今回は歌モノの曲に軽やかなストリングス(ヴァイオリン)を打ち込みで入れるコツを書いてみます。
1.歌メロに対してストリングスのメロディを決めていく
2.きちんと歌わせる
3.ヴァイオリンのメロディラインは大体1本
4.動きにバリエーションをつける
5.オートメーションで表情をつける
6.リズムを合わせない
7.同じ音程にしない
8.並行を避ける
9.最高音をメロディと同じ場所にしない
10.半音、全音で進行させ、5度以上の跳躍をなるべくしない
対位法にも踏み込んでますが、なるべく簡潔に解説してみます。
解説
今回は僕がアレンジしたmirgliPさん(@mirgliPilgrim )の「恋風ふわりサクラ色」のサビ(0:59~)を使って解説します。
✓1.歌のメロディラインに対してストリングスのメロディを決めていく
歌モノのストリングスアレンジでは、歌のメロディラインに対してストリングスのメロディラインを決めていきます。カウンターメロディ、副旋律とも言います。
ベースやコードトーンも考慮する必要があるんですが、今回は歌メロとストリングスのメロ、2つの関係だけを説明します。
今回の曲では、暗い青色が歌メロ、オレンジがストリングスです。
短いですが動画でもどうぞ。
2.歌わせる
最も大事です。1つのメロディとして自然に。そのためには他の項目を多少犠牲にしても構わない。
歌を邪魔しないように、かつヴァイオリンも歌わせていくのがストリングス・アレンジの醍醐味です。
3.ストリングスのメロディラインは1本
軽さを出し、メロディを見えやすくするため、基本的には和音ではなく単音で。音色もドライで軽めのものを選びたい。
1stヴァイオリン、2ndヴァイオリンをオクターブで重ねていますが、2ndVinが最低音(G2)より下にならない音域が望ましいです。1stVinもあまり高いとヒステリックな音になるので気をつけましょう。
ヴァイオリンのメロディが低い場合や、背景的にしたいときにはピンポイントで和音を使います。
4.動きにバリエーションをつける
なるべく色々なリズム、奏法を入れて動きをいれます。駆け上がりや音程の跳躍を適度に入れて軽さと華やかさも出したい。
今回は、弦上を滑らせて音程を繋げるポルタメント、同じく弦上を滑らせて音程を急激に落とすフォール、歯切れよく音を切るスタッカートを使っています。
5.オートメーションで表情をつける
ただ打ち込むだけだとのっぺりしてしまうので、ボリュームのオートメーションを書いて表情をつけます。
ロングトーンは一度音量を落としてから尻上がりにしてメロディをつなげるといいです。表情の付け方は色々な音源を聴いて感覚をつかみましょう。
上がオートメーションのライン。下がストリングスのメロディラインです。
ここから対位法的アプローチに踏み込んでいきます。
6.リズムをあまり合わせない
歌メロとストリングスのリズムを合わせないことで、分離感と自由さを出します。歌メロを伸ばしている所に細かいメロディを配置したり、コードの変わり目をまたいだロングノートを入れたりなど。
7.同じ音程にしない
歌メロとストリングスが同じ音程で鳴るとマスキングされ、どちらかの音が聴こえづらくなります。また、同じ音程にすると軽さではなく力強さが出てしまいます。
8.並行を避ける
歌メロとストリングスのメロディ同士はなるべく反対方向に動かすとよいです。特に3音以上連続して同じ音程で同じ方向に動かないようにする。
9.最高音を歌メロと同じ場所にしない
歌メロが一番盛り上がる最高音の場所では、ストリングスは目立たせず、引立て役に徹します。
逆に歌メロが落ち着いている所にストリングスの音程の高さのピークを持っていきます。
10.半音、全音で進行させ、5度以上の跳躍をなるべくしない
ストリングスのメロディの基本は順次進行(半音、全音)で、音程同士の繋がりを強く。なるべく5度以上に音程を跳躍させずに動かします。
でも適度に跳躍する。バランスが大事です。
さいごに
色々制約があって大変そうに感じますが、慣れてくると早くなります。春にさわやかなストリングスアレンジ、いかがでしょうか。
もっと対位法を知りたい方はこちらがおすすめ。
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今回はaudiobro LA SCORING STRINGSを使ってます。