雅楽で使用される管楽器『笙』の打ち込み方法まとめです。
打ち込みでの再現度 ★☆☆☆☆ 簡単
サンプルさえあればかなり本物っぽくできます。
奏法が少ないので、いじるパラメーターもシンプル。
打ち込みは簡単なのに再現度が高いので、ほとんどの場合、実際に演奏をレコーディングする必要がない楽器だと思います。
笙について
By 月岡芳年
打ち込みの前にまずは楽器の事を知っていきましょう。
笙(しょう)とは、雅楽などで使う管楽器の1つ。フリーリード類に属する。
匏(ふくべ)と呼ばれる部分の上に17本の細い竹管を円形に配置し、竹管に空けられた指穴を押さえ、匏の横側に空けられた吹口より息を吸ったり吐いたりして、17本のうち15本の竹管の下部に付けられた金属製の簧(した:リード)を振動させて音を出す。
パイプオルガンのリード管と同じ原理である
ハーモニカと異なり、吸っても吹いても同じ音が出せるので、他の吹奏楽器のような息継ぎが不要であり、同じ音をずっと鳴らし続けることも出来る(呼吸を替える時に瞬間的に音量が低下するのみ)
その音色は天から差し込む光を表すといわれている。
まとめると、パイプオルガン+ハーモニカのような楽器。
音域
A4~F#6
現代音楽等では也をA#5、毛をF5として簧を付けた特別仕様の笙が使われることもあり、そうすると、意外にも平均律の12音全ての音が出せます。
基本的にかなり高めですね。ピッコロと大体同じくらい。
奏法
主に合竹という、和音を鳴らす奏法で演奏される。合竹は全部で11種類。
合竹を組み合わせたり、アルペジオ的な吹き方をしたりして演奏します。
独奏だとクローズドなボイシングのせいかあまりコード感を感じませんね。
11種類の合竹全部を打ち込んでみました。
乞
一
工
E711 13 C#5D#5E#5の5度和音を3つを重ねた和音ともとれる。
凢
D69 最も明るい和音。よく聴く響きのような気がします。使いやすそう。
乙
下
十
十(双調)
美
行
比
基本的にテンションが入っててクローズドボイシングですね。
「十(双調)」と「行」は5音で構成され、他は6音で構成されています。
ソロを吹くとこんな感じ。2:14~
打ち込み方法
いよいよ打ち込みの考察をしていきます。
音色
市販の音源は少ないです。
僕の場合は「WeLCOMe tO JAPaN Vol.2」というサンプルライブラリに収録されている笙を平均律にチューニングし、Kontaktにマッピングして使用しています。
■WeLCOMe tO JAPaN Vol.2 | Media Integration, Inc.
笙がない場合、同じ金属リードのハーモニカは割と近い音なので、代用できるかもしれません。
こちらのフリー音源で試してみました。
倍音が少なく、神々しさが足りないですが、いけそうです。高さが足りないので、サンプラー内で無理やり音域を引き伸ばしましょう。
和音
伝統の和音、合竹以外でも響くようにするには、
・クローズドな和音にする
・2度を必ずぶつける
・5、または6和音
この3つが重要です。必然的にテンション入りのコードになります。
伝統的な曲の場合にはモードっぽく、色彩効果として考え、
コード進行がある曲では、上記のルールを踏まえ、コードに沿った響きにするとよいと思います。
色々
奏法は3種類、和音、ソロ、アルペジオ。
基本的にボリュームのみで表情を出します。強弱による音質の変化もあまり感じられません。
音を切らさず演奏できますが、息継ぎの時は音量が下がるので、そこも再現できればよいかなと。
フラッタータンギングのような奏法もありますが、あまり実用的ではないです。
また、現代的な使い方としては、モンスターハンターの「陽昇る水景」で使われています。試聴の、残り15秒のところから。
つくってみた
笙を入れて曲を作ってみました。パッド的にフワッと入れてます。
おわりに
打ち込みとしてはかなり簡単で、生っぽくできるのですが、なかなか使う場面がないので、無理やりねじ込んでいきたいところ。
サムネイル画像に使っているこれは、笙に似たタイの楽器で、ケーンといいます。笙の写真がなかったのでおみやげにもらったやつを使いました。
実際に買って研究してみようと思ったら入門用でもめっちゃ高かった…2000円くらいで買えると思ってすいませんでした…