『Sunset Sound Studio Reverb』レビュー。LAの伝説的スタジオを再現したリバーブ。

プラグイン

作曲家のこおろぎです。

「自宅で録音すると、どうしても音が平面的で閉塞感がある…」
「ドライなソフト音源が、どうしてもミックスに馴染まない…」

そんな状況はありませんか?

特に日本の住宅事情では、狭い部屋やデッド(響きがない)な環境で録音せざるを得ないことが多いですよね。私も現在0.5畳の非常にデッドな防音ブースでレコーディングをしています。

また、市販のソフトウェア音源はドライすぎるサウンドだったり、逆に付属リバーブやマイクの響きが多すぎ・広すぎたりして楽曲に馴染まなかったりもする。

今回は、そんな宅録とソフト音源の閉塞感を解消し、自宅にいながら一流スタジオの空気感を手に入れられるリバーブプラグイン、IK Multimedia『Sunset Sound Studio Reverb』(以下SSSR)を紹介します。

2020年の発売当初から現在の25年まで継続して使用しており、私の制作にはなくてはならないプラグインになっています。

ざっくり言うと

・LAの伝説的スタジオ「Sunset Sound」の響きを足すプラグイン
・楽器を宅録している人におすすめ
・ドライなソフト音源をスタジオで録音したような質感にしたい人におすすめ
・短くナチュラルな響きをつけたいときにおすすめ
・パラメーターがシンプル
・スタジオ自体はやや狭め

「リバーブ」ではなく「部屋の鳴り」を足す


通常のリバーブは残響を足すものですが、このSSSRは「スタジオという空間そのもの」をシミュレートしています。

狭い部屋で録音すると、どうしても音が詰まって聴こえがちです。また、ドライな音源にリバーブをかけても、「狭い部屋で鳴っている音にリバーブがかかっただけ」のサウンドになりがちで、根本的な閉塞感は拭えません。

しかしSSSRを通すと、まるで最初から広いスタジオで録音したかのような自然な空気感が生まれます。

これが録り音の印象そのものを変えてしまうような効果を生みます。

湿度の高いサウンド

「各部屋のインパルス・レスポンスをスタジオのコンソールで収録し、コンソールの信号経路もモデリングして再構築することで暖かみのあるリアルな残響を生成」とのこと。

私の感覚として、一般的なIRリバーブに比べて柔らかいサウンドで、湿度を感じます。とくに初期反射が固くないので、短い残響をつけたいときにとてもよい結果になります。

特にLIVE ROOMのStudio3をよく使っていて、まず最初はこの部屋を使います。

注意点としては、どのスタジオも全体的に狭めに感じることがあります。いい意味での「部屋」という印象。

より広い空間の響きを目指したいは他のプラグインに任せたほうがよいです。

迷わないシンプルな操作

画面を見てください。とにかくシンプルです。1枚のGUIで操作が完結します。

「これしかできません」という潔さがよいです。ハマるかどうかがはっきりしているので迷うことがない。

このプラグイン内ではWET/DRYのバランスと、たまにディケイの調整をして、あとは他のプラグインで処理するというワークフローで使っています。

パラメータ

・プリディレイ
・ディケイ
・ハイパスおよびローパス・フィルター
・ロー/ハイ・シェルビングEQ
・ステレオ・イメージ
・ウェット/ドライ・ミックス

ウェット/ドライのミックスはデフォルトがDRY0dBになっていて「インサートで使ってください」という意図が感じられます。

基本インサートで入れて、オフマイクを足していくようなイメージでWETを使う、という使いかたがいい感じです。

その前にpanのプラグインをインサートして振っておくと、より自然な配置になります。

バスで送ってセンドでかけても同じ部屋で鳴らしているようなまとまりが出て、そういった使い方もよいです。

インプットで歪みやすいので、その点は注意が必要です。

サウンドデモ

ラインナップは以下になっています。切り替えるとそれぞれのビジュアルも見ることができるので、サウンドがイメージしやすいです。

・チェンバー:Studio 1、Studio 2、Studio 3
・ライブ・ルーム:Studio 1、Studio 2、Studio 3
・アイソレーション・ブース:Studio 1、Studio 2、Studio 3
・プレート・リバーブ:Plate 1、Plate 2
・スプリング・リバーブ

ここからはそれぞれをDRY100%+WET100%で聴いてみます。

防音室で録音したティンホイッスル、ピアニカ、クラップ、声と、打ち込みのバイオリンを鳴らしてみました。

ドライ

元の音です。防音室はNeumann M269とTelefunken V76のシミュレートで収録。+1176系コンプ。

打ち込みバイオリンはVIRHARMONIC Bohemian Violinです。

チェンバー:Studio 1


・このスタジオの最も有名かつ象徴的なサウンド。明るく、リッチで、長い余韻。

チェンバー:Studio 2


・Studio 1に比べるとダークで温かみがあり、重心が低いサウンド。密度が濃く、包み込むような響きが特徴。

チェンバー:Studio 3


・最もレスポンスが速く、パンチがあるサウンド。明るさもありつつ、タイトな広がり。

ライブ・ルーム:Studio 1


・Sunset Soundで最も広い部屋。不均等な壁面による複雑な反射があり、非常にオープンでライブ感のある響き。

ライブ・ルーム:Studio 2


・Studio 1より少し残響が少なめで、バランスの取れたルームサウンド。

ライブ・ルーム:Studio 3


・比較的小規模で、最もタイトでドライ寄りな部屋。自然なサウンドに感じるので、私はこちらをデフォルトで使用しています。

アイソレーション・ブース:Studio 1

ライブ・ルーム内にある、楽器やボーカルを分離して録音するための狭いブースです。
音楽用途に使うことは少ないかも。逆に、映像作品での演出には使えそうです。


・非常にデッドで、「完全に乾いた音」にわずかな空気感を足すのに最適。ナレーションやオンマイクのボーカル向け。

アイソレーション・ブース:Studio 2


・ドラムやアンプを隔離するためのブース。非常にタイトな初期反射のみが得られ、音に「存在感」と「太さ」を加えます。

アイソレーション・ブース:Studio 3


・ Princeがボーカル録りに多用したブース。非常に狭く、親密で、耳元で囁くような距離感を演出できます。

プレート・リバーブ:Plate 1

スタジオに常設されているヴィンテージの鉄板リバーブ。

・真空管回路を持つクラシックなEMT 140。温かみがあり、滑らかで、かつきらびやかな減衰音が特徴。

プレート・リバーブ:Plate 2


・EMT 140よりも後に開発されたEchoplate。Plate 1よりもモダンで、高域が明るく、エアリーな響きが特徴です。

スプリング・リバーブ


・冷蔵庫サイズの伝説的なスタジオ用スプリング・リバーブユニット「AKG BX-20E」。重心が低くダークで霧がかかったような独特の密度。

おわりに

『Sunset Sound Studio Reverb』は、派手なエフェクトではありません。しかし、楽曲のクオリティを底上げする土台となるプラグインです。

導入して以降ずっと使用しており、欠かせないプラグインになりました。

狭い場所でレコーディングした楽器の音にスタジオで録ったようなオフマイクの響きを足したいときや、ドライに収録されている市販の音源に響きを足してサウンドに馴染ませたいときにおすすめです。

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