VRゲームの音楽が達成すべきミッションとは。制作で実際にやったこと。

公開日: : 最終更新日:2017/12/17 ゲーム、動画製作者向け, テクニック, 制作事例

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VRゲームの音楽が達成すべきミッションとは。制作で実際にやったこと。

株式会社ハシラス様(@hashilus )からのご依頼で、

飲食を楽しみながらVR/ARゲームを体験できるカフェ&バー『VREX』内のゲームの音楽を制作しました。

飲食を楽しみながらVR/ARゲームを体験できるカフェ&バー『VREX』内のゲームの音楽を制作しました。

いわゆる人生ゲームの「バーチャルライフ 大人編」と、色々なミニゲーム6つ。

2~4人で楽しむタイプのVRゲームです。

今回はその音楽を作るために考えたこと、実行したことを書いていきます。

すべてではないですが、実際に楽曲を紹介しています。

仕様

・ステレオファイルで納品。音楽はスピーカーから流れる
・プレイヤーは肉声で会話する
・基本は立って体験。体を動かす内容。
・4人程度で同時にプレイする

音楽を作る前に体験してみたんですが「VRでここまで体を動かすのか…!?」というのが最初の感想でした。

体が触れ合ったり、ということもよく起こるかもしれませんね。効果はこれからはわかると思いますが、心理的な距離を近づけるのにもいいかもしれません。

ストックから曲をあててもいいということになっていましたが、それだとうまく合わなかったので、すべて書き下ろしました。

また、今回はサラウンドは扱いませんでした。

6つのミニゲーム編

ミニゲームの音楽におけるミッション

音楽で達成すべきミッションを設定し、それを達成するにはどうしたらよいのかを考えました。

■プレイ中に飽きないようにする

→繰り返しを避け、展開させていく。
シンプルなゲーム内容、かつ体をずっと動かすので、音楽の繰り返しを感じてしまうと「まだやるのー」という感じで、確実に気持ちと体がダレてくる。

作業になってしまわないよう、音楽を展開させて緩急をつけ、気持ちと体を乗せて飽きないようにする。

■気兼ねなく大きな声を出しやすくし、ゲームを楽しんでもらいやすくする。

→派手でテンションの高い音にする。「大きな声を出してもいいんだ」と思わせる。クラブで会話するときに大きな声を出すイメージにも近い。自分で大きい声を出すことによってテンションが上がり、体も動きやすくなる。

■複数人でプレイするので、お互いの声が聞こえるようにする

→会話の流れを遮るので、なるべく耳を奪うようなメロディを入れない。音数を入れすぎない。声の周波数の音をあまり使わない。

このアトラクションは、ゲームをクリアできるように頑張る、ではなく、ゲームを通じてコミュニケーションをする、というのが目的なので、お互いの声が聞こえるのは重要になる。

■それぞれのゲームで異なる体験にする

→ゲームごとに使用楽器、曲調、リズム、はじまりかた、展開のパターンを変える

■VR空間に没入できるようにする

→コンテンツ外の雑音が聴こえないように、音の空白(ブレイク)を少なくする。

■ルールや現在の状況を知らせる

→タイムアップしそうな時に焦るような音に。
イワロックでは、当たってはいけない時は緊張感のある音楽、当たってもいい時は明るい音楽に。等

■ビジュアルの質感を補う

→CGでも、現実の音をつけると生っぽく感じやすい。一般でいうキズナアイ効果。

現実の質感を感じさせたいゲームは、生に近い音色を使った音楽にする。逆に、機械的な音をつけると物体が非現実に、固く見える。

各ゲームごとの設計

ヨケロック

降ってくる岩を避けるゲーム。宝が降ってくる時間も。

冒頭から、「危険が迫っているよ」ということを知らせるサウンドにしています。

ルールの説明をされなくても、周辺を警戒し、落ちてくる岩を発見して、避けなければいけない気分にさせる音楽に。

宝が降ってくる状況では、逆に警戒心を解いて、触れても大丈夫だという、安心や期待を感じる音楽に。

ヨケ”ロック”ということでエレキギターを入れたサウンドにしています。

まくら投げ

お互いのまくらをひたすら投げるゲーム。

何もしなければ何もおきないゲームなので、動き出したくなる、ソワソワするようなサウンドを目指し、音楽主導で体が動くようにしました。

具体的には、変拍子のごちゃごちゃしたバンドサウンドにしています。リズムを一定にしないことにより、体がずっこけるように動くイメージ。

場所は和室なんですが、”和風”ではないんですよね。現代の和室。なので、音色はすべて現代のものにして、和楽器は入れていません。

ボンバードッヂ

自分のところで爆発しないよう、爆弾を人に渡すゲーム。

3つの曲を同時に走らせて状況で切り替えていく、インタラクティブな音楽になっています。

爆弾の秒数が進むと焦るような音楽に切り替わり、爆発したら最初に戻ります。

どのタイミングで切り替わっても大丈夫なように、同じモチーフの繰り返しで音色だけが切り替わるようにしました。

曲調はビジュアルに合わせてサイバーな4つ打ち。

■平時

■時間経過

■爆発寸前

SUSHI COASTER

指定された寿司を食べるゲーム。

同じ動作の繰り返しなので、そのリズムに乗ってテンポよく体が動くように。

サウンドは和楽器を中心にしています。

Mogura in VR

VRメディアっぽい名前の、モグラを捕まえてカゴに入れるゲーム。

リズミカルに体を動かせるポップな音楽にしています。

モグラを捕まえて網に入れるというわりと残酷なゲームですが、罪悪感を感じない、ファンキーで明るいサウンドにしています。

しゃるうぃ花火

ゲームではなく体験です。色々な場所で花火をします。花火は手に持ちます。

景色に合わせた美術としての音楽というよりも「その場所で実際に音楽を鳴らしながら花火をしている」という、場面の内で鳴っているイメージの音楽にしています。

民家の場面でパリピな感じの曲になってたり。近所迷惑すごそう。

バーチャルライフ

いわゆる人生ゲームで、30~50分のプレイ時間になっています。

バーチャルライフの音楽におけるミッション

■会話が聞こえるように

→体があまり動かず、そこまで張った声を出さないはずなので、邪魔しないような抑えた音楽に

■テキストを読むのを邪魔しない

→耳を奪われる音を入れない。はやいテンポで急かしすぎない。

■長時間のプレイで疲れさせない

→展開をしてループを感じさせない。心地よいテンポ感。耳障りのいい、やさしい音にする。パーカッションは耳が疲れるのであまり使わない。

■何をしているのか知らせる

→結婚式は結婚行進曲、お葬式はお経など、その場面での王道な音を使い、今はどういう場面なのか、音楽でも把握できるようにする。

ミニゲームとは違った設計になっています。プレイ時間が長く、通常のテンションもミニゲームより低いはずなので、それに合わせて通常の音楽のテンションも落としています。

通常マップ

マップ上で流れる音楽。一番長く聴かれます。

前期と後期の2曲。ビジュアルは、前半は新しいオフィス。後半は落ちついたオフィス。

行動を促しつつ、急かさない音楽。雰囲気は明るめにしつつ、色々なイベントが起こるので明るくしすぎない。

かつ、ここではそんなに張って話さないので、柔らかい音色、少ない音数で。

通常マップの曲は今回の中で一番方向性を修正しましたね。ハシラスのちえさんのイメージと、僕が考える上記のサウンドデザインをすり合わせていきました。

■前期

■後期

イベント

イベントは、場面のわかりやすさが大事ですね。

結婚式

最初はプロポーズから始まるのですが、秒数が決まっているのでプレイヤーを急かすような、音数が多い音楽にしています。

そのあとは結婚式ですが、音楽だけでも場面がわかるよう、「結婚行進曲」に近い音楽にしています。そのまま使ってもよかったですね。

ライド


前期、後期間のステージの移動でセグウェイのような乗り物に乗るときの音楽。

気分転換、スピード感、建物から外に出る解放感。そういったキーワードで制作しました。

懐かしのドライブミュージックっぽくしています。

EDMも考えましたが、生音のほうがバーチャルの景色が生っぽく感じるのでそうしました。冒頭でも書いたキズナアイ効果を使っています。

加速、減速に音楽も合わせています。加速はかなり早かったので、マリオカートのスタートのイメージで、イントロなしでいきなり始まります。

お葬式

プレイヤーのお葬式。

ほんとうに悲しい気持ちになってしまったら体験としては後味がわるいので、音をコミカルにし、ちょっと笑っちゃう感じにしました。

最初は浄土真宗のお経を使っていましたが、色々なトラブルが想定されたので、オリジナルでお経を作りました。

読み上げも僕です。お経の言葉に「ハシラス」と入れようか悩みましたが寸前でやめておきました。

結果発表

結果発表と同時に、写真撮影もする場面。終わった感を出しつつ、リラックスしてじっくり撮影できる音楽に。

オーケストラっぽい曲ですが、重厚になりすぎないよう、現代的な音色も入れて軽くしています。

おまけ PV

PVの音楽も専用に書き下ろしました。

雰囲気といくつかの指定はありましたが、ラフ画も映像も秒数指定もなかったので、僕の方でほとんどの展開を考え、それに映像を合わせていただきました。

導入は、これからどんなことが起こるのかがわからない音にして、メインの楽しい音楽のフリにしています。

声と同録の音楽がぶつかっているように聴こえなくてよかったです。なんで他の音楽が入っちゃっているかというと、音楽がスピーカーから流れているから、声を収録するときに一緒に入ってしまうんですね。

おわりに

実際に体験させてもらったことで、かなり色々と考えることができました。あまりリテイクがなかったので、僕が考えた設計がほとんどそのまま実装されています。

さらに、音楽の使用を自由にしていただいたハシラス様に感謝します。このエントリを書くことができました。

みんなでわいわい楽しめると思います。ぜひ体験してみてください!!!!

リンク

■VREX渋谷宮益坂店

■ハシラス 

 
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  • フリーランスの作・編曲家。ドラマ、舞台、CM、Youtube、VRなどの映像やゲーム、アプリの音楽を作ったり、歌モノの編曲をしたり、ワインを飲んだりスプラトゥーンで遊んだりしてます。ファンタジーな音楽が好き。→詳しく

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