市販の音声素材でも不適切なことがある?イスラム教と音楽制作の関係についてのまとめ

その他

しばしば、イスラム教のことに触れた楽曲で問題が起こっていますね。

■『ストリートファイターV』のタイステージDLCが配信停止。『ゼルダの伝説 時のオカリナ』と 同様にBGMでイスラム教を示唆か

■「ノラガミ ARAGOTO」がイスラム教へ不適切な音声使用があったと謝罪 サントラ回収やパッケージ発売延期に

■イスラム教の礼拝をリミックスしたDJに実刑1年

■イスラム教音声を「不適切使用」 アニメ「鬼滅の刃」関連商品、出荷停止・在庫回収へ

こういった問題を起こさないためにも、今回はイスラム教と音楽制作の関係について整理、理解していきます。

まとめ イスラム教の声に関係するもの、似たものを曲中に組み込むのはすべてダメ

・イスラム教は、官能的快楽をもたらすとして音楽を容認していない
・いくつかの打楽器を除いて楽器の使用を禁じている
・聖典の読誦であるキラーアやアザーン等の詩歌は、音楽ではない物として扱われる
・キラーア、アザーンを音楽と一緒に流すことは禁じられている
・宗教的な内容で、ほぼ声のみであればナシードとして許容される

基本的にイスラム教は音楽全体に対して不寛容だということ。
宗教的な内容でほぼ声のみであれば、それは音楽ではなく聖典の読誦やナシードとして許容される、ということ。

それを踏まえると、イスラム教に関係するものを一般的な曲中に組み込むのはすべてダメだと考えていい。

明らかに禁止されているものだったら音声素材としても販売されてないはずなのですが、どうやら、それ以外にもNGになる場合があるようです。

冒頭の記事では具体的なことは書いていないのですが、推測すると

・キラーアやアザーンに似たものでもNG
・イスラム教を揶揄する内容はNG

架空言語を作って、キラーアやアザーンに似た音程にするのもNGに含まれる印象です。

また、ナシードについては、現代ではかなりポップスに近い作られ方、扱われ方をしているようですが、イスラム教内でもグレーゾーンなようで、文脈に沿っていなければNGのようです。

対策

・イスラム教に関係する音声を使わない
・イスラム教の詩歌を覚えて、似た雰囲気になるのも避ける
・何を言っているのかわからない内容のサンプルは使わない
・アラブ世界のエッセンスを入れたいときは声を使わず、楽器で表現する

何を言っているのかわからない内容のサンプルは使わない、というのはアラビア語だろうが、英語だろうが同じですね。

音楽の内容に対してチグハグな言葉だと、外国人がすごい意味の日本語Tシャツを着ている、みたいなことになっちゃいますからね。

また、イスラム教は楽器に不寛容でほとんど使わないということは、逆に、宗教と密接な楽器はないということ。アラブ世界の楽器はどれを使ってもNGにならないということなはず。たぶん。アラブ世界のエッセンスを入れたいときは言葉を使わず、楽器だけで表現すれば大丈夫なはずです。

用語

音声も用意してみました。実際にどういうものなのか、無意識に使ってしまわないよう、一度聴いておいたほうがいいかも。キラーアはめっちゃ長いうえに内容が理解できないと意味がないかもしれませんが。

コーラン(قرآن qur’ān)

イスラーム教の聖典。イスラームの信仰では、唯一不二の神(アッラーフ)から最後の預言者に任命されたムハンマドに対して下された啓示と位置付けられている。

■クルアーン – Wikipedia

キラーア(قراءة)

決まった読誦法でコーランを声に出して読むこと。

アザーン(اذان adhān)

イスラム教における礼拝への呼び掛けのこと。

ユダヤ教のラッパ、キリスト教の鐘と同じような役割をしているが、肉声で行われることに特徴がある。「神は偉大なり」という意の句「アッラーフ・アクバル」の四度の繰り返しから始まる。

■アザーン – Wikipedia

ナシード( نشيد Nasheed)

イスラム教の声楽曲(宗教音楽、宗教歌謡)。

■ナシード – Wikipedia

おわりに

市販の音声素材でも不適切なことがある、ということで、アラビア語の音声素材は十分に注意して使用していきたいですね。宗教と密接に関係していて外の世界にも寛容な西洋音楽や、ゴスペルを考えると不思議な感覚なのですが。

近年では、伝統音楽や民族楽器の音声素材を積極的に入れる場面が多くなってきているので、こういったことにも気を配りたいです。