シンガー・ソングライターって音楽業界の中で最も成功しづらい分野ですよね。エクストラハードモード。なので、シンガー・ソングライターが商業的に成功するにはどうしたらいいのかということを、いつも思考の訓練に使っています。
今回は『シンガー・ソングライターが商業的に成功するために、スキルを「成功のランダム性」と「希少性」にわけて考えてみよう』という回。
ここでのシンガー・ソングライターとは、
・1人で活動
・作詞、作曲をして、歌う
・ギター、もしくはピアノの弾き語り
・あまりお金がない
というのを条件にして進めていきます。
シンガー・ソングライターのスキルで考えられるものを書き出し、その中で成功のランダム性と希少性を考えてみる。
成功のランダム性が高いほど、可能性が不確定なので、平凡からある程度突き抜ければ成功する可能性が高いが、確実に成功するとは限らない。ランダム性が低いほど勝つための条件が厳しくなり、ブレもないので、そこで勝てる人が決まってくるが、条件を満たせばほぼ確実に勝てる。
希少性が高いほど、ライバルが少なく、持っていれば有利になる。
◎○△×の4段階で考えていきます。
ランダム性 | 希少性 | |
パソコン | × | ○ |
英語 | × | ○ |
英語以外の言語 | × | ◎ |
容姿 | × | ○ |
オーディション | × | ◎ |
曲 | △ | × |
歌詞 | △ | × |
歌唱 | △ | × |
ギター・ピアノ演奏 | △ | × |
ライブ | △ | ○ |
喋り | ○ | △ |
生放送 | ○ | ◎ |
動画 | ○ | ◎ |
写真 | ○ | ◎ |
ツイッター | ○ | ◎ |
装い | △ | ○ |
絵 | ○ | ◎ |
+属性 | ◎ | ◎ |
これらは僕が考えただけのものなので、もちろん他にもスキルはある。
1つづつ考えていきます。
パソコンを扱えるスキルや外国語を読めたり話せたりするスキルにランダム性はない。だが、活動の幅が広がるのでほぼ確実に収入のプラスになるし、習得までの労力が少ない。英語は日本国内のみ希少性が高い。パソコンは意外とできない人が多い。
音楽業界が苦しくなってきている日本での活動をやめて、経済的に伸びているアジア圏の言語を覚えてそこで活動する、という手段もありそう。
容姿にもランダム性はほぼない。生まれながらにして持っているものだし、人によってズレはあるものの、評価はある程度同じ。もちろん美しかったり可愛かったりかっこよかったりするほうが確実に有利。そして、有利になるほどの容姿を持つ人は少ない。
オーディションもランダム性はほぼないと言っていい。そのオーディションではどういう人が勝てるのか、というのはほとんど決まっている。かといってその条件を満たせる人は少ない。
曲、歌詞、歌唱については、シンガー・ソングライターの場合ここがメインなので、ある程度スキルがあっても競争相手が多すぎて差別化するのが難しい。プロも競争相手であることを忘れてはいけない。だが余地がないわけではない。
弾き語りで使うギター・ピアノ演奏も競争相手が多い。しかし、伴奏以上のことをする人はほとんどいないので、わりと余地があると思う。
ライブについても同じく、みんなやっているものの、演出などを凝っている人はほぼいないので、かなり余地がある。
喋りも応用力が高いスキルだけれど、ラジオなどになるとプロも大勢いるので差別化は難しい。
生放送、ツイッター、写真(インスタグラム)、動画など、わりと最近始まったサービスは競合が少なく、きちんとスキルがあって面白い人はかなり少ない。さらに、まだおもしろい使い方を発掘しきれてないので大いに可能性がある。
装いも、最近は特殊な恰好をする人がわりと増えているけれど、まだ余地はある。
絵を描くスキルは直接音楽とは関係ないけれど、組み合わせると強いし応用範囲が広い。
+属性というのは、音楽以外のものと組み合わせる、ということ。遠いほど意外性があり新鮮。自分の好きなものと組み合わせないと辛くなる。かなり可能性は残されている。
いろいろまとめ
・成功のランダム性と希少性を足した評価が高いほど成功の難易度がやさしい(◎+◎が一番難易度がやさしい)。
・音楽に関係が近く、ランダム性があるスキルのうち2つが突き抜けていればあとはどうとでもなる。
・ランダム性がないものほど、単純な練度が問われる。体系化されている場合が多いので、ある程度までのスキルの習得が簡単。
・スキルを掛け合わせるのも強いが、低いスキル同士だとあまり意味はない
・やっている人が少なく、かつ受け手の人数が多い掛け合わせを考えよう
・憧れていること、やりたいことが得意なこととは限らない
やめることを決めろ
どれもこれもやっているから平凡になるわけです。やらないことを決めることで、その「いびつさ」が個性になる。
特に「みんながやっているけど自分は得意ではないこと」は率先してやめるべき。
現在は苦手なことをやめても成功の道筋は多いし、やめることが多いほど得意なことに時間と労力を割り当てられるし、独特なポジションを発見しやすくなる。
・曲を作るのが苦手
↓
カバーや替え歌を中心に活動。ソングライターじゃなくなるけど、肩書にこだわる必要もない。
・ライブが苦手
↓
動画投稿やSNSを中心に活動
・顔に自信がない
↓
仮面や被り物をしたり、生放送だけしかやらない
この程度だとまだ競合が多いので、さらに自分の得意なことをミックスしたり、突き抜けることが必要ですが。
逆に、「自分では好きでもないし得意だとは思ってないけど数字は出るもの」は捨てずに大事にしよう。
ただ、食わず嫌いはやめる。一回やってみてから辞めるかどうか判断する。意外と得意だったり楽しかったり、というパターンもあるので。
シンガー・ソングライター界の流れを分析してみる
少し前までのシンガー・ソングライターは
aiko、秦基博、絢香、コブクロ
など、王道に近いポジションのアーティストが多かったけれど、
最近台頭しているのは
米津玄師、大森靖子、岡崎体育、伊東歌詞太郎
など、極端なポジションの人間が多いように感じる。
王道な人間の影響力がまだ強いことが一つの原因としてありますね。最近は弾き語り形式で新鮮な楽曲を作ることが非常に難しくなっている。王道な楽曲で成功するランダム性が低くなっています。
おわりに
僕がシンガー・ソングライターにアドバイスするならどうするか、ということで考えてみました。
あれをやれこれをやれ、ってアドバイスする人は多いと思うんですよね。だから素直にあれこれやって、自分の強みでもない平凡なことに時間を費やし過ぎてしまう人が多い気がする。
なので、今回のポイントは「やめること」。
なんとなくやっていることを、ほんとうにやり続けるべきか、立ち止まって考えてみる。そして、自分の得意なことや強みに集中する。
自分のスキルを一旦書き出してみると、思考が整理され、わかりやすいのでおすすめです。
シンガー・ソングライターにおすすめの本
マーケット感覚を身につけよう
「何を学ぶべきか?」「自分は何を売りにすべきか?」という「マーケット感覚」が身につけられる本。
やさしい文章なので文字が苦手な方も読めると思う。
諦める力~勝てないのは努力が足りないからじゃない
こういった本って、わりと感情論になりがちですが、為末 大さんの本はロジカルだったり、マーケット感覚に基づいた内容なので実際に役に立ちます。
成功は“ランダム”にやってくる!
僕が好きすぎておすすめしまくってる本。成功はランダムであり、そのランダムをどうやってコントロールするのか、という内容。
おまけ
歌わなくったっていいんだよ。