作曲家のこおろぎです。
作詞って、文字でできているから誰でも書けそうな気がするのに、実際に書いてみるとうまくハマらなかったり、なんとなくかっこよくならなかったりしますよね。
原因が漠然としていて、どうしたらよくなるのかがイマイチわからない。
この『作詞少女』は、その違和感の正体を具体的に教えてくれる本だと感じました。
ざっくりレビュー
・実践ですぐ使える8つの技術
・精神を抉ってきます
・作詞の難しさの正体がわかる
作詞の技術の説明がちりばめられている小説です。5時間程度で読み終わるボリューム。
実践ですぐ使える8つの技術
まずは、実践ですぐ使える、具体的な8つの技術が載っています。
ほとんど知らなかったので、かなりタメになりました。特に母音と「ん」で気持ちいい響きを探っていく、というもの。
音として鳴っているものはすべて音楽のグルーヴに帰結すると思うんですが、歌詞に対してのその探り方を知れたのがよかった。
資料読みの話は、連想する単語を書き出したりする部分まで、僕が作曲する場合も同じことをしているんですよね。
最終の出口がサウンドになるのか、歌詞になるのか、という違いだけなのがおもしろかったです。
勇気の話とは
本のサブタイトルの「勇気の話」というのは何なのか。
本を読む直前、表紙絵を描いているまつだひかりさんとやりとりさせて頂いたのですが、
真正面からのお話に見劣りしないよう、気を引き締めて描いたので嬉しいです!ありがとうございますっ…!
— まつだひかり🎸まこディス①巻発売中 (@niko9_niku9) 2017年11月27日
すこし違和感を感じたんですよね。もしかして思っている感じと違う内容なのかなと。
実際に読んでみたらすごかった。ツイッターに書いたら確実に凍結されるであろう言葉がたくさん並んでいました。
これが技術書だったら出せてないはずです。あくまで、物語のセリフとして、ファンタジーとして発せられていることになっているから大丈夫、という。
荒っぽいキャラクター「詩文」に、著者の仰木さんが普段思っているであろう本音をぶちまけさせているところがニヤニヤするポイント。
9話で詩文が
「…今からする話は、作詞家もとい、”作家”の世界の話だ。ここに踏み込めば、お前は今日から普通じゃなくなる」
と、悠を丁寧に諭す場面が出てきますが、まさに読者に語りかけているわけです。ここから先を読むのは覚悟しろと。
その内容は、作詞の精神的な部分を「深堀りしている」というよりも「抉る」という表現のほうが適切でした。僕がテキトー作詞家だったら死んでいたかもしれない。
物語にすることで悠の感情を追体験し、読者がその内容の重要性を理解しやすくなっています。これもただの技術書だと言葉を表面だけなぞって終わりになる部分ではないかなと思います。
作詞の難しさとは何だったのか
僕自身が感じていた作詞の難しさは「自分と向き合うことの難しさ」だったわけです。
音楽を「翻訳」して歌詞として表現するときには、楽器だけだったら曖昧にしておけたものを、はっきりと文字にしなければいけない。
そこが「偽善」の言葉だと、とたんにつまらないものになってしまう。
おわり
全体的にハードな内容ですが、読んでいる途中で、試しに作詞がしてみたくなってくるような本でした。
作詞家になる勇気はありませんが、歌ものを作曲する機会があったら、仮歌で技術を使ってみたいです。