トラックを解析し自動で適切なコンプとEQをかけてくれるプラグインエフェクト「Neutron」でミキシング2.0の時代がはじまる

プラグイン

今まで、買うだけで音がよくなるプラグインエフェクトなんてなかったんですが、ついに買うだけで音がよくなるプラグインエフェクト、iZotopeの「Neutron(ニュートロン)」が発売されました。

なぜ買うだけで音がよくなるのかというと、このプラグインは他のプラグインと違って、モノではなく、スキルが手に入るから。

今までは、プラグインエフェクトという「モノ」を買っていたので、いくら質がよいコンプレッサーであっても、「このトラックにはどれくらいのアタック、リリース、レシオで、どれくらいのスレッショルドが適切なのか」を判断するスキルがなければ使いこなせなかった。 ニュートロンは「このトラックにはこういうエフェクトの使い方をするのがよさそうですよ」というスキルを提供してくれる。

それが、確実にミックスの質を底上げしてくれるのです。

ざっくり

・NeutronはEQ 、ダイナミックEQ、シングル・マルチバンドコンプレッサー 、トランジエントシェイパー 、エキサイター、リミッターの複合エフェクト
・トラックを解析して適切な処理をしてくれる「トラックアシスタント(Track Assistant)」機能
・自動、手動でマスキングを補正できる「マスキングメーター(Masking Mater)」機能
・CPU使用率高め
・時間短縮ができる
・トラックの処理を学べる
・音を整える方向に作用する
・音質だけでなく、曲全体の音圧も上がる
・ダイナミクスの大きな曲には向いていない
・バイパス時に音量が変わらないので聴き比べやすい
・初心者ほどおすすめ
・スタンダードで十分

トラックアシスタント機能がすごすぎる

トラックを解析して適切な処理をしてくれる「トラックアシスタント」機能がめちゃくちゃ優秀です。

使い方は超簡単。上の「Track Assistant」を押してトラックを再生して待つだけ。しかも解析がわりと早い。

neutron_lead

どこまでやってくれるのかというと、ボーカル、ピアノ、ベース、ドラムといった楽器の識別、EQをかける帯域、かけ具合の調整、エンハンサーやマルチバンドコンプレッサーのバンド、リダクション量、かかり具合等の設定、ミュートした時と同じ音量になる、など。かなり多くのことをやってくれます。

しかも、マルチバンドコンプを多重掛けしたりして、自分でやるよりも丁寧なんです。

本当にアシスタントがついたみたいに「おおまかな処理をやっておきました」とか、「音を整えておきました」とか、「こういう音はどうですか?」って提案してきたり、レベル管理とか、音質調整とか、あまり音楽的じゃない部分をやってもらうイメージです。

特に初心者だったら自分でEQ、コンプを設定するよりもいい結果になるはずです。少なくとも独学で15年以上ミックスをやっている僕よりも処理が適切な感じがします。

もちろん、いつも思ったとおりの効果が出るとは限りませんが、参考やたたき台にすることができる。

逆に、エンジニアさんは必要な処理がわかっていたり、自分の思い描いた音をそのままサウンドに反映できると思うので、必要ないかもしれません。

クリエイティブに時間を割けるようになる

僕は作曲・編曲家なので、ミックスの技術を高めたいわけじゃないんです。作品のために必然的にミックスを学んでいるだけ。

音圧が出なくてシビアなレベル管理をがんばったり、EQで問題がある部分を削ったり、ベースとキックが分離しなくて悩んでいたりといった、クリエイティブとは言いがたい作業で試行錯誤する時間というのは排除したい時間なんです。

ニュートロンは、そういったことをほとんど自動で解決してくれる。そのぶんクリエイティブなことに時間をまわせる。

仮のボーカルなど、あまり時間や労力を使いたくないけど、そこそこいい音にして曲作りのテンションを上げたいトラックに使うのも時間短縮になりそう。

ミックスを学べる

教材としても機能するのがこのプラグインのすごいところ。

いつも「このくらいでいいか」と思って軽くコンプレッサーをかけて済ませているようなトラックにかけると「こういうのはどうでしょうか」と提案してくれる。

それにハッとするときがあって、自分でも気づいてなかった部分を指摘されたような感覚になる。中域のダブつきがあったんだな、とか。

ミックスがうまくない人は、問題点に気づく力も弱いし、問題をどうやって解決すればいいのかもわからない。それを教えてくれる。

本を買っても、EQのポイントが決まっていたり、本と素材が違うので実際に自分のサウンドに反映するのは難しいけれど、これはそのトラックに合ったエフェクトのかけ方を教えてくれるので、パラメーターを見るととても勉強になる。

こういうの考えると、人工知能に育てられた人間みたいになっていきそうですね。

自動、手動でマスキングを補正できる「マスキングメーター」機能

もう一つの目玉が、複数のトラックが重なった時に音が曇って聴こえづらくなる「マスキング」を視認、修正できる「マスキングメーター」機能。

対象のトラックを指定すると、 マスキングされている帯域が視認できます。

ベースのトラックにドラムのトラックをターゲットに設定した画面です。白い帯が濃かったり、ピンクのバーが濃かったりする部分が多くマスキングされているところ。

neutron_mask

右上の「Lean」を押すと自動でマスキングを解消するEQ設定にしてくれます。

トラックアシスタントだけでもわりとクリアになるんですが、これでさらに音がカブっている部分を解消できます。

対象のトラックのEQ設定も同じ画面で変更できます。便利。

音はPOP向け

タイトめにコンプレッションがかかった派手な音になる傾向があるので、ポップで現代的な曲に向いていると感じます。こもり気味、ルーズなトラックをスッキリさせ、音を立たせたいときに効果が高いです。

アシスタントの設定を変えることで、かかり方を軽くしたり、ウォームな音にしたり、ということも多少できます。

assistant

生っぽいのもいけるし、エレクトロなものもいける。

オーケストラなどの、ダイナミクスが大きいものには向いてないかもしれないです。

整える方向に作用するので、エフェクトなどでめちゃくちゃに遊んで、あとはこいつに整えさせる、というのもアリだと思う。

また、適切にEQ、ダイナミクスの処理をされているから全体の音圧も上がりやすいと思う。マキシマイザーで無理やり上げるのとは違う、正しく高い音圧を得られるはず。

各エフェクトの質感もクリアで、滑らかでよいです。操作もしやすいし見やすい。

エフェクトのかかり方をもう少し補足すると、EQはブースト、カットの量、コンプレッサーのリダクション量はプリセット固定なので、完成された音にかけるとやりすぎになってしまう可能性があります。

スタンダードで十分

ニュートロンにはスタンダード( standard )とアドバンスド( Advanced )があり、

違いは、アドバンスドは各エフェクトが個別で使えるのと、7.1チャンネル対応という部分だけです。

このプラグインの飛び抜けてすごいところはトラックアシスタントとマスキングメーターなので、スタンダードがあれば十分だと思う。

ちなみに、僕はバンドルになっている「 Music Production Bundle II」 を購入しました。

アドバンスドを買うなら、一つ飛ばしてバンドルにしたほうがお得感強いです。

バンドルには以下のプラグインが収録されています

・Ozone 7 Advanced (includes Insight)
・ Nectar 2 Production Suite
・ Neutron Advanced
・ RX Plug-in Pack
・ VocalSynth & Trash 2 w/ Expansion Packs

CPU使用率高め

CPU使用率はどういう処理をするのかでかなり変わります。

WavesのL316よりちょっと低めだけれど、トラックによっては超えることがある。SlateDigital FG-Xよりかはだいたい低め。

より音が複雑なトラックのほうがマルチバンドでエフェクトがかかるので、CPUを消費する傾向にありますね。

実際にどういう処理をするのか

最後に、実際にどういう処理をしてくれるのか見ていきましょう

ミディアムテンポでクリーンなギターのバッキングにかけてみました。

EQ

neutron_eq

7番だけダイナミックEQで処理してますね。突発的なアタックを抑える設定。

ローカットを入れてあって、その上の低音を出している。ギターだということがきちんとわかっているようです。

コンプレッサー1つめ

neutron_comp11

針のようなメーターのヴィンテージモード。マルチバンドで、中域、高域わけてかかってます。かつ、低域のアタックがおいしい部分にはあまりかからない。ならすような処理ですね。

コンプレッサー2つめ

neutron_comp2

今度はレシオきつめでアタック早め。リミッターに近いかけ方。こんなにかけて大丈夫?って思うんですが、ナチュラルな出音です。MIXが50%なのがキモなんでしょうか。

エキサイター

neutron_ex

こちらもマルチバンド。結構かかってますね。

個々のプラグインが見やすいので、自動で設定した後に自分でいじるのも楽です。

おわりに

これほんとすごいです。ここ数年で最も感動したプラグインではないでしょうか。

プラグインのほうからミックスを提案してくるというミキシング2.0の時代がはじまったな、とも思います。プラグインとの対話。未来きた。

自分の発想になかった提案をプラグインがしてくるというこの感動は、自分のトラックに挿してみないとわからないと思うので、デモを試してみることをお勧めします。

もちろん曲やアレンジや音選び自体がよくないとどんなにミックスが適切でもダメなのですが。これいつも言ってる。

「ミキシング2.0」とか書いちゃったけど、よく考えたらProtoolsの登場で2.0だと思うので、今回は3.0ですね。例えだからどうでもいいか…

デモ・購入

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■iZotope | Neutron

国内で購入する場合(たぶん日本語マニュアル付き)

■Rock on e-store | Neutron 2 Standard

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