ギターから音楽をはじめたのに、すっかり弾かなくなったこおろぎです。
今回は1962年製ギブソンハミングバード(Gibson Hummingbird)をサンプリングしたアコースティック・ギター音源『Sunbird』のレビュー。
メーカーはAcousticSamples。Windows/Mac対応、無償のUVI Workstation 2に読み込んで使います。iLokも必要。
評価★★★★☆
✓音が良い&繋がりが自然(特にストローク)
✓ヴィンテージ感が合わない場面がある
✓U87をはじめ、3本のマイクの豪華さ
✓パラメーター多すぎ
✓パラメーターを全てMIDI CCに割り当てられる
✓ギターを弾いたことがないと追い込むのは難しいかも
✓ループは使いづらい
✓CPU使用率が高い
まずは3曲作ってみましたので聴いてみましょう。
ピックのストローク&ミュート
早いピックのストローク。低音弦。
指弾きアルペジオ&ソロ
アコギが全面に出てるのに打ち込みの違和感がほとんどないです。
2曲目はコードをエディットしましたが簡単でした。
3曲目はChordモードとSoloモードを組み合わせてます。ハンマリング&プリングとダブルストップがSoloです。
音が良い&繋がりが自然
それぞれの音も良いのですが、それに加えて、コードをアップ&ダウンストロークで弾く音がめちゃめちゃ自然です。繋げて弾いても、いわゆる「マシンガン」になりません。
加えて、たくさん用意されてるパラメータを追い込んでいくことで相当生っぽくできます。
奏法は、アップストローク、ダウンストローク、ラウンドロビン、リリース、スタッカート、ミュート、パーム ミュート、ハンド ブロック、スライド、ハンマーオン、プリングオフ、リトリガー、フレット ノイズ、パーカッションなどが収録されてます。
1962年製、ギブソンと言うだけあって、ビンテージ風味で泥臭さは感じるので、マーティンなどのクリーンな音が好きな人は合わないかもしれないですね。特にアルペジオはちょっと荒く聴こえる時があります。
僕も曲調によってクリーンなIlya Acoustic Guitarと使い分けています。
ちなみにCPU使用率は僕の環境で20~40%を行き来する感じですね。めっちゃ使います。
ギブソンハミングバードとは
Maggie Osterberg via Compfight
ギブソンハミングバード(Gibson Hummingbird)は、1960年から発売された、美しいハチドリが描かれた鮮やかなピックガードが印象的なアコースティック・ギター。
材質はトップがスプルースで、サイドとバックはマホガニー。”ハニートーン”と呼ばれる倍音成分の多い音色。
使用者はジョン・レノン、キース・リチャーズ、長渕剛、北川悠仁(ゆず)、大森靖子など、昔から現在、海外および日本でも愛用しているアーティストが多い。
サウンドを一言で言うとガッツがあるジャカジャカ系の音です。
マイクの豪華さがすごい
✓ペアのDPAマイク(Overheads)
✓U87(Close)
✓ピックアップ(Pickup)
この3つのマイクがあり、さらにそれぞれの音を混ぜる事ができます。豪華過ぎる…。
3つとも大きく音色が違う、という事もなく、それぞれ丁寧に収録されている印象です。
デフォルトは一番右のDPAマイク(Overheads)になっています。クリアな音でステレオになっていて気持ちがいい。
真ん中、U87(Close)はモノラルで、DPAに比べると「コワッ」とした音になります。マイクの位置も近いです。
NEUMANNのU87といえば、スタジオ大定番のマイク。現行品のU87 Aiだと30万円くらい。これですね。
左、ピックアップ(Pickup)について、僕はアコギのピックアップの音って嫌いなのですが、これは聴けます。こんないいアコギピックアップの音、今まで聴いたことない。自然で素朴な音です。
公式によるとエフェクトをかける場面にいいみたいです。
パラメーター多すぎ
ざっくりと説明したいと思います。
大きくSolo、Chord、Patterns、MIDI Guitarの4つのモードがあります。
Solo
Soloモードは割と単純で、レガートの方法を切り替えるのが主な操作になっております。
ハンマリング(Hammer)、スライド(Slide)、レガート(legato)、なし(off)の4種類ですね。
特に、スライドが自然なので感動です。このために収録されてないとピッチベンドでやることになるので、不自然になっちゃうんですよね。
この音源、コード弾きが気に入ってるんですがギターソロもいけそうです。
Chord
最も使うのがChordのモード。このパラメーターが異常に多い。
・「Guitar」はコードを押えるだけじゃ鳴らなくて、鍵盤のC4~C5を弾いて音を出します。ギターを弾くように鳴らす感じですね。
・「Piano」はコードを押さえただけで音が出ます。
・「STRUM SPEED」は「ジャラーン」って弦を弾き下ろす/上げる速度
など、あとは自分で確認してください(めんどくさくなった)
デフォルトでは出来る限りローコード(低いポジション)で弾くようになってます。弾き語り設定ですね。「AUTO VOICING」をオフにしてハイポジションで弾いたり、ポジションはカスタマイズもできます。細かい。
カポ(CAPO)設定ができるのもすごい。ローコードで弾きにくいキーが出てきた時に使えそうですね。ってギタリストしかわからないよなこれ。
Pattern
67種類のパターンが収録されてますし、自分でパターンを作ることもできますが、正直MIDIで打ち込んだほうが早くないかな…。
パターン自体もいまいちしっくりこないので、結局自分で打ち込んだほうが早そうです。自然だし。
MIDI Guitar
もう意味がわからないですね。
エレキギターでライブしてて、持ち替える事無くMIDIでこれを鳴らす、という芸当もできるのでしょうか。
Preferences
各プレイモード共通の細かい設定画面。なんか色々いじれます。
鍵盤を離した時の音「Fret Noise」と、ピック/指が選べる「Play Mode」の所を一番使うかなと。
なんかピック弾きに違和感があるなと思ったら、デフォルトでピッキング(picking)だけが指弾き(Finger)になってるんですよね。気をつけましょう。
以上のように、色んなパラメーターがあるのですが、右クリックで全てMIDIに割り当てられるので、打ち込みで微妙な調整をして追い込むといい感じになります。
僕の調整
ベタで打ち込むだけでなく、細かく調整することでより生っぽくなります。今回の曲で僕がやった方法を書いてみます。
MIDI CCにパラメーターを割り当て、オートメーションを書いて音色を変化させる技を多用してます。
Palm Muteを駆使してニュアンスを変化させる
手の側面でミュートしたり外したりしてニュアンスを変えてます。この曲では、途中から全部ミュートにしたり全部外したり、ということをやってます。なぜかこの音源では布になってますけど。
CLEAN PLAYをコードチェンジ前に下げて弾ききれてない感じを出す
実際にアコギを弾くときには、コードチェンジの際に綺麗に音を出し続けることは不可能なので、音が綺麗に鳴らなくなるパラメーター「CLEAN PLAY」を下げます。
これはストロークの画面。下の線がオートメーションのラインですね。
STRUM SPEEDを細かく調節する
コードのストロークのスピードを曲のテンポや構成に合った速度にします。
例えば曲の始まりの「ジャラーン」、と曲中の「ジャラーン」と、曲の最後の「ジャラーン」は速度がそれぞれ違いますよね。
この曲では、ミュート解除した後のストロークでは少しだけ遅めに設定してます。こういう風にパターンの中で変化させるのも面白いです。
Preferences→Fret noiseのゲインを下げる
離弦した時のフレットノイズ、「キュッ」ってやつが鳴り過ぎなので、下げたほうがよさそうです。実際ローポジションだけで弾いてるのに、毎回こんなに鳴らないので。
あと、ボディを叩く音の後にフレットノイズが入ってる。これはミスですかね。
ローカット
多分ローカットをしてなくて、20Hz付近まで鳴ってます。適度なローカットが必要ですね。これはプラグインでやりました。
他にも、パラメータがたくさんあるので、いじるのが好きな人は色々遊べそうです。そうじゃない人もそれなりに鳴らせる音源だと思います。
おわりに
アコースティック・ギターの録音ってめんどくさいですよね。
マイクを用意して、マイク位置を調整して、プリアンプを暖めて、DAWでトラックとか用意して、昼間に汗だくでOKテイクが出るまで何度も録音しなければいけない。僕は自分で弾けて録音できるのに、他の人に有料で頼んじゃうくらいめんどくさいわけです。
それでも今までは自然なアコギ音源がなくて敬遠してたわけなんですが、このSunbirdくらい自然だと簡単なものならこれでよさそうです。めっちゃ使っていきます。
開発元のサイトでもかなり詳しい説明がされています。