【第ニ回】レコーディングから完成まで【近視のサエ子の編曲事情】

制作事例

第一回に続き、アルバム「近視のサエ子」に収録の楽曲「アレ」の『編曲』が中心のお話。

ひきつづき、作曲者の金延さえと、編曲者のこおろぎのやりとりをほとんどすべて公開していきます。

第一回では、最初のやりとりからフルコーラスのラフまで制作し、曲の大まかな雰囲気が決まりました。

今回は「細部の詰め→レコーディング→ミックスダウンをして完了」までです。

テンポを上げてみる

こおろぎ
実は、倍テンポのバージョンを制作する際にテンポをBPM195に上げていたんですが、いかがだったでしょうか。

■全体のラフ(BPM195)

こおろぎ
元のBPM190だとまったりしてしまうなと思っていて、逆に、さらに上げて200まで行くのはありだなと思っています。
金延さえ
さらにあげるとどんな感じなのか…気にはなります!

もしお手数でないのなら、200で聴いてみたいです。

(早すぎて歌えるのだろうか>_<)

こおろぎ
テンポ200のものです!

金延さえ
いいですね!

テンポは200でお願いします!

仮ギターソロ

こおろぎ
ギターのソロについて、仮で録音したものがあるととても助かります。

ソロのフレーズに呼応して他の音を入れていきたいので。

木下卓郎
ギターの木下卓郎です。

仮のソロを、エレキやナイロン弦も合わせて4パターン録ってみました。

・アコースティックギター

・エレキギター1

・エレキギター2

・ナイロン弦ギター

こおろぎ
ありがとうございます。

やはり、アコースティックギターが一番合っているように感じたのですが、いかがでしょうか。

全体的にいい感じでしたら、楽譜を作成してレコーディングの準備に入りたいと思います。

金延さえ
エレキの二つめと、アコギで悩みました、、、が、アコギでお願いします。

アコーディオンの音色について

金延さえ
アコーディオンの音色は、こちらで決定でしょうか?

※サビや間奏の右側に入っています

こおろぎ
アコーディオンの音色はレコーディングの後にギター、ベースに合わせて調整するかもしれませんが、基本はこれでいこうと思ってます。

差し替えてみたのですがしっくりこなかったので、現在は前から使っている音色に新しい音色を混ぜた音にしています。

金延さえ
もしご調整いただけるなら、生感があると嬉しいです。
こおろぎ
試しにアコーディオンを別の音色にしたものを送りますね。

こおろぎ
まだニュアンスをつけてない部分があるので、そこも生感には関わっているとは思います。
金延さえ
アコーディオンは元のほうでお願いします!

4 レコーディング

ここから歌と楽器のレコーディング(録音)に入っていきます。

録音スタジオが遠いということで、僕は立ち会わないことになりました。

金延さえ
アレンジャーさんと会わずにレコーディングするのが初めてなのですが

音のズレやリズムのズレはどこまで許容範囲(修正範囲)でしょう?

何か気をつけたほうがいいことはありますか?

こおろぎ
修正をなるべくやらないで、どうしてもズレる部分だけ修正に回す、というのが前提ではありますが、

具体的には、音程は半音以上ズレるとつらくなります。

あと、極端に音程をしゃくりあげたり、音程がゆらゆらと不安定になっている部分や、ビブラートの揺れ方も修正するのは難しいですね。

堂々と音を外しているものは修正しやすいです。リズムも多少は問題ないです。ギターも和音を修正できます。

コーラスのおわりの長さを揃える、という部分も録るときに気をつけていただけたらなと。

あとは言葉の聴こえ方やニュアンスを気にしてもらえれば、という感じですね。そういった部分は修正できないので。

提案としては、デモよりも、アバズレ感というか…w 声にルーズさというか、投げやりな感じがあるとよいなと思いました。

デモは余裕がなさそうな感じなので、もっと余裕を出して大人っぽく、エロくしたいですね。特にAの部分。息の成分を多めにしてもよさそうです。

金延さえ
ギターはダブリングにしようと思っています。ベースは調整中です。
ダブリング → 同じ演奏をしたものを2本重ねて厚みを出すテクニック
こおろぎ
ギターについては、1本だけのほうが演奏のニュアンスがはっきり出るので、この曲ではそのほうがカッコいいかなとは思っています。ダブリングにすると輪郭が曖昧になるので。

レコーディングだけ2本ぶんやっておいて、あとでバランスを調整しましょうか。

5 ミックスダウン

今回はこおろぎがミックスダウンまで担当することになりました。

実は、ある程度音を作りながら編曲をしているので、ミックスダウンの手間はミキシングエンジニアさん向けのデータを作る場合とあまり変わらなかったりします。

やりとりには出てきませんが、この工程の前に各楽器のフレーズも詰めています。リズムがきっちり3連でハネすぎていたので、ハネ具合をゆるくしてグルーヴを調整したりもしています。

金延さえ
本日レコーディングしました!

ギターはダブリングにもできるように2パターンとっています。ボーカルも2パターン

最後のアウトロを軽く(ささやいて)うたったパターンと、強くうたったパターンです。それぞれにあうようにうたったコーラスも2パターン。

そして…

最後の最後の「ああいやダダダダ」だけのファイルが入っています。

金延さえ
ここだけこんなふうに演技っぽくしても面白いかなーと思って番外編でとってます。
軽くうたっているアウトロの最後だけハッキリ演技っぽく終わったら面白いのでは!?
という思いつきです。

というか、エロさを追求していたら偶然にも録れたので、せっかくだからお渡ししよう…という感じです。

こおろぎ
ミックスダウンをしてみました。

・アウトロを強く歌っているほう

・アウトロをささやいて歌っているほう

こおろぎ
最後は盛り上がっているので、強く歌っているほうが演奏の温度感に合っていてよさそうですね。
金延さえ
アウトロはささやかないほうがいいですね。

レコーディング中はスタジオスタッフもギターの卓郎もみんなささやいたほうがいいという意見でした。でも、ミックスしたらイメージが変わりますね!

歌の修正

金延さえ
以下、気になる箇所です。

▶︎音程

00:50 あたりの

「ねえ、ねえ、ねえ」の最後の伸ばすところが、
頭が下がっていて、うぃーんと音程を上げている感じになっています。

金延さえ
こおろぎさんはどうでしょう?

そこを、最初から音が上がっているようにできるでしょうか。

▶︎発音

各歌い出し「アレ」の「あ」を少し上げることってできるでしょうか。
変だったらなしで大丈夫です。

▶︎バランス

ボーカルが浮いているように感じます。

イコライズの問題なのか、ボリュームの感じなのか、リバーブの感じなのかは分からないのですが…

こおろぎ
「ねえ、ねえ、ねえ」の部分を修正してみました。

こおろぎ
他の部分も修正しました!

※参考までに、全体の修正前の歌と修正後の歌です。

・修正前

・修正後

ピッチは注意深く聴かないとわからないかもしれませんが、特に最初のAメロのリズムは突っ込んでいたのが大幅に直っていると思います。

他にもハネ具合の調整など、リズムを中心に修正を入れています。

金延さえ
おはやい対応ありがとうございます!

希望どおりで嬉しいです!!!!

こおろぎ
大丈夫そうでよかったです。

これがマスタリング前のミックスになります。

※エンコードが入っているのでオリジナルの音質ではないです。

6 編曲&ミックスダウン終了

このあとは、僕の手を離れ、他のアルバム曲と一緒に、最終の仕上げである「マスタリング」をして楽曲は完成しました。

『編曲』と、おまけに『ミックスダウン』のやりとりはこれですべてです。

ほんの少しだけでも、編曲でやっていることがわかっていただけたら嬉しいです。

今回のエントリで編曲した「アレ」が収録されているアルバム「近視のサエ子」はiTunes、LINE等で配信、AmazonでCDを販売しています。

【これは、強がりで、実際に強くて、だけど寂しい「こじらせ女」の物語。】

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