『iLoud MTM』レビュー。自動音場補正システムを搭載したモニタースピーカー

楽器・ハードウエア

自動音場補正システムを搭載したニアフィールド・モニタースピーカーIK Multimedia『iLoud MTM』を導入しました。

2019年1月25日に注文して7月10日に届きました。半年待った…!

ざっくり

・内臓の自動音場補正システムにより、どんな環境でもある程度フラットな周波数特性で聴こえる
・40Hzから24 kHzまでフラットな周波数特性
・音場補正が簡単で早い
・ホームスタジオ、スモールスタジオに最適
・小さくて軽いけど出力が大きい

こんな人におすすめ

・スタジオ用に設計されていない部屋を使っている人
・部屋のレイアウトの自由が少ない人

このスピーカーは自動音場補正(較正)システムが搭載されていたり、反射が低減されるようになっていたり、通常のモニタースピーカーだとポテンシャルを発揮しづらいような環境でも、ある程度フラットな周波数特性で音源を再生してくれます。

それ以外の基本スペックも高い。

リニアな位相特性も実現している、ということですが、それは僕にはよくわかりません!

サウンド

サウンドそのものについて。

レンジが広く、解像度が高く、音量も出るので、ホーム、スモールスタジオのメインスピーカーとして運用するのに充分な性能です。

今のセッティングはこんな感じ。

金物が目立って聴こえるので、HFを-2dBしたらちょうどよくなりました。

また、ローエンドの拡張スイッチがあるんですが、40Hzにするとただブーストされる感じで過剰かなと感じたので、デフォの50Hzで。

ボリュームは最小で十分。

NF-01Aと比べて

10年ほど使っているFOSTEX NF-01Aと比較して

・高域、低域の分離感、解像度が高く感じる
・中域が奥まってウェットに聴こえる
・中域が掴みづらく感じる

高域、低域の分離がよくすっきり聴こえる反面、中域がどこか遠くにいるような感じがしてちょっと気持ち悪い。他の部分が聴こえすぎるからかもしれない。

単純に慣れの問題かもしれませんが、特に歌モノを作っているかたはそこを気にして試聴してみてほしいです。

リバーブやルーム感の聴こえかたが違うので、そこも慣れが必要。

NF-01Aのほうがだいぶ大きいんですが、レンジ感はMTMのほうがあります。

特に低域はかなり見えるようになりました。今まで手探りで音作りをしていたんじゃないかというくらい。

2つのスピーカーを同時に運用してもよいかなと思ったんですが、判断を迷う原因にもなりそうなので、完全にMTMに切り替えることにしました。

超低域について

超低域が出るかどうかでアレンジ自体も変わってくるので大事です。

インシュレーターをかまして補正すれば、超低域もきれいに鳴ってくれます。このサイズでここまできちんと出るのはすごいはず。

今までサブウーファーを入れてたんですが、MTMならほとんどの場合入れなくても大丈夫そう。

クラブミュージックを作っていたら物足りないかもしれないですが。

一応、聴こえてコントロールできたほうがいいなあ。ということで、サブウーファーのレベルを合わせて別スイッチで鳴るようにはしました。

音量がでかい

スピーカーのサイズに比べてめちゃくちゃ出力がでかい。

裏のボリュームダイヤルを最小にしても、今まで使っていたNF-01Aより音量がでかい。

NF-01Aの最大音圧が104dB、iLoud MTMが103dBなのでほぼ同じはずなんですが。

通常の使用だと、間違いなく最大音量で鳴らすことはないです。

自動音場補正システム(キャリブレーション)について

このスピーカーのすごいところの一つは、同社のARC™ System 技術による自動音場補正システムをスピーカーそのものに内蔵していること。

前から音場補正ソフトSonarworks「Reference 4」を使っているんですが、プラグインとしてDAWに挟むのがめんどくさく、Windowsだとデスクトップアプリもうまく動作しないんですよね。

iLoud MTMならスピーカーだけで補正が完結するので、PCにソフトを入れる必要すらないのがうれしい。

音場補正が簡単で早い

iLoud MTMは付属のマイクを直接スピーカーに差して、1か所に設置し、測定のボタンを押して、4度音が流れたら設定が完了します。1分もかからない。めちゃくちゃ早くて逆に不安になる。

Reference 4だとオーディオインターフェイスに適切な音量を入力し、20か所ほどバラバラの場所で測定をしないといけないので10分くらいかかるんですが。

インテリアの配置を変更したときなど、部屋の響きが変わったときに気軽に再測定できるのがよいですね。

「音場補正は仕上げ」のイメージ

試しに雑に置いて音場補正をして聴き比べてみましたが、やはり、スピーカーの置き方や反射などにも気を遣って、環境の影響を最小限にして、仕上げに音響補正をする、という場合のほうがよいサウンドになりますね。

スピーカーのセッティングもマニュアルに丁寧に書いてあるという親切っぷり。

■iLoud MTM Documentation and Manuals | IK Multimedia

周波数特性について

実際にフラットになっているのかをSonarworks「Reference 4」で周波数特性を見てみました。NF-01AとサブウーファーPM0.5-Subも一緒に。

iLoud MTM 補正前

補正前は、音がぼんやりしていて印象がよくなく、大丈夫なのか…という感じ。それでも全体だとフラットに出てますね。

部屋の鳴りの影響が大きい150Hzあたりがでっぱっている。

iLoud MTM 補正後

よりフラットに近くなりました。150Hzのでっぱりも完全ではないですが抑えられています。

その下の超低域が40Hzまでフラットめになっている。左右の差も少なくなりました。

聴感上も気持ちいいサウンドになってます。

FOSTEX NF-01A + サブウーファーFOSTEX PM0.5-Sub

低域がグチャグチャで、DAW上でキャリブレーションしないとモニターに耐えられません。また、高域も全体的にジリジリしてますが、その上の方はあまり伸びてない。

FOSTEX NF-01A自体の周波数特性は55Hz〜40kHzなので、低域は55Hzからロールオフしています。

おまけに、iLoud MTMでキャリブレーション後、さらにReference 4で補正をやってみたところ、ひどいことになるのかなと思いきや、なかなかよさそうなサウンドになったのでアリだなと思ったのですが、MTMの導入でReference 4の使用をやめるという目的があるのでやめておきます。

軽くて小さい

MTMは1本2.5kg。NF-01Aが9.6kgなので、4分の1くらいの軽さ。

大きさも半分以下。寸法は264mm x 160mm x 130mm。

軽すぎて、届いたときにこれだと思いませんでした。

その他

クイックマニュアルにほとんど文字が書いてないのがおもしろい。どの言語圏でも簡単に使えるようになっている。素晴らしい。

付属品。

スタンド2種類、マニュアル、測定用のマイク、マイクケーブル、マイクホルダー、電源ケーブル。

裏。

インプット、ボリューム、USB、ARC MIC IN、各調整スイッチなど。輸入販売のHOOK UPさんのシールが貼ってある。

USBはアウトプットとして繋ぐものではないです。ファームウェアのアップデートが期待できます。

スタンド。

メモリが書いてあって左右の角度を合わせやすい。

セッティングしたところ正面。

スタンドがインシュレーターを兼ねてるっぽいんですが、別のインシュレーターを挟んだら低域の締まりがよくなったので挟むことにしました。見た目は悪いし不安定っぽいですが…。

おわりに

僕は以前から音響補正を使っていたのであまり感動はなかったし、すんなり移行できそうですが、使ってない人がいきなり導入したら結構衝撃があるかもしれません。

長期間使うものなので、みなさんは僕のように直感で買わず、なるべく一度試聴しましょう。

音場補正のおかげで、店頭と自宅でのサウンドの差異が少ないのもこのスピーカーのよいところです。

■iLoud MTM(1ペア)| Rock On Line eStore
■iLoud MTM(1本)| Soundhouse

測定用にマイクスタンドも必須。

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