和声法の拡張
31. 音階と和音のタイプ
32. 拡張された半音階法
この本で頻繁に出てくる「慣用期」とはウォルター・ピストンの造語で、18、19世紀の、和音がほとんど変化しなかったと想定している時期にあたります。バッハ、モーツァルト、ショパン、ドボルザークの時代。
和音の基礎にあたる部分ですね。現在様々なジャンルで使われている和声法でもあります。
慣用期以後はワーグナー以降、さらなる和声の発展をした時期で、著者は和声的宇宙と表現しています。ドビュッシー、ストラヴィンスキー、シェーンベルクなど。
ちょっと高いですが、一生使える内容だと思います。本当はクラシック以外のジャンルを作ってる方にもおすすめしたいんですが、クラシックの曲で解説してあるので興味無い方には辛いかと思われます・・・価格と、500P以上あるっていうのもハードルを上げてますね・・・ちゃんと理解して読むのに1年以上かかります。
でも読んで損はしません。ちらちら出てくるウォルター・ピストンの音楽的な考え方も僕は好きです。
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