IK Multimediaの『MODOBASS』は、フィジカル・モデリングによるエレクトリック・ベース音源。
評価★★★★☆
・グルーヴのある音
・同音の連続がいい感じに鳴る
・ベース実機のモデリングとしてはいまいち
・パラメータでの音色の変化が少ない
・パラメータは多いがわかりやすい
・CPU使用率はプラグイン最高クラスの高さ
モデリングとしてはいまいちながらも、フレーズを動かすほどいい感じになってくる音源です。サンプリング音源の場合はフレーズを動かすほど破堤してくるので、フレーズを動かしたい人はMODOBASS、フレーズはあまり動かさず、質感にこだわるなら他のサンプリング音源のほうがよさそうです。
聴ける音
単音で鳴らした時の音も十分いいんですが、演奏させたときの「音楽として聴ける」感じがすごいです。フレーズをループさせてずっと聴いていても心地よい。
特徴的なのが、低域が柔らかくて充実していること。今までのサンプルでの音源だと、硬くて薄い感じがあったんですけど、MODOBASSは低域が柔らかくて太い。高音を鳴らした時にもこの傾向がきちんとあるので、音が細くない。
柔らかい音もわりと得意で、今までの音源では難しかったハイポジションでのメロウなフレーズもなかなかいけます。
とりいそぎ鳴らしたものです。
ちょっとミュートして、強く弾く感じの、ジェームスジェマーソンを目指して音づくりしてみた。音はあまり近づけてないけど、意地悪なフレーズも弾きこなしてくれて、「聴ける」サウンドだと思う。 pic.twitter.com/22oo6T94Ei
— こおろぎ🐜 (@Kohrogi34) November 30, 2016
普通のベース音源だとクソみたいな音になる高音の16分フレーズも聴ける音だぞい。ほぼデフォルト設定。 pic.twitter.com/wQkhIM4VFp
— こおろぎ🐜 (@Kohrogi34) November 30, 2016
動画作った。改めて聴くと指弾きとピック弾きが混ざったような音だな。これがモデリングのおもしろいところか。 pic.twitter.com/W2PMk5ZE2C
— こおろぎ🐜 (@Kohrogi34) November 30, 2016
こちらは公式デモ。
MODOBASSは同音連続のフレーズもいい感じ。
ベース音源って、デモなどではファンク系だったりしますが、実際に一番使うのってルートでの同音連続フレーズ、いわゆる「ルート弾き」なんですよね。
なので「同音が連続するフレーズをかっこよく鳴らせるかどうか」というのがベース音源を選ぶために最も重要視する部分。
こちらはNative InstrumentsのScarbee Jay-Bassを16分音符で演奏した波形です。
どうでしょうか。1つ1つ波形が並んでいるのがわかりますね。これが打ち込みベースのぎこちなさの原因の一つ。
そしてこちらがMODOBASSで演奏した同じフレーズです。
全く違いますよね。おそらく生ベースのものと見分けがつかないと思います。
収録したものを鳴らす音源と違い、MODOBASSは1音ごとに違う音がリアルタイムで生成されるようです。
音の暴れ具合もちょうどいいです。音源って、ちょっと暴れているものを加工して抑えるほうが生っぽくなるんですよね。
また、サンプルの音源ってほとんどの場合、指の引っ掛けかたが深い。なので、速いオルタネイトだと不自然になってしまう。MODOBASSは指でのタッチをソフトにできるので、速いフレーズも自然です。
柔らかい曲も作ってみました。かなりグリッサンド、スライド、ピッチベンドを入れていますが、自然で聴けるサウンドだと思います。
高音のフレーズに移るときに直前のノートにすこしだけピッチベンドをかけて移動の感じを出しています。これができるのもフィジカル・モデリングならでは。
ベース実機のモデリングとしてはいまいち
各ベースそれぞれの傾向はとらえているんですが、突き抜けてない感じはあります。ブラインドテストをやったらどのモデルかわからないかもしれない。
しかし、出音はとてもよいので、ベースの実機というよりは、別の楽器としてとらえると幸せになれると思います。
また、それに加え、パラメータをいじったときの音色の変化が少ないです。ピックと指弾きの違いや、弾くポジションの違いなど。よく言うと、音づくりで破堤した音になりづらい。
スライドの自由度が高い
ピッチベンドでのスライドと、サステインペダルでのスライドがあり、同じ弦上ならどの音からどの音にでも自由にスライドできます。
サンプルだと全部を収録したり、長さを変えたりするのは不可能なので、フィジカル・モデリングの利点ですね。
ピッチベンドでのスライドはレンジが大きいと不自然なので短いところだけにしておいて、フィルのような、長いスライドはサステインペダルでのスライドでやるといい感じ。
サステインペダルでのスライドは、ベロシティで長さを調節できます。
自由度は高いですが、かっこいいスライドにするにはタイミングなど、ちょっとコツが必要ですけどね。
いじれるパラメーター一覧
数字はパラメータを選択できる数です。例えば、ピックの硬さは普通とハードの2つ、のような。
・ベースの種類(12)
・右手の位置
・右指の使い方(3)
・ミュートの量
・タッチの強さ(3)
・ピックの硬さ(2)
・左手の運指の基準(3)
・解放弦の選択
・指を離した時のノイズ量
・スライドのノイズ量
・4弦、4弦ドロップD、5弦の選択
・弦高(3)
・フラットワウンド、ラウンドワウンドの選択
・弦の太さ(3)
・弦の古さ(3)
・ピックアップ(20)
・ピックアップの位置
・アクティブ、パッシブの選択
・スライドのレンジ
・ビブラートの速さ
・アンプ(2)
・アンプとD.I.のブレンド量
サンプリングだと不可能に近いパラメーターまで変更できるのが大きな特徴。
例えば、すこしミュートをして、フラットワウンドの古い弦でパッシブピックアップ、人差し指だけでブリッジ付近を強く弾く、というジェームス・ジェマーソンのような音づくりにも追い込めます。
パラメーター自体は多いのに効きが悪いので、かなり極端なセッティングにしたほうが面白くなりそう。
ベースを弾いてないとピンとこないパラメーターも多いかもしれませんが、絞られててわかりやすい印象。
なんというか、「マニア」になりすぎていない。いい意味でざっくりしています。つまみやアイコンが大きいのも好感です。
モデリングされているベースは12種類。Yamaha® TRB5PやIbanez® Soundgearが入っているのが面白い。
中央左の文字で一通りのセッティングを確認できます。便利。
弾き方はこんな感じ。
スラップは特にプルがいまいちですね。アタック感、迫力、派手さがない。R&Bでたまに差し込む感じのスラップ、という感じ。
弦の高さ、太さ、古さなどを変更できるのはこの音源のユニークなところ。ざっくりですが。
5弦があるのはうれしい。
ピックアップの種類や位置。特にこだわりがなければいじらなくてもいい部分ですね。
ただ、ベーシストだったらいじってみたい部分でしょう。実機だと簡単には聴き比べできませんからね。
アンプ関係はシンプルです。真空管アンプと1×15キャビネットの組み合わせ、ソリッド・ステート・アンプと4×10キャビネットの組み合わせのみ。
もっとこだわりたければAmplitubeを買え、ってことでしょうね。アンプとD.I.のブレンド量も変えられます。
エフェクターセクション。
・コンプレッサー
・ディストーション
・オクターバー
・コーラス
・ディレイ
・エンベロープフィルター
・グラフィックイコライザー
の7つ。コンプはリダクションが見えるのが嬉しい。
エフェクターのカラーは黒一色なので、カラフルなほうが楽しかったなあと思うんですが、色がついていると特定のものを思い浮かべてしまって、耳にバイアスがかかってしまう、というのを避けているのかもしれません。考えすぎかな。
やはりアンプやエフェクターの音はいいですね。おまけレベルじゃない。さすがIK。
MIDI CCの割り当ても簡単に変更できます。
ビブラートも自然で心地いい。
CPU使用率は高い
僕の環境では10%超です。ソフト音源としては最高クラスの重さ。
SlateDigital FG-Xと同じくらい。Waves L316よりも高い。Spectrasonics Omnisphereの2倍くらい。
ただし、サンプルライブラリがないので、容量は全部で200MBもないです。
Spectrasonics Trilianと比較するときには、容量とCPU使用率の違いが
おわりに
ものーすごくよいです。
今までベースだけは、打ち込みだと固いので自分で演奏していたんですが、これからはほとんど打ち込みになりそうです。
■MODO BASS Crossgrade | beatcloud
おまけ
Superior Drummer 3とModo Bassのコンビネーションを聴いてくれ pic.twitter.com/nvYddsemk0
— こおろぎ (@Kohrogi34) 2017年10月10日