音によって気分や行動に影響を与える、サウンド・マーケティングとは。『なぜ、あの「音」を聞くと買いたくなるのか』レビュー

ゲーム、動画製作者向け

ハンス・ジマーにインタビューした際、彼は冗談まじりにこう言った。「観客はホラー映画を見て恐怖のあまり目をふさぐが、あれは間違っている。耳をふさぐべきだよ!」

『なぜ、あの「音」を聞くと買いたくなるのか―サウンド・マーケティング戦略』を読んでみました。

音を使ってどうやって購買に繋げていくのかという、サウンドマーケティングの本。音楽を作る人ではなく、使う人向けです。

音楽だけではなく、日常で発生する音、効果音などのあらゆる音に言及しています。

 

音は無意識に働きかけ、気分、行動、嗜好、選択に影響を与えます。

逆に、意識しないと聴こえてこないんですよね。しっかり音が鳴っている劇伴ですら認識されないことが多い。

重要な役割を担っているにもかかわらず、それに気づけていない人が多いわけです。

音の重要性

この本では「音は大事だよ」ということがくどいほど書いてあり、音の重要性をしっかり解説しています。

音はあらゆる場面でどう行動すべきかのヒントを提供してくれるのだ

音楽には過去に体験したあらゆる感情を呼び起こす力がある

紹介されている主な事例は

・ディズニーの「音」にかける情熱
・アップルの躍進を支えた「音」革命
・肉を焼く「音」で大成功したレストランチェーン
・「早く帰りたい」と思う音、「ゆっくり買い物したい」と思う音
・飛行機内では機内食を味気なく感じ、ミックスナッツをほしくなる理由
・客が「あのテーブル」に座りたがらない理由は音にあった
・高級車は、エンジン音とドア開閉音に徹底的にこだわる

海外のものや世代が違うものが多くてピンとこない例が多いです。僕が完全にわかったのはディズニーくらいでした。

音は費用対効果が高い

音は費用対効果が高い。

一度作ればずっと使えるし、お客さんの行動にも直接影響を与えます。

照明、看板、建築、建築材料、建築費などにかかる費用と比較すると、音にかかる費用は格安だ

店舗を構成する要素の中で、もっとも有効活用できるのは音である。

音はBGMだけじゃないんですよね。例えば、レストランの食器やドアの音、部屋の反射音など。

お店に関することは具体的に書いてあります。

例:レストラン。

客は店で流れている音を聴けば、自分の好みに合う店かどうかだいたいわかる

レストランでローテンポの曲を聞きながら食事をした客は、アップテンポの曲を聞いた客よりも13分56秒長く店に滞在したという。

また、スローテンポの曲を聞いたグループのほうが食事に集中する時間が長かった

自分の好みのBGMがかかっているとき、料理は普段よりもおいしく感じることがわかった。

しかし、80デジベルの白色雑音を流すと、風味や塩気、甘さに対する味覚が鈍くなることも判明した

例:スーパーマーケット。

アップテンポの曲を耳にした客はそそくさと店を後にする。買い物に費やす時間が少ないということは、それだけお店に落とすお金も少ないということだ。

スローテンポの曲を流したほうが、スーパーマーケットの売り上げが38%増加したという

時間帯によって曲を変えるスーパーもある

日本でも、サイゼリヤや西友のBGMの評判がよいですね。

CMソングよりもアンセムを作る

1つの商品につき1つの短いCMソングをその都度制作するよりも、アンセムをつくったほうが制作費も時間も大幅な節約になり、ブランド認知度を効率的に高めることができる

アンセムとは、特定の集団のシンボルとしての賛歌、祝いの歌、祝曲のこと。

国歌もアンセム(National Anthem)なんですね。

この本だとAT&Tという企業が例えになっているんですが、日本人にはあまりなじみがない。

FIFAのアンセムなら日本でも有名です。

同じモチーフを使って新しいバージョンが作られ続けてます。

音は静寂も演出できる

ディズニーは、自然現象や飛行機の音をかき消し、森や鳥を連想させる音楽で静寂を感じるようにしています。

僕自身、何度もディズニーランドに行っていますが、常に音楽が流れつつも、うるさく感じたり、会話の邪魔になったり、ノイズに感じたことがないですね。

完璧な景色としての音楽の役割を果たしている。

音のゴミに気をつける

とにかく音楽が流れていればそれでいいという考え方では、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまう

音のゴミを耳にすると、ニセモノを見せられている感じになる

音はストーリーを語るための効果的なツールだが、間違った音を選ぶとすべてが台無しになる。そうした間違った音を、私は「音のゴミ」と呼んでいる

最近「音のゴミ」を耳にしました。

趣味でアニメの吹き替えをやっているんですが、そのとき、息がマイクにかかる音(
吹かれ)が入るだけで映像の中の世界からはじき出されるような感覚が起こります。

逆に、バーチャルYoutuberキズナアイのように、バーチャルな見た目でも生の声だと本物っぽさを感じませんか。

おわりに

なかなかボリュームがありましたが、まあまあ読みやすかったです。