僕はDTM(ディーティーエム)といわれる作業をして音楽を制作し、仕事にしているのですが、実際にやっている人にしかわかりづらいよな、と思い、
今回は、DTMとは何か、何をしているのか、何ができるのか、どういうツールを使うのか、といったことをひととおり書いてみたいと思います。
DTMとは
DTMとはDesk Top Music(デスクトップミュージック)の略で、主にパソコンのソフトウェアを使用して音楽データを作成編集する事の総称です。 和製英語で、英語圏では同一の事柄をComputer Musicと呼びます。
ソフトウェアに演奏データをプログラムして制作することを指す場合が多い。これは「打ち込む」「打ち込み」とも言われます。
しかし、定義は曖昧で、ある程度生演奏の録音が混じっていてもDTMといいますし、すべてが生演奏でも、パソコンで編集していればDTMということもあります。
DTMを中心に作曲をしている人たちをDTMer(ディーティーエマー)と呼んだりもします。
DTMの立ち位置は映像におけるCGのようなもの
「コンピュータに演奏させる」ということで、音楽の世界の中では人間が演奏する生演奏とは対極の位置にあります。
CDやテレビのBGMなど、デジタルの音源データとして音楽を制作する場合、現在はあらゆる現場や音楽ジャンルでDTMと生演奏を組み合わせて作られています。
DTMは映像でのCGの扱いと似ていて、生演奏≒実写とCGを合成して作っていくようなイメージに近いです。
「役者だけ人間で背景はCG」のように「歌だけ人間であとはDTM(プログラミングされたもの)」のような作品もかなり多くなっています。
また、オーケストラなど、最終的には生演奏として演奏されるものでも、ラフはDTMで制作されることが多くなっています。
これは、楽譜やピアノだけでラフを作るのと違い、完成品に近い音を自分やクライアントが聴ける、というメリットがあります。
DTMでできること、得意なこと
・様々な音が同時に出せる
・あらゆる変更が簡単
・嘘がつける
・正確に同期ができる
・一人で完結させることができる
・大編成の編曲でも人手がかからない
なんといっても魅力的なのは、パソコン1台だけで様々な楽器の音を同時に出せること。オーケストラやビッグバンドなど、色々な楽器が同時に演奏されるような曲も一人で鳴らすことができます。
一人で納品までもっていけることも多いので、単純に人手がかかりません。
変更を加えることも簡単です。キーを上げたり、テンポを変えたり、メロディを変えたり。
タイミングをシビアに合わせるような映像の仕事もやりやすい。尺の変更などがあっても質を変えることなくタイミングを合わせることができます。
また、実際の楽器の音が出せるバーチャル・インストゥルメントは、楽器の性能を無視した音を出すことも可能です。息継ぎや疲れ、速さの限界を無視して、そういったものに縛られない曲を作ることができます。
苦手なこと
・機材にお金がかかる
・粗い、ラフ、ルーズな演奏が難しい
・生楽器で演奏するよりも制作時間がかかる場合がある
・膨大な知識が必要
・色々なことができる反面、それぞれの専門分野の人間よりもスキルが劣る場合が多い
まず、機材にお金がかかります。
パソコン、モニタースピーカー、ソフトウェアなど、多くのものが必要ですが、一つ一つが数万〜数十万円。それを一人で揃えないといけない。ソフトはアップデートが必要になる場合があるので、同じものを継続して使っていてもお金がかかる。
制作時間がかかるときもあります。特に生楽器を再現する場合。
例えば、ピアノ、ベース、ドラムで演奏されるジャズの場合、生演奏ならばセッティングや演奏、ミックスダウンを含め数時間で可能ですが、全く同じものをDTMの打ち込みで制作する場合、一人でそれぞれの楽器のニュアンスをプログラミングしていくので、最低3日はかかります。
オーケストラになるとパートが多くなるぶん、さらに時間がかかる。しかも、生演奏に比べて質が劣る場合が多い。
荒かったり、ラフだったり、ルーズな演奏も難しいです。
ここもCGと似ているのですが、機械的なものが得意で、生き生きとしているのものが苦手なんです。
バーチャル・インストゥルメントに収録されてない音は出せないので、弾きそこなった音など、イレギュラーな音が出しづらい。リズムを不安定に揺らす事も苦手。
ラフさを出すためには、それをわざわざプログラムしていかなければいけません。
また、様々な音が出せて、一人で完成までもっていける反面、それぞれの楽器、機材の使い方や、必要な技術を身につけなければいけません。
ですので、それぞれの専門分野の人間に比べて、技術的に劣る場面も多いです。
DTMで使用するツールは5つ
主に下記の5つのソフトウェア、素材を使用して制作します。
・DAW
・シンセサイザー
・サンプリング
・バーチャル・インストゥルメント
・プラグイン・エフェクト
DAW
DAWとは、「Digital Audio Workstation」の略。
シンセサイザー等のプログラミング (打ち込み)、音声の録音、編集、ミキシングなど一連の作業が出来るソフトウェア。
このソフトを中心に作業をすすめます。
映像だとアフターエフェクトやファイナルカットプロX、画像だとイラストレーターやフォトショップのような存在です。
Protools、Cubase、Studio one、Logicなど色々なソフトがありますが、自分の制作スタイルに合ったものを選ぶまでに何種類か試したり、乗り換えたりするので、1人で複数扱える場合が多くなります。
シンセサイザー (Synthesizer)
0から音を生成することができるソフトウェア、またはハードウェア。
いわゆる電子音っぽいなと感じたらだいたいこれ。
エッジの効いた鋭い音や、無機質で冷たい音、フワッとした空気のような音、変な音を出すのが得意。
かなり多くの種類があり、それぞれ音色や使い勝手が違います。
・本体があり、パソコンと同期、または手弾きのハードウェア
特徴 値段が高い(数万〜百万円を超えるものまである)、直感的に扱える、とりまわしがめんどくさい。
・パソコン内で鳴らす、本体がないソフトウェア
特徴 値段が安い(無料〜5万円程度)、扱いが楽、現在はほとんどハードとの音質差はない。
バーチャル・インストゥルメント( Virtual Instruments )
ドラム、ピアノ、ヴァイオリンなど、実在する楽器を音階や強さごとに録音(サンプリング)し、プログラムすることでパソコン上で演奏できるようにしたものです。ソフトのシンセサイザーも含めて、ソフトウェア音源とも呼びます。
もとになっている楽器の演奏方法を知らないとうまく扱えない場合が多い。
また、精密に再現されたものや容量が大きいものは、そのぶん値段が高くなる傾向があります。一つのソフトが数十万円、ということも。
ハードのシンセサイザーを録音したバーチャル・インストゥルメント、というややこしいものも存在しますが、それはほとんどの場合「シンセサイザー」と呼ばれます。
初音ミクも声を録音して扱えるようにしたものなので、バーチャル・インストゥルメントです。
サンプリング(Sampling)
生楽器やシンセサイザーなどで演奏されたものをフレーズや単音で音声ファイルにしたもの。
DAWに直接張り付けて使用します。
演奏のニュアンスは部分的に取り込めるものの、上記の2つよりも自由度が低く、自然な細かいエディットはしづらい。
その特性から、ドラムなどのリズム楽器中心に使用されます。
コラージュのような、つぎはぎをしたような効果を出したり、強引に加工して特殊な効果を出すこともできます。
サンプリング素材として最も有名なものは「アーメンブレイク」と言われるドラムループ。
プラグイン・エフェクト(Effects Plugins)
各パートにエフェクト効果を加えることができるソフトウェア。略して「プラグイン」とも言われます。単体では音を出せないものがほとんど。
周波数のバランスを変える「イコライザー」、音量の強弱の差をなくす「コンプレッサー」、残響をつける「リバーブ」などの種類があります。
最初のほうの作曲段階ではあまり必要ではありませんが、最後の仕上げの段階ではいい品質のものが欠かせなくなってきます。
画像や映像のエフェクトと同じようなものですが、エフェクトの効果にはそれぞれのソフトによって違いがあり、種類がめちゃくちゃ多いのが特徴的です。
DTMで加速した音楽制作の流れ
DTMやDAWが出てくるまでは、
作曲→編曲→録音→ミックスダウン
というふうに工程とそれぞれを担当する人間が分かれていましたが、最近は作曲からミックスダウンまで、一人で作業できるようになっています。さらに、これらの工程を平行してすすめることができるようにもなりました。
そうすることによって、以前よりも大幅な時間の短縮と、関わる人間の少人数化が進んでいます。
しかし、それぞれの専門工程を一人で受け持つことになるので、それぞれの工程での技術的な部分が劣る場合も多いです。
生演奏のオーケストラなどの、昔から変わらない工程を踏む場合は、時間も関わる人間も増え、制作予算がグッと上がりますが、それぞれ専門の人間が担当するので全体の質は高くなります。
プロジェクトの予算によってどの工程を専門の人間に任せるか、という判断をすることも重要になっています。
おわりに
なるべく簡潔に書こうと思ったのですが、結構文字数がかかってしまいました。
このDTMとは別物です。