遊郭が内容に絡んでいる作品で音楽を作ることになりまして、いい機会なので遊郭の音楽について調べてみました。
遊郭や遊女をテーマに創作された音楽ではなく「遊郭があった時代、その場で実際に流れていた音楽」についてです。
遊郭とは
遊女屋を集め、周囲を塀や堀などで囲った区画のこと。広義には、芸妓を含んだ花街や、私娼街も含めた通称である。■Wikipedia | 遊郭
遊郭は1589年ごろ、豊臣秀吉が天下統一をするあたりからはじまって、1872年ごろ、明治あたりまで続く。
歴史は長いですね。
実際に遊郭で音楽は流れていたのか
そもそも、実際の遊郭で音楽は流れていたのか。
時代劇などでは必ずといっていいほど遊郭のシーンで音楽が流れていますが、もしかしたら実際には流れて(演奏されて)いなかったのかもしれないと思い、そこから調べてみたところ、良いページを発見しました。
・質問 明治30年以前の吉原遊廓について、深夜に三味線の演奏が可能であったかどうか知りたい。
・回答 「戌の刻 張見世は午後六時ぐらいから十二時ぐらいまで」
「吉原の引け(終了)は表向きは午後10時ごろであるが、実際はこの時間になる」(午後12時頃)との記載がある。
実際に、遊郭の営業時間には三味線が演奏されていたようです。
「そういう音」をマスキングするという点でも演奏形態とうまくマッチしたんでしょうね。
実際に流れているということは確認できたので、次はサウンドについて調べました。
遊郭での音楽のバリエーション
・唄なしの三味線である「すががき」
・2人1組で流して歩く「新内流し」
・その新内流しが座敷に招かれて演奏されるもの
この3つが代表的な音楽とそのシチュエーションです。
すががき
往来に面した店先に遊女が居並び、格子の内側から自分の姿を見せて客を待つ「張見世の間」ではすががきと言われる唄なしの三味線が演奏される。
第2・第3の2弦を同時に弾く音と、第3弦をすくう音とを交互に鳴らす単純なもので、江戸吉原の遊女が客寄せのために店先で弾いた。見世 (みせ) 菅掻。■参照 goo辞書 すが‐がき【▽清×掻/×菅×掻/×菅垣】 の解説
おそらくそんなにじっくり丁寧に演奏されるようなものではなく、BGMとしてつま弾いている、みたいな感じですね。
新内流し
粋な着流しに男は吉原冠り、女は吹き流しの手拭いで三味線を弾きながら廓や花街を流して歩く。客の求めに応じて屋外から、ときには座敷に招かれて演奏する。
この動画は実際のシチュエーションを再現していてわかりやすい。
歌なしでポロポロやりながら歩いて、リクエストがあったときに唄を歌う形。
新内流し(しんないながし)とは
遊郭の音楽「新内流し」をもう少し掘り下げて調べてみました。
ざっくり箇条書きにすると
・江戸時代の末期頃から
・新内流しは新内節の演奏家の営業方法の1つ
・新内節は三味線音楽で、元々は歌舞伎の伴奏音楽として演奏されていた
・浄瑠璃と言われる語り物
・浄瑠璃は物語を叙情的に語り、感情移入が多くドラマチック
新内節とは
鶴賀新内が始めた浄瑠璃の一流派。
浄瑠璃の豊後節から派生したが、舞台から離れ、花街などの流し(門付け)として発展していったのが特徴。哀調のある節にのせて哀しい女性の人生を歌いあげる新内節は、遊里の女性たちに大いに受け、隆盛を極めた。 ■新内節 | Wikipedia
新内流しとは
新内節演奏家の営業法の一つ。普通2人1組となって、普通三味線の手と、それより高い調子の三味線(上調子といいます。)この2丁の三味線で合奏し三味線を弾きながら、街頭を歩いていきます。
上調子の人は小さいバチで演奏します。この2人で、あの流しの音色は奏でられます。
よばれた時のみ座敷に上がって、または屋外に立って芸を聞かせる。また、流しをすることは、修行の一つでもあった。 ■新内節 富士松延治太夫
新内流しに使用される三味線について
・普通三味線と、高い調子(上調子)の三味線2台を使う。
・使用される三味線は新内節のために作られた、チューニングされたものを使う。
使用する三味線の種類としては「中棹」。民謡、地歌、常磐津、清元節などにも使われるものです。
近年よく聴かれる津軽三味線の「太棹」よりも柔らかいサウンド。
音の違いがわかりやすいので、厳密な時代設定の作品に入れる場合は注意が必要です。
■細棹、中棹、太棹弾き比べの動画
三味線という楽器そのものに関しては感覚がギターに近いと感じます。
ギターだと、ジャカジャカ弾くからギブソン系を使うとか、優しく弾き語るからマーチン系を使うとか、弦が太いとか細いとか、チューニングを変えたり、曲調やスタイル、演目でギターの種類や弾き方を変えたりなどをします。人によっても使うものが違ったりする。
三味線もそれと同じように楽曲や流派、人によって弾き方や道具、チューニングがそれぞれ違っています。
基本の曲調や流派と違った三味線を使うと、ヘヴィメタルをフェンダーのテレキャスターで演奏している、みたいな違和感がでてくるわけです。
また、一般的に音源化されているのはほとんど津軽三味線なので、
作品に遊郭で演奏されているような中棹の三味線を入れたい場合、サンプリングされた音源を見つけるのは難しいです。
なので僕は中棹の三味線そのものを買いました!
おわりに
というわけで遊郭の音楽を調べてみました!
しかし、僕が今回制作する作品は実際に演者が歌ったり、何度も形を変えて登場するという、記号のようなわかりやすさが必要だったので、最終的にはコンテキストを全部無視して、かごめかごめのような、わらべ歌のような曲にしました。
歴史としては嘘なんだけど、作品としてはよいものにできたなと思っています。元々作品自体がファンタジーなんですけどね。
ということで、リーディングライブ
『冷華~ソレハ舞イ散ル桜ノ様ニ~』の主要な音楽を制作しました。
よろしくお願いいたします。