1月25日に株式会社ワールドスケープから
「Super dolphin」という編曲チームが発表されました。
◆編曲家チーム「Super dolphin」
https://superdolphin.frekul.com/
このチームは「曲は作れるけど、編曲に苦労している」というソングライターさん
に編曲を提供するというものです。
僕はちょうどSuper dolphinとまったく同じ
「曲は作れるけど、編曲に苦労している」というソングライターさんに向けて編曲をする
というコンセプトで仕事を受けていました。
Super dolphinの価格は一律88000円で、僕も5万円から10万円の間くらいでやってました。
価格帯もすごく似てるんですね。
しかし、僕はこのコンセプトで大失敗しました。
2005年から10年前後3桁以上の人たちと3桁以上の編曲をしたと思います。
2018年にもう編曲の仕事はしませんっていうブログを書くんですけど
結局、僕は音楽で食おうと思った当初は編曲家を目指してたんですけれども、専業の編曲家として食っていくことはできなかったんですね。
音楽で生計を立てられるようになったのは作曲家に転身してからです。
今回は、なぜ僕が編曲家を目指して失敗したのかという失敗談をしていこうと思います。
どうして編曲家になれなかったのかというのを、大きく二つに分けると
・編曲家という職業自体がそもそも難しい
・戦略上の失敗
という二つの要因があったのかなと思います。
編曲家という職業自体がそもそも難しい
まず、編曲家って作曲家にくらべて職業として成立させるのがものすごく難しい。
ざっくり言うと
・作品が自分のものではない
・印税が入ることがすくない
・数がこなせない
・ポートフォリオが修正しにくい
・営業が難しい
・作品が自分のものではない
まず、編曲家は関わった作品が自分のものではないっていうところです。
仕事の構造としては、他人の音楽を編曲して、その代金を頂いて、終わり。っていう職業なんですよね。
最近は印税が作曲だけではなく編曲にも分配される仕組みもできてきたんですけど、それはメジャーなアーティストに限られるのかなと思います。
個人だと分配が大変になったりとか、そもそもそんなに売り上げがなかったりするので、ほとんどやらないはずです。
そして、その曲をどう展開するというのかというのことも自分ではどうしようもないわけですよね。
僕はマーケティング的なことが好きなので、楽曲で利益をあげたり知名度をあげるために配信をどうするかとか、プロモーションをどうするかとか、どう展開したらいいかな、って妄想を膨らませるんですけど、
自分の曲ではないので、勝手にそういうことはできないし、相談されない限りは口を出せない。
編曲として関わると、こう展開すればいいのになと思っても、作品の扱いを自分でコントロールすることができない。
逆に、自分自身で作品を作ると自由に扱えるわけですよね。
配信もできるし、無料でどんどん配って広告にもできるし、自分のYouTubeで流して皆に聞かせることもできるし、Audiostockに登録すれば売れるだけお金が入ってくるし。
1曲を使っていろんな展開が考えられるし、自分の曲ならそれを実行できる。
編曲だと1回あたりはまとまったお金がもらえるけれども、継続した事業としてやるには柔軟性がないんです。
・数がこなせない
他人の楽曲の編曲は時間がかかるんですよ。
時間がかかるとどうなるかというと、単純にクリエイターとしての作品数が増やせないし、
クレジットも世の中にあんまり出ない、試行回数も増えないから場数も踏めない。
他人の楽曲の編曲はやりとり含めだいたい2週間以上はかかります。
平行してやることもできるんですけど、3、4曲くらいが限界かなと思います。
まあそうするとマックス働いて月に8曲くらいです。そこまで作る月はほぼなかったですけど。
で、歌モノじゃないインストゥルメンタルの曲が1ヶ月で何曲作れるかと言うと、
マックスで50曲くらいは作れるわけです。
もちろん、1曲あたりの金額はインストゥルメント曲の方が小さい傾向はあるんですけど。
それでもまったく作れる作品数が違うわけです。
そして、編曲は時間がかかる上に作って終わりになっちゃう。
だから編曲家は全員が1曲あたりの単価を高めていくっていう方向に進んでいくしかなくなる。
そうすると最後は単純なクオリティの殴り合いと競争で収入が決まってくる、みたいな感じになっちゃうんですよね。
逆に、自分でインスト曲を作って展開すれば、数も作れて継続的な収入も得られるわけです。
色んな展開が考えられるから1つの作品のクオリティが最高級に高くなくても殴り合いを避けて場所や展開をうまく選べば安定して食っていける。
・ポートフォリオが修正しにくい
編曲家ってポートフォリオを作るのが難しい。
ポートフォリオはいわゆる「作品集」ですね。こういう作品が作れますよって言うカタログみたいなものです。
で、編曲家がポートフォリオを作るのが難しいのはなぜかと言うと
編曲家は作曲家がいてはじめて成立するので、 自発的に作品を作ることができないというのが原因の一つです。
じゃあ最初に僕がどうやって編曲の仕事を始めてポートフォリオを修正しようとしたのかと言うと
2005年ごろ、最初は「音楽の仕事を探してます」みたいな掲示板を見つけたんですよね。
そこで「こういうことができますよ」ということでアピールしたり、こちらからコンタクトをして、それで請け負って編曲するという事をやっていました。
今でいうクラウドソーシングに近いことを十数年前位に始めたんですね。
で、最初は個性を出すとかはないです。とりあえず受けられる仕事はドンドン請けてやる、みたいな感じでやってきました。
そうするとポートフォリオみたいなものもできてくる。
でも、そこまで適当に仕事を請けてきたから、
「本当はこういう曲調が得意なんだけれども」とか「こういう曲調を作ってみたい」っていう音楽がそのポートフォリオには入れられてないんですよ。
で、編曲家って自分でゼロから作れるわけじゃないから、そのポートフォリオを修正するのが難しいんですね。
当時はネットで発信するメディアもほとんどなかったので、それがますます難しかったです。
今だったら、他の人の楽曲のアレンジしたカバーをYouTubeにどんどんあげていくとか、そういうふうにポートフォリオを作れたと思うんですけど。
当時はカバーしてネットにあげるっていう文化は無かったし、JASRACなんかと契約しているメディアもなかったと思うんですよね。
ニコニコ動画が出てきてからちょっとそういうことをやったんですけれども、あまりうまくはいかなかったです。
だから自分の行きたい方向を指し示すようなポートフォリオが作りにくかった。
・営業が難しい
どうやって営業していいのかも全然わからない。
未だにどうやって営業するのかが全然わからないです。
今も編曲の仕事は来るんですけど何となく来てます。
昔、有名な編曲家がどうやって編曲家になったかというのを調べてたんですけど、
一旦バンドでメジャーデビューして、そこから編曲の仕事をするっていう人がかなり多くて、1回別ルートから業界の中に入っていかないと難しいんじゃないかなって思っていました。
今は全くどうなっているかわかんないんですけど。
僕は個人の方を対象にするっていうコンセプトだったので 、掲示板で受付けたりとか、ブログでアレンジできますよ、みたいな感じのものをかいたりとか。
Twitter が出始めた頃は「アレンジ 苦手」とか「編曲 難しい」とかでつぶやいてる人のところにリプライで突撃したりしてました。
結局ほとんどうまくいかなかったんですけどね。
・戦略上の失敗
戦略上の失敗は
・個人向け編曲というコンセプトの破綻
・一点集中できてなかった
・精神的にキツかった
この3つかなと思います
・個人向け編曲というコンセプトの破綻
フリーランスの編曲家は価格設定が難しすぎました。
僕の価格はミックス、外注別で4、5万円くらいの時期が多く、
最終的には10万円くらいにはしたんですけれども、結局それでもあまりはうまくいかなかったです。
その位の5~10万円くらいの価格帯のお客さんは個人がほとんどです。
そもそも、僕の編曲事業としてのコンセプトは、個人のシンガーソングライターにコストパフォーマンスのいい編曲を提供する、ということだったんですよ。
僕が始めた十数年くらい前はシンガーソングライターでDAWを扱える人は少なかったから、個人のシンガーソングライターはアレンジに困ってる人が多いだろうなと思って、
そういう人がお願いしやすいくらいの価格で、きちんとしたアレンジを提供しようっていう運営方針だったわけです。
「困ってる人のためにやろう」っていうその心構えが駄目でした。
個人に向けてやってるから価格もあんまりあげたくないし、 できるだけ希望に沿ってあげたいからリテイクも多くなっちゃうし、みたいな。
コンセプトが破綻してました。
商売なので、もっとドライにやっていってよかったなと。そこが中途半端になっちゃったなと思います。
でも、困っているシンガーソングライターを助けたいっていうコンセプトだけを聞くと、そんなに悪くないんじゃないかな
って言う気がしません?
困ってるシンガーソングライターに安くでアレンジを提供しよう、そう考えた結果どうなったかと言うと、
>リテイク地獄<
リテイク地獄が始まります。
サービスとしては「価格にしては良いアレンジだな」みたいなところを狙いたかったんです。
しかし頼む側としては頼むからには価格に関わらず最高の作品を作りたいっていう気持ちはあるわけですよね。
頼むからには自分の何曲か作った中で一番いい曲の編曲を頼むだろうし、個人の方なので4、5万も安くはないわけですよ。
だから一つでも気になるところをなくしたい、みたいな感じで発注するわけです。
対してこちらは4、5万円だと時間もかけられないし、予算内でクライアントの頭でイメージしているサウンドを完璧に作るのが難しいので、あくまでコストパフォーマンスを軸に作成していくことになります。
それを編曲を頼む側は10倍以上の値段をかけている楽曲と比べて判断する。しかしどうしても品質的にはそこまでには及ばない。
そこが一生噛み合わなかったです。
やっぱり、こだわりが強いので細かいリテイクも多くなるんですよ。
平均20回くらいですね。多い時には40回近くになったりもしました。
仕事で日常的に編曲を頼んでいるような、ディレクションに慣れている人もほとんどいないんですね。
ディレクションは大きな部分から形を作って、だんだんと細かい部分を詰めていく、というのがセオリーだと思うのですが、慣れてない方は大きな部分と細かい部分の区別がないので、作業工程の前後が発生します。
アレンジの初稿を出した時に、まず楽曲脳全体の方向性、雰囲気としてどうか、という大まかな部分を最初に修正すべきなのですが、
いきなり最初で楽曲の印象に全く関係ないような妙に細かい部分のリテイクが来る、みたいなことがほとんどです。
例えば、最初のメールで「ベースの音が小さいです」とか。
それはアレンジの方向性の大枠がオッケーになって→ベースを生録音して→ミックスダウンの時に指摘する部分ですよねっていう。
最初にベースの音量を変えても、他の修正をしたときにもう一度調整しなおすので二度手間です。
これが2、3回くらいだったら「まあ、編曲の工程がわからないかたもいらっしゃるよね」と思うんですけれども、
本当に毎回のようにそういうリテイクです。
毎回頼んでくれる人も違うわけですよ。でもどの編曲を受けても毎回同じようなリテイク。
もちろん、僕の言葉とか能力が足りないっていうこともあったと思うんですけど。
ラフで入れてるベースの音が一番気になるぐらいちっちゃかったかもしれないんですけど。
こういうことが多いので、初稿で「まずは方向性、雰囲気はいかがでしょうか」という一文を沿えるようになりました。
現在もたまに編曲の仕事をするとそういうリテイクが多いです。
逆に劇伴みたいなインストゥルメンタルは2、30曲に1回くらいリテイクぽいものがあるかな、という程度です。 全然リテイクの数が違います。
だから、おそらくは能力的なものじゃなくて、その場所で発生する現象なんじゃないかなと思っています。
で、リテイクが多いと心が削れていくんですよね。
イメージに沿って考えて細かく作り込んでも、リテイクが出て作り直しになる。
それが何回も続くと精神的にもきついんですよね。金額が上がってもキツいです。
頼んでくれるかたはこっち側の事情を配慮してくれる方っていないんですよね。頼んでくれるかたにすればいい作品を作りたいだけなので。
それを考えるとリテイクの回数はルールとして決めておくべきだったと思います。
僕も途中から度が過ぎた回数は追加料金いただきますよっていうことにはしてたんですけど。これはきっちり数字として決めた方がいいですね。
例えば、3回って決めておくと頼むほうもそれで決めなきゃって思っちゃうから、リテイクの内容ももっと慎重になるし、思考量が増えるので、リテイクの質も上がるはずです。
リテイク回数を決めておかなかった、というのも失敗。
・個人相手が商売としては難しい
個人を相手にした商売にしてしまったというのが難しい部分だったかなと思います。
・予算が少ない
さっき言ったように、編曲って単価を上げていくしか収入あげる手段がないんですよね。
ある程度の単価より上は企業からお金を出してもらうしかなくなってくると思うんですけど、そこで最初のコンセプト通り個人にこだわりすぎたのが良くなかった。
個人だと大量に作って売らなきゃいけないんだけれども、編曲だと作るのに時間がかかっちゃって大量にも作れない。
・個人は細かいところに突っ込みがち
個人のかたが相手だとこだわりが強くなりすぎちゃって、細かいところまで修正が来るといったんですが、
企業を相手に仕事をした方がリテイクが少ないんですよね。
いい意味で担当者の細かいこだわりがなくて、細かい部分は音楽家の方に任せてくれるんですよね。餅は餅屋みたいな感じで。
コンセプト自体も個人より練られていて、資料も多くて、なにを目指すのかというゴールもわかりやすい。
だから、おもしろいことに、企業相手のほうが考えることも深くなるし、遊びが入れやすいからクリエイティブなものが作りやすい傾向があります。
個人相手の方がただ相手の脳内を再現していくような感じで、遊びがあんまりないです。
だから個人を相手にするときは機械的、事務的な方が気持ち的にもいいかなと思います。
・個人は締め切りが無限
舞台とかゲームとかの企業の案件だったらリリースのデッドラインが絶対あるんですけど、個人は作品ができてからリリースするので、締め切りが無限に伸ばせるんですよね。
そうするとリテイクが多くなって時間も使うし、締切もどんどん伸びていって、売上が入ってくるのが遅くなるっていう、事業としては割と最悪な展開になります。
逆に時間がなくてすぐ作らなきゃいけないっていうくらいの方が集中するし、事業としては助かるんですよ。
最初に取り決めをする時にきちんと締め切りを決めるようにしておかなかったのも失敗です。
・個人相手はあとに繋がらなかった
編曲家はクレジットがあまり出ないっていうこと言われますけれども
個人だと5年くらい前までは楽曲自体をネット上に出してないという人が多かったんですよ。
CDをちょっとだけ作って終わりとか。配信するとなるとお金がかかってくるからやらないとか。配信自体を知らないとか。
自分で「この曲の編曲をやりました!」
って言ってもその曲が聞けないっていうことも多いし。
そのアーティスト自体がネット上にいない、みたいなことも多かったんですよね
だから、そこから次に繋がる事がほとんどない。
僕自体はいろんなマーケティング、広報の方法を知っているのに、頼む側のシンガーソングライターは全然展開をしてくれないっていう。
なぜそういう事が起こるのかというと、基本的にパソコンが使えないシンガーソングライターが僕にお願いしてきていたからです。
僕のクライアントは基本的にはパソコンはあまり使えないし、ネットもほとんど活用しないっていう人が多かったんですよね。
・一点集中できてなかった
ここからは音楽的なことになるんですけど、
僕の音楽の方向性としてはいろんな楽器を使っていろんなジャンルを混ぜて表現するというのがやりたかったし好きなので、 そこがポップスの編曲というものには相性が悪かったなと思います。
ポップスの編曲って楽器の種類とかリズムパターンとか、だいたいどういう風にするかというのは大枠では決まってるんですよね。
編曲を個人で依頼してくる方って、そのかたがいろんな曲を作った中で、この1曲を編曲してリリースしようみたいな感じになるので、自分の作った曲の中で一番王道で安全なものを選んでくる。
それはそうですよね。せっかく編曲家に頼むのに「ずっとドローンサウンドみたいのが流れてる上にうっすら変な歌声が乗ってる」みたいな曲は頼まない。
そうするとどうなるかというと、みんな曲調が似てくるんですよね。
誰から頼まれてもみんな同じような曲っていう。
特に昔はヒット曲が偏ってたのでそれもあるかもしれません。
僕がやりたかったのはいろんな楽器やリズムを使ったサウンドだったりするので、そのまったく逆のことが起こってきた。
なので、王道で特定の楽器やアレンジパターンの練度をもっと上げて突き抜けたほうがうまくいったんじゃないかなと思います。
主にギターかピアノがプレイヤーレベルで弾けた方がよかったなと。
そうすると、編曲の時間も短縮できるし、アイデアも出やすいし、演奏も映える。
ひとつの楽器が気持ちよく鳴っているとドラムとかシンプルでも別に気にならなくなったりとか、音数が少なくても成立したりとか 。そういうこともあるんですよね。
だから音楽的には一つの楽器をきちんと聴かせるっていうのが重要だったなと。
特に僕が請けてた仕事の価格帯っていうのは、外注で他の人に演奏を頼んで入れるって言うことはあんまりしなかったので、アレンジする自分がひとつ楽器を上手く演奏できると、外注もしなくていいし、かなり武器になったんじゃないかなと思います 。
一応ギターもベースもピアノもバンドをやっていたし、自分でレコーディングするくらいには弾けるっちゃ弾けるんですけれども、そんなに上手くはないわけですよ。僕くらいのレベルだったら中途半端ですね。
あと、一つの楽器が飛び抜けてできると、それが作風になるわけですよね。
僕はこんな編曲をしますよっていう。逆にこれしかできませんよっていう。
色んなアレンジを中途半端にできるよりも、これしかできませんっていうのを出していったほうが、客観的に見てどんな編曲をするのかもわかりやすいですよね。
僕はいろんな楽器で編曲ができますよっていう感じだったんですが、全部が中途半端すぎて、 結果どの編曲をやっても品質的に中途半端になっちゃうみたいなことが起こりました。
・精神的にキツかった
精神的にキツかった。
これは戦略上の失敗じゃないだろって思うかもしれないんですけど
精神的にキツいってのは失敗ですね。
金額をいくらもらってても精神的にきつい仕事をやるのは失敗です。
事業をやるなら精神的に楽な仕事をやるべきです。
元々、楽しく稼ぎたいから音楽家になっているのであって、きついのを我慢して仕事するっていうのはどうでもいいような適当なバイトをやってるのと変わらない。
編曲をやっていてバイトの方がマシだなって思う時もありました。
今みたいに他に安定した音楽の収入があれば、条件が悪いものは請けないっていう方法も取れたんですけど。
当時としては作曲家になろうと思ってなかったし、いろんなツールも揃ってなかったし他に道がなかったんですよね。
だからあの時どうすればよかったかな、って今考えてみても打開はなかなか難しかったなーと思います。
編曲をやっていてよかったところ
余談なんですけれども
編曲家として食えるようになるのは失敗しました。
でもそこから得たものもあります。
一つは、ラフの品質が高くなったことです。
リテイクで最初からベースの音量がちっちゃいとか、ミックスダウンの工程とかレコーディングの工程とかのことを言われるわけですね。
だから最初にラフを出す時点でミックスも大体できてて8割9割はサウンドができてる状態っていうものを提出するのが自然にできるようになりました。
ラフが作りこまれてるからそこから生楽器に差し替えてもミックスダウンしても大きくイメージが変わらないから、発注する側としても最終のイメージが変わらなくていいと思います。
でこれが今、舞台とかの他の仕事でめちゃくちゃ生かされてます。
で、未だに歌モノを作るのが苦手なので、舞台だと曲だけ他のかたに作ってもらって、アレンジは僕がやるって言う事もしてます。
だからプロデューサー的立場になって、自分が編曲をするために作曲をしてもらう側になったというのはおもしろい変化です。
おわりに
今回は僕が編曲家になろうとして失敗した理由というのを書きました。
もし編曲家になりたいと思ってる方がいたら僕の失敗談を参考にしてみてください。
で、ワールドスケープの編曲チーム 「Super dolphin」の話に戻ってくるんですけれども、
このチームは僕の失敗してきたところをけっこう潰してるんですよね。
リテイク回数や納期が決まっていたり、交渉する人も別にいたりとか、
音楽的にも大勢の人数がいてフォローしあうとか、
「あれ、僕にヒアリングしましたっけ」っていう内容になってます。
僕が誰と仕事しても同じようなリテイクみたいなことを話したんですけど、逆に、編曲をやっている人も僕と同じような失敗というか、悩みを持ってる人がたくさんいるんでしょうね。
「Super dolphin」は頼む方にとっても作る側にとっても、お互い気持ちよく作品が作れるシステムになってるんじゃないかなと思います。
それでいて価格もきちんと抑えられてる。
人が多いぶん人件費もかかるだろうし、正直、本当にこれは成り立つのかっていう低価格になっています。
これが予想より順調でも、莫大な利益が上がるのかと言うとちょっと難しい気はします。
だから本当に儲けよりも気持ちを優先しているチームなのだなと感じます。
個人のソングライター向け編曲サービスとして「Super dolphin」がうまくいくのかどうかを守っていきたいと思います。
◆編曲家チーム「Super dolphin」
https://superdolphin.frekul.com/