早く、高い質で仕上げてもらうために、音楽制作の作業工程を把握しておくのがおすすめです

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今回は、音楽制作の作業工程の話。

時間がかかってしまう仕事の多くは、発注者がこちらの作業行程を把握できてなくて起こることが多いように感じます。

作業行程を把握し、「前の行程に戻さない」「先の行程でやることを指示しない」。

この2つがなくなるだけで制作までの時間も早くなり、さらには成果物の質も上がります。

 

特に一度決定されたはずの行程に戻る事は、それまでやってきたことが無駄になり、時間がかかるだけでなく、制作側のテンションもめちゃくちゃ下がります。

「前の行程に戻さない」というのは、例えば大工さんだったら、家を建て始めてから「設計を変えてください」と言うような感じでしょうか。写真や映像でも、編集に入った段階での撮り直しは厳しいでしょうし、イラストでも、色塗りの段階で構図を変えることは難しいと思います。

そんなふうに、1度決定すると、戻るのに多くの労力がかかる行程の区切りというものがあります。

 

しかし、音楽の場合は、イラストや映像に比べて今どの工程をやっているのか把握するのが難しいように感じます。

ですので、今回は音楽制作の行程について、また、その行程の時にどういったことが対応しやすく、どういったことがしづらいのかを書いてみます。すこしでも把握していただけると嬉しいです。

音楽制作の行程は大きく4つ

1.作曲
2.編曲
3.レコーディング、打ち込みの詰め
4.ミックスダウン

曲にもよりますが、小さなプロジェクトの場合、1、2と3、4をまとめて行うことは多いです。

編曲まで終わった時点で1、2度確認してもらい、最後まですすめる、というような形です。

3からが大きな分かれ目になります。3以降に1、2で決定したはずの箇所を変更をしないことが特に重要になります。

1.作曲

music_sakkyoku_piano_woman

この段階で対応しやすいこと

・違う曲へ作り直し
・メロディの変更
・テンポ、ハーモニー、尺、キーの変更
・構成の変更

意味がないこと

・音量バランス、音質の変更

作曲はメロディライン、ハーモニーの作成。

雰囲気やおおまかなキー、尺、テンポ、構成はここで決まります。

まだおおまかな段階なので、音量バランスやタイミングなどの細かい事を指摘してもあまり意味がありません。

この段階で雰囲気が違うなと思ったら、思い切ってボツにして作り直しというのもアリです。

しかしながら、なるべくはそうしないほうがよいので、発注の時点でしっかりとイメージを共有することが重要になります。

2.編曲

music_orchestra

この段階で対応しやすいこと

・楽器の変更
・細かいフレーズの変更
・テンポ、ハーモニー、尺、キーの変更

意味がないこと

・音量バランスの細かい変更
・細かいニュアンスの変更

編曲は楽器編成や雰囲気、テンポ、ハーモニー、尺、キーを決定する段階です。キーやテンポはフレーズの組み方や楽器の鳴り方に影響するので大きくは変えないほうが望ましいです。

「ベースが少しだけ大きいから小さく」のような、各楽器の音量バランスの細かい変更は、あとの行程で再度バランスを整えるので2度手間になってしまい、意味がありません。

また、この段階ではニュアンスをつけていない状態なので「フレーズはいいけど楽器が歌ってない」というのはまだ目をつぶっていてください。

 
 
現代は作曲と編曲を同時にやることが多く、ほとんどの場合はセットで考えていただいて構いません。両方の変更に対応できます。

ここまでがいわゆる「ラフアレンジ」になり、大体の場合、ここまでが終わった時点で発注者に確認します。多くの楽器を使うような編成や、長い尺の場合は複数回にわけて相談しながら編曲を徐々に詰めていく感じになります。

発注者は「どこを決定しているのか」という事を意識しながら確認するとよいと思います。

3.レコーディング、打ち込みの詰め

job_seiyuu

この段階で対応しやすいこと

・楽器のニュアンスの変更
・細かいフレーズの変更
・同じ楽器の音色の差し替え

難しいこと

・テンポの変更
・尺の変更
・キーの変更
・楽器編成の変更

レコーディングとは、楽器を録音すること。当然ですが生楽器を使用しないプロジェクトはレコーディングが入りません。

この行程以降は、キー、尺、テンポの変更が難しくなります。レコーディングが外部スタジオや外注だったりすると、これらは追加料金がかかる可能性があります。

ラフだった打ち込みも細かく調整します。

打ち込みは細かくニュアンスをつける段階ですので、「他の楽器に差し替えてほしい」というのは、その作業を無駄にしてしまうのでよくありません。楽器は編曲の段階できちんと決めておくべきです。

「トランペットの音をもっと柔らかいものにしてほしい」など、同じ楽器での音色の差し替えであれば、比較的容易です。

4.ミックスダウン

toy_mobile

この段階で対応しやすいこと

・各楽器の音量バランス変更
・楽器の音色の調整
・打ち込みリズムパートの音色の差し替え
・フォーマットの変更

難しいこと

・これまでの行程で済んでしまったこと

ミックスダウンとは、個々の楽器の音量、質感のバランスを整える最後の行程です。

奥行きを出すエフェクトをかけたり、歪みを加えたりといった音色の加工もします。

他は微調整レベルの変更しかできません。リズムパートの音色差し替えだけはわりと容易です。

フォーマットは、ハイレゾなどの高音質なものだったら最初に伝えておくべきですが、最低でも44.1kHz16bitWAV以上で作業しているはずなので「mp3と言っていたけどやっぱりWAVにしてほしい」といった要望の対応は簡単です。

■追記

表を作っていただきました。

おわりに

私の行程ですので、他のかたは違うやり方をしているかもしれませんが、大筋はみなさん同じだと思います。

書いてみて思ったんですが、やっぱり把握が難しいですね。どこまでが細かくて、そうでないのか、など。

一度でも曲を最後まで作ってみると、行程がわかりやすいかもしれません。しかし、「半端に作れる人間のほうが目的を見誤った注文をしやすい」という罠もあったりします。音楽の効果ではなくて、自分の趣味で決定してしまう、のような。

クリエイター側も、制作途中でファイルを送る時はどこを確認して決定してほしいのか、一言添えるべきだと思っています。私は、特にレコーディングの前は必ず、キーやテンポが変えられなくなってしまう事を伝えるようにしています。

もちろん、多少行程に沿わない指示があっても「今やるべきではないことです」というふうに切り捨てたりはせず、その場所だけ先の行程の事をしたりして、その指示を入れながら進めていきます。わからないのが普通ですからね。

では、お互いいい仕事にしていきましょう。

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