Meta Quest 3でVR観劇を最高の臨場感で楽しむための音響構築!

VR

こんばんは。作曲家のこおろぎです。

2025年3月3日、新たにTOHO VRというVRプラットフォームが立ち上がり、
第一弾としてミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』の配信が開始されました。

◆TOHO STAGE VR ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』

たまたまその告知を目にし、私が音楽制作を担当した映画『舞倒れ』でご一緒した有澤樟太郎さんが主演を務めていたため、せっかくなので視聴してみることにしました。

手持ちのVR機器、Meta Quest 3でデモ映像を体験したところ、映像の素晴らしさに圧倒されました。

8Kの画質で、2眼のカメラでしょうか。
演者や舞台装置の前後関係がはっきりと分かり、まるで実際に舞台を観劇しているかのようです。

席は最前列、目の位置は床の高さにあり、役者さんの表情からつま先まできちんと見える。かつ舞台全体も見渡せるという視界になっています。カメラは中央、左、右の三台。

映像に感動した一方で、サウンドに関して少し気になる点がありました。Quest 3のスピーカーでは、どうも臨場感がなく感じる。

YouTubeで公開されているダイジェスト映像をモニタースピーカーで聴いた際には、ミックスバランスが良く、低音も出ており、サウンド自体も艶やかで立体感がありました。

以上のことから、これは元の録音状態やミックスの問題ではなく、再生機器側の問題だと確信。

ミュージカルは歌と音楽で物語が進んでいく舞台。音楽は非常に重要な要素です。そして今回は生バンドで演奏されています。

映像は劇場の臨場感そのままなのに、サウンドがこれではもったいないと感じ、「Quest 3で最高の音響環境を追求し、自宅を劇場にしよう!」と思い立ち、色々なことを試してみました。

結論 低音の再生できるスピーカーに繋ぐ!

結論から言うと、Meta Quest 3のヘッドホン端子から直接スピーカーに接続するのが、最もコスパが良く、音質の良い劇場体験を得られる方法です。

Quest 3の内蔵スピーカーは低音域の再生能力に限界があり、音源の位置も頭の動きに追従してしまうため映像とずれ、劇場のような臨場感を得るのが難しい。

外部スピーカーに接続することで、この2つの課題を解決できます。

迫力のある低音が再生され、音源の位置も固定されて、映像との一体感が生まれます。

さなる音質向上を目指すのであればQuest3からスピーカーの間に接続するDACを試してみても良いですが、スピーカー自体の音質への影響が100だとすると、DACによる改善はせいぜい1か2程度ではないかと思います。

DACよりもスピーカーを良いものにすることに力を注いだほうがよいでしょう。

私の手持ちのものではiLoud micro monitorもよかったです。もしスピーカーを持っていないのであればこちらがおすすめです。
ホワイトだとQuest3との見た目が揃って気持ちいい。

低域はは55Hzまで出ますので、十分な再生能力を持っています。

-IK Multimedia – iLoud Micro Monitor

Quest 3の内蔵スピーカーでは物足りない低音域をしっかりとカバーし、まるで劇場にいるかのような臨場感を自宅で手軽に味わうことができます。

音質もよく、プロも音楽制作用として使用するほどです。ドライブ感があり気持ちいいサウンドを体感できます。

サイズもコンパクトで、1台につき180 mm x 135 mm x 90 mm 重量は1kg以下。

もちろん、他の機種でも低域がカバーできるスピーカーであれば十分な体験が得られるはずです。

各機器の感想と評価

色々と試してみたのでそれぞれの機器の感想を書いてみます。

今回は音響をVR舞台に最適化するため、ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』の音声のみで判断しています。

Meta Quest 3のスピーカー ☆☆☆

まずはMeta Quest 3本体のスピーカーから。
気になったのは以下の2点。

1,低域の薄さ

とにかく低音が出ていない。スピーカー自体が小さいので物理的に低音が出ない構造になっているようです。

2,音源の位置のズレ、空間に固定されていない

自分の頭の中央から歌が聴こえてくるので、映像との距離感の乖離がある。

また、頭を動かすと音源も動いてしまう。映像は空間に固定されているので感覚のズレが生じる。

良い点は、左右の音の広がりが非常に大きいことです。正直なところ、外部スピーカーよりもその広がりを感じられます。

低音にこだわらなければ臨場感はそこそこ得られます。

そのままのスピーカーも悪くはなく、むしろ私がこだわりすぎているのかもしれないです。

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Quest 3 3.5mmジャック → オーディオIF → スピーカー ☆☆☆☆

Meta Quest3のヘッドフォンジャックからミキサー代わりのオーディオIF(RME Fireface UCX ll)に入力し、そこからスピーカー(iLoud Precision 5)に繋ぎました。

これはいつも音楽を制作しているスピーカーで、制作用にチューニングしてあるものです。

この組み合わせは素晴らしい音響を得ることができました。

まず低域がしっかり出る。このスピーカーは36Hzまで再生されます。

-IK iLoud Precision

そして、離れたスピーカーから音が出ることにより、役者さんと同じような位置から声が出ているように感じます。

スピーカー自体のサウンドの解像度も高く、立体的にサウンドが配置されて聴こえます。

スピーカーの位置が固定され、頭を回しても映像とのズレが生じず、劇場そのものにだいぶ近づいたのを感じました。

いつもの環境にケーブル1本を追加して繋いだだけの雑なセットアップなのですが、これだけでも十分で飛躍的に良い効果を得ることができました。

こちらのケーブルで接続しました。

民生機のRCA端子ならこちらですね。

先ほど紹介したiLoud micro monitorにも直接繋いでみましたが、こちらでもそこそこ低音は出ますし、やはりスピーカーで出力するだけでだいぶ臨場感が上がります。

ただ、外部スピーカーだとQuest3のもののような左右の広がり感はなく、正面の狭い範囲から音が出ている印象にはなります。

このあたりは好みかもしれません。

サラウンドの表記は見当たらなかったので、サウンドの広がりに関してはこれが限界かなと思います。

後述しますが、これ以上細かい部分を最適化してもさほど音質や体験は向上しない印象でした。
音声の圧縮などがボトルネックになっているのかなと思います。

ミキサー代わりのオーディオIFを介さず、スピーカーを直接Questに繋げたりすればもっと音質は上がるかもしれませんが、めんどくさいのでやりません…

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Quest 3のUSB端子 → DAC → オーディオIF → スピーカー ☆☆☆☆☆

本気で劇場音響にするために、今回はじめてDACというものを試してみました。

DACとは、デジタル信号をアナログの音声信号に変換する装置のことです。

これはQuest 3のヘッドフォンジャックにも内蔵されていますが、USB端子から外付けのものを使用し、音質の向上を狙います。

結論から言うと、今回のコンテンツではほんの少しだけ音質が向上する”気がします”。

ほんとうに気分程度の音質向上で、聴き比べてみましたがほとんどわかりません。

スピーカーよりもヘッドフォンのほうが音質の違いは感じました。これも気分程度。

試しにスマホのSpotifyで別の音楽→DAC→ヘッドフォンで再生してみましたが、こちらはとんでもなく音質が変化しました。

元々のコンテンツの音質がボトルネックになっているのかなと思います。
おそらく外部に出力してチューニングするような異常者に向けては作ってない。

そしてDACの最大の欠点はUSBで充電しながら観劇できないこと。Quest3単体での駆動時間は2時間。今回の舞台は3時間だったので充電が足りず、3回にわけて視聴しました。その点でもDACはそこまではおすすめしません。

DACそれぞれの感想は以下。

・Anker USB-C & 3.5mm オーディオアダプタ

安い。高域が伸び、繊細な印象になった。逆にシャラシャラ聴こえるかも。

・FIIO KA3

小型のもの。解像度が全体に上がり、言語化できない良さがある。

・FIIO K11

据え置き機。KA3に比べ空間が広がり、余裕を感じる。
ハッピーターンの粉のような麻薬的な良さがある。
今回は特にキックのアタックの歪みっぽさが取れて滑らかになり、聴きやすくなりました。

ミュージカル本編はこのK11で視聴しました。

フィルターやアウトプットの種類など、すべての設定を試せていないので、まだサウンドを追い込む余地はあります。

Quest 3 3.5mmジャック → ヘッドホン ☆☆

Meta Quest 3に直接ヘッドホンを接続してみました。

使用したのはYAMAAH HPH-MT8という音楽制作用のモニターヘッドホン。

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音楽制作用としては良いヘッドホンなのですが、今回はあまり良い結果が得られませんでした。

Meta Quest 3のスピーカーには開放感がありましたが、ヘッドホンにすると臨場感が減少し、サウンドがが直接的に耳に届くだけになってしまいました。

低音自体は出ていますが、音の立体感が乏しく、今ひとつ心に響かない音で、映像との一体感がないように感じました。

DACを挟むことにより多少サウンドの変化は感じましたが、印象はそのままでした。

おわりに

というわけでQuest 3のUSB端子 → DAC → オーディオIF → スピーカーという接続で、
ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』を全編視聴しました。

配役、歌、演出、舞台装置etc… すべて最高でした!

とくにブランドー家のメロディモチーフの使い方に痺れた…!

実は、今まで何度かVRで舞台の鑑賞を試みたことがあったのですが、いまいち本物の劇場の臨場感に及ばず、どこか物足りなさを感じていました。

しかし、今回のミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』のデモ映像を見て、「もしかしたら劇場の体験に近づけられるかもしれない…!」と感じ、急遽DACなどを複数購入して試してみました。

結果、体感89%くらいは劇場になったと思います。

これは私の中で革命的な出来事で、今までは舞台の映像を見ても「実際に劇場で見るのとは全然違う印象なんだろうな」という諦めがありましたが、今回の品質で体験すると、実際に劇場に足を運んだような充足感を感じました。

舞台を映像で見るのは敬遠していたのですが、積極的に他の作品も観劇していきたいと思います。

音響環境を整えることで、VR舞台体験は格段に向上します。ぜひ皆さんも最高の音響環境でVR舞台を楽しんでみてください!

ではまた。

◆TOHO STAGE VR ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』

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ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』公演概要

◆キャスト
ジョナサン・ジョースター(Wキャスト):松下優也、有澤樟太郎
ディオ・ブランドー:宮野真守
エリナ・ペンドルトン:清水美依紗
スピードワゴン:YOUNG DAIS
ウィル・A・ツェペリ(Wキャスト):東山義久、廣瀬友祐
切り裂きジャック:河内大和
ワンチェン:島田惇平
ダリオ・ブランドー:コング桑田
ジョースター卿:別所哲也
ほか
◆スタッフ

原作 荒木飛呂彦「ジョジョの奇妙な冒険」(集英社ジャンプ コミックス刊)
演出・振付 長谷川 寧
音楽 ドーヴ・アチア
共同作曲 ロッド・ジャノワ
脚本・歌詞 元吉庸泰