今回は音楽データを納品する仕事をしている作曲家、音楽家が、それぞれどういう音楽データを作れるのか、どういう仕事がしやすいのかということについて。
音楽を依頼する方に向けてのお話になります。
僕も「効果音を作れますか?」 みたいに、普段やらないことをよく聞かれたりします。
音楽を発注するかたって、その音楽家がどこまでやれるのかっていうのがわかりにくいと思うんですよね。
かといって一人の音楽家があらゆる音の仕事ができるわけじゃない。専門分野があるわけですよね。
なのでそういうスキルとか専門分野、機能に分けて、このカテゴリの人は大体こういうものを作れるよ、こういうのが苦手だよっていうことを説明をしたいと思います。
音楽を作る人を大雑把に分類をするとこんな感じ。音楽データを制作している人はざっくりとこのどこかに当てはまるはずです。
・BGM
・インスト
・劇伴
・パフォーマンス
・効果音
歌ものは歌が主役になっている音楽。メロディと歌詞が入ってたりっていう
インストは歌が楽器に置き換わったような楽曲。どちらかというと楽器の演奏者が作るような曲ですね。
BGM はバックグラウンドミュージック。店舗や映像の後ろで流れている音楽です。
パフォーマンス。これは音楽自体が効かせるというよりも、体や映像と一体になっている音楽。
劇伴。 これは映像や舞台、オーディオドラマなどの物語につける音楽です。
それ以外にもいろんな音楽の使われ方があるとは思うんですけれど、分類すると大体こんな感じかなと思います。
あとは効果音。
これも一応音として分類していますけど、音楽制作とはけっこう違うところにあります。
そして、この図は似たようなものを近くに配置してます。
たとえば劇伴が作れる人はBGMも歌ものも作れるよ、とか、歌ものを作ってる人はBGMは苦手だよとか。効果音は音楽とは全然別のスキルだよとか 。
今回はそういうことをひとつずつ解説していきます。
歌もの
歌ものは歌が主役の楽曲。
歌ものを作っている人は歌ものとはプロフィールに書いていない気がしてます。
歌ものを作っている人は、普段はコンペに参加していたり、ボカロ曲を作っていたり、自分で歌っていたりします。
特に日本の歌モノは他のジャンルと作り方が大きく違うので、歌ものを作っている人は、それ以外の楽曲を作るのが苦手な人が多いと思います。
主題歌とBGMみたいに分かれている作品がありますよね。そういうふうに、歌ものとBGMの人は別の方がよい場合が多い。
歌ものの人にBGMを作ってもらったりすると、メロディーがうるさかったり、主張が強い、ということがあったりします。
BGM
BGMはバックグラウンドミュージック。
ゲーム音楽も大体はBGMとして作られるものが多いです。
これは声や舞台装置が主役になり、そのうしろを装飾する音楽です。
なので、音楽が主役になる歌ものとは逆の作り方になるんですよね。
映像と一緒に音楽を流す状況でも、BGMではなく歌ものが使われる場合、音楽が一番前に出てくるという場面が多い。
歌ものって、耳を惹きつけるために多く展開したり、リズムが変わったりなど、フックがたくさん仕掛けてあるんですよ。
短い時間にいろんな音を聞かせるために、音をギュッと詰め込んである。いわゆる音圧も大きい。
それに対してBGMは基本的に会話とか環境の後ろで流すっていう音楽なので、
耳に引っかかるようなフックを使わないとか、圧がなくて、声などを入れるスキマをつくっておくっていうことが多いです。
さらっと流れていくような音楽ですね。
なので、普段BGMを作っている人は耳当たりの良い曲を作ることが多いです。
インスト
楽器が主役になった楽曲です。これは機能的には歌ものに近い音楽。
ソロ楽器の演奏者が曲を作るとこういう感じにはなります。
BGMとして使われるということはなくもないんですけど、ここだとあえて分けました。
といってもBGMにも近いので、インスト系の音楽を作っている人はBGMのほうも作りやすいとは思います。
あと盛り上がったりする劇伴系、ゲーム系の音楽も作りやすいんじゃないかなと思います。
パフォーマンス
パフォーマンス型は音楽そのものよりも動きや映像に合わせて音楽を組んで行くような人ですね。
パフォーマンス系の人に BGMや歌モノを作ってくださいっていう人はあまりいないと思うんですけど、たぶん苦手です。
性格的には一点突破っていうのとパーソナルが強いっていうのがあって、
パフォーマンス系の人に音楽を頼むなら「この人にしかできないな」とか「この人である必然性があるもの 」を頼む必要があります。
メディアで言うとCMとかtiktokとかジングルとか。そういうところにはハマりそうだと思います。
めちゃくちゃ極端に言うとHIKAKINさんみたいな感じ。
ホリエモンチャンネルのジングルはHIKAKINさんなんですけど、パフォーマンス系の人はこういった使いかたが一番いいと思います。
劇伴
劇伴というのは映像作品、時にオーディオ作品のための音楽です。
ドラマやアニメや舞台、オーディオドラマなどにつける音楽。
映像作品のための音楽ってあらゆるものを使うんですよ。
たわいのない会話シーンについてるバックグラウンドミュージックとか、
追いかけられてる時に使うチェイスミュージックとか、
感情に沿って徐々に盛り上がっていく音楽とか、
音楽だけでは成立しないような音楽とか 、
一番盛り上がるところで歌ものが一緒に入るとか。
クラブのシーンがあったらそこで流すためのクラブミュージックを作ったりとか、
テレビから聞こえる音楽、ラジオから聞こえる音楽とか、
その場で実際に演奏している音楽とか
映像に同期させた音楽とか、短い効果音のような音楽まで。
なので、劇伴作家と名乗っている人はいろんなジャンルに対応できます。
ただ、いろいろな種類の音楽に対応できるけれども、それぞれのジャンルにものすごく深いかって言うとそうでもない人は多い。
僕もどっちかと言うと劇伴の作家なんですけれど、展開がすごく激しい曲とか、歌ものは少し苦手です。
もちろん、個人でそういった得意不得意の傾向はあります。
あと「劇伴」とプロフィールに書いてる人は実務に関わってるかどうかで大きく実力に開きがある。
実際の現場だと、物語を読み取ったりだとか、 映像につきやすい、つかいやすい音楽を作ったりだとか相手の状況を読むとか、
そういった、音楽自体を作る以外の能力が必要になってくるんですよね。
多分、劇伴系の人はパッと聴いて実力がわかりにくいんじゃないかなと。
一見あまりパッとしない音楽を作っているような人でも、実務でやっている人はかなり実力があると思って間違いないです。
逆に歌ものの人はアウトプットだけの勝負になりがちなので、実務経験では実力にそこまで差がないんじゃないかなと思います。
効果音
効果音。 映像につけるごく短い音ですね。
音楽と効果音って同じ音でも全然違うジャンルなんですよ。作り方が全然違うんですよね。
僕も「音楽制作のついでに効果音も一緒にできますか」とよく聞かれますけど「できません」って答えますね。
音楽を作っているほとんどの人は効果音までは作れないんじゃないかなと思います。
ゲームとかアプリに関わっている人が作れるかな、という感じです。
あと、世の中に出ているノウハウが少ないので、作ったことがない人が作ってくださいって言われて急に作れるものじゃない。
効果音って楽音、例えばピアノとかシンセとかを使って作る場合もあるんですけど、
「フォーリー」といわれる、足音とか服の音とか、実際の音を録音して物音をつける作業はさらにまったく別物ですね。
フォーリーは本当に専門の、フォーリーアーティストといわれる人にお願いしたほうが良いです。
選曲
おまけに選曲。
場面や映像のどこに曲をつけていくか、という「選曲」という作業がありますが、
作曲、効果音とは全く別のスキルです。
「ある程度長い映像に、いくつかの音楽をつけて演出してください」というのは 、
劇伴をやっているかたはちょっとはできるかもしれませんが、それ以外のかたはそういうことは基本できないと思います。
選曲をするためのスキルがあったり、自分のワークフローが確立されていないと時間や手間もかかる作業です。
なので、選曲ができない人に音楽をお願いする場合は、
どういう演出にしたいか、どういう曲をつけたいかをあらかじめきちんと絞っておくとうまくいくかなと思います。
おわりに
というわけで、それぞれの分野の音楽家がどういうことができるのかということをざっくりお話ししてみました。
いろんな方がいるので完全には分類できないんですけど、傾向としてはこんな感じということで。
あと、できるけれども、あえてプロフィールなどから消しているということもあります。
苦手だからとか、ブランディング的にとか。
逆に、さらっとした曲を作りたいからBGMメインの人に歌を作ってもらう、とかそういうこともできなくもないとは思います。
音楽をお願いしたい、という時の参考にしていただければなと思います。
ではまた。