音楽における編曲とは、
端的に言えば、楽曲の主旋律/歌メロを作る事を「作曲」、それ以外の音を作る事を「編曲(アレンジ)」という。
そうなんです。ですが、この説明だけで理解できた人を僕は知らない。
もうちょっと分かりやすくならないかなあと思って、いろいろ書いてみます。
ジャンルによっても定義が違うので、今回は「パソコン完結(DTM)で作る歌モノ」限定で説明しますね。
とりあえず聴こう
今回は日本古謡の「さくらさくら」(作詞・作曲者不明)を編曲してみます。
✓まずは作曲の部分。こんな感じで、歌う部分のメロディを作るまでが作曲・作詞です。
メロディの音そのもの(ボカロの声)じゃなくて、メロディのラインを作る所までが作曲です。思いついたメロディを楽譜に書いてもその時点で作曲です。
✓つぎは編曲の部分。歌う部分のメロディ以外の音を作ります。
メロディの後ろに音がつきましたよね?これが編曲です。
わかんない?じゃあちょっと大人な感じにしてみますか。
どうでしょ?歌う部分のメロディは同じでも編曲次第で全然違った雰囲気になりますよね。
ですよね。これでもわかんないですよね。
じゃあさらに詳しく、実際どういう行程があるのか書いてみよう。
編曲でやっている事
じゃあさっきのこの曲で解説しますね。
曲調(ジャンル)を考える
激しくするのか、優しくするのか、楽しくするのか。ロックなのかダンスなのかクラシックなのか。
歌うアーティストやどういう場面で使われるのかに沿って考えます。大体は作曲者かプロデューサーに指定されます。
テンポやキーも曲調に合わせて決めます。
「この曲はバラードでクラシックの感じを入れたポップ。テンポは♩=120で、キーはオリジナルからちょっと下のFマイナーで優しめに歌わせようかな」っていう感じにしました
ハーモニー(コード・和音)を考える
ハーモニー(=縦に詰む音の組み合わせ)を考えて、曲の雰囲気を作っていきます。編曲において一番楽しい行程ですが、作曲家さんに指定される事が多いので悲しい。
こんな風にどこでどのハーモニーを使うのか決めます。今回の曲とは関係ない楽譜ですが。
今回の曲は、切なくて美しくて儚い感じのハーモニーをつけてみました。僕はいつも捻りすぎだと怒られております。
楽器編成を考える
どの楽器を入れるのか考えます。バンドやオーケストラなど、ジャンルによって決まってたりもします。
今回はピアノ、ベース、ドラム、ホルン、ストリングス(ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロの総称)にしてみました。
アンサンブルを組み立てる
ここが編曲者の一番の腕の見せ所ですね。どのパートをどういう風に演奏させるか細かく決めていきます。
この曲の場合
ピアノ – 伴奏の軸にして、メロディを支える。イントロもピアノを主役にする
ベース – ドラムと一緒に盛り上がる所で入る。このパートだけ自分で演奏して録音してます。
ドラム – ベースと一緒に盛り上がる所で入る。大きなリズムで壮大な感じを出す。
ストリングス – 弾かせ方を工夫して楽曲に変化をつける。盛り上がる所で力強く。
ストリングスを弾き方、パート別にして、ウインドチャイムも入れて、全部合わせるとパソコンの画面上はこんな感じになります。ごめん全然わかんないかもしれない
今回は自分一人で完結させてますけど、演奏を他の方にお願いする時もあります。その場合は編曲者が楽譜を書いて指示します。
楽器によって指示の細かさが違っていて、ヴァイオリンなどのオーケストラ系は出来る限り細かく書かないといけないんですけど、ギターやピアノの場合は「ハーモニーに沿って勝手に弾いてね」で大丈夫だったりします。
ちなみに、イントロはほぼ100%編曲者が作っているので、イントロがよかったら作曲者じゃなくて編曲者を褒めてあげましょう!!!!
わかったよね?わかったよね?
…うん、じゃあ次にいこう
曲作りの行程で見る編曲
作曲から音源(CDやmp3)にするまでの行程を分解してみます。
✓作曲・作詞
– 歌うメロディを作る
✓編曲
– 歌うメロディにどういった伴奏をつけるか考える。そして実際伴奏をつける。
✓レコーディング
– 編曲に沿ってギター、ボーカル等を録音する
✓ミックスダウン(ミキシング)
– 各音のバランスをとる
✓マスタリング
– 仕上げ
作曲・作詞の段階で、歌うメロディと歌詞を作ります。この時、軽く伴奏をつける時もあります。
編曲段階では、軽い伴奏を一旦破棄して作業します。
生楽器を入れる時にはレコーディングが発生します。家でやる事もあるし、スタジオでやる事もあります。
編曲者がレコーディングすると、編曲作業の中に入るのでややこしい。
今回のさくらさくらはベースの録音を編曲者の僕がやっているので、編曲にくくってあります。でもクレジットになると分ける時もあるからやっぱりややこしい。
ミックス・マスタリングはざっくり言うと音量バランスと音色を整える作業です。
最近はこの行程を一人で全部やる方も多く、その場合ほとんどの作業を平行して進めていったりもします。
その他編曲のわかりくい所まとめ
・作曲者が編曲すると「作曲」としてまとめてクレジットされる時がある
・編曲者が演奏すると「編曲」としてクレジットされる時もある
・編曲者によって出来たり出来なかったりする事の幅が大きい
・コード譜までしか書かなかったり、ほとんど完成の所まで作り込んだりと、どこからどこまで曲に関わっているのか曖昧
編曲家とは
ついでに「編曲家」についても言及しときますね。
編曲家とは編曲を専門とする人で、
管楽器、ストリングス、コーラスを三つ揃ってこなせるようになれば、一人前の編曲家として認められるとされることもある
「認められるとされることもある」って曖昧すぎる…まあ大体あってますね。「こなせる」のレベルはあるでしょうけど。「最低限生演奏に耐えうるスコアを書ける」ことなのかな。
あと編曲家に必要なスキルとは
・様々なジャンル・曲調のアンサンブルを把握している
・メロディに適切なハーモニーをつけられる、それを論理的に説明出来るとなおよい。
・様々な楽器の奏法、音色、音域について精通している
・演奏者用のスコアを書ける
・出来れば楽器が演奏出来るといい
・パソコンも出来る方がいい
あたりかな。
僕も上記の事が出来るので編曲家を名乗っております。お仕事下さい。
おわりに
曲の出来って
作曲・作詞>>>>>>>>>>>>>編曲
なんですよね。芯になる曲がよくなければどんなにいい編曲をしても駄目だし、曲がよくなければ編曲自体に広がりが出せないし、曲が良ければ編曲が適当でも人気が出る時があるのです。つらい。
あと編曲は大体において印税は発生せずに単価なので、編曲家は死ぬまで作り続けないといけません。つらい。
こんな記事が。
作詞家・作曲家に比べて「編曲家」が冷遇されてる – NAVER まとめ
と、こんなわけで編曲とはなんなのか、分かったもらえましたでしょうか?
もっと実際の、具体的な流れを知りたい!という方はこちらの記事をどうぞ!