人工知能を使った自動マスタリングサービス『LANDR』を徹底研究してみた

公開日: : 最終更新日:2017/03/14 アプリ・webサービス

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人工知能を使った自動マスタリングサービス『LANDR』を徹底研究してみた

人工知能を使った自動マスタリングサービス『LANDR』がどのくらいの品質なのか、どこまでやってくれるのかを調べてみました。

ざっくり

・1曲を通してレベルがあまり変わらないような曲に向いている
・ミックスの印象はそのままで一定の音圧にできる
・大幅な質感の調整はやってくれない
・微調整ができない
・RMS-10dB、-12dB、-16dBの3段階の音圧設定
・0.3dBのマージン
・デモなど、軽いものに使おうとするとかえって時間がかかる
・クライアントワークには使いづらい
・アプリは毎回ログインしないといけない
・ニコニコ動画など、ラウドネス・ノーマライゼーションがないサイトのマスタリングには向かない
・コンピのマスタリングなど、質感の違うものを合わせるようなマスタリングはできない
・特定の音源でクリップが発生するが、再現性があるので取り除けない

音の印象はとてもいいです。特に盛り上がる場面での処理のしかたがうまく、自分でやるよりもいいのではないかと思えました。

2017年3月にアップデートが行なわれ、音質が向上したということで、将来的にも品質の向上に期待できるサービスですね。

ミックスの印象を変えずきれいに音圧を上げる

まずは音質ですが、ミックスの印象を変えずに微調整して音圧を出す、という方向性の処理ですね。

大幅な変更や、問題があるミックスを直してくれたりはしません。曲の質感を揃える、というようなコンピアルバムのマスタリングにも向きません。

逆に、質感を合わせたものならレベルを一定にしてくれるので、アルバムでもいけるかなと感じます。

曲調としては、1曲を通してレベルがあまり変わらないような曲に向いていると感じました。

きっちりと決まった音圧にしてくれるので、どうしても音圧が上がらないような曲なんかは、自分であれこれいじるよりもこっちに突っ込んだほうがきれいになりそうです。

その点では、LANDRを使う前提であれば、音圧をほとんど気にせずミックスできるというよさはありますね。

また、変更できる部分が音圧しかないので、割り切りも必要です。

自動サービスではなく他の人にお願いするときも、ある程度任せる部分があるので、その点は同じかなと思います。

うまく使うコツ

ミックスバランスだけに気を配る

LANDRの特性としては「ミックスのままの印象で一定の音圧を出してくれる」ので、最終的な音圧はあまり気にせず、ミックスバランスだけに気を配るとよいです。

ミックス時のダイナミクス系は音圧を出すというよりも、音づくりや聴きやすさを最適化するような使い方をしたほうがよいでしょう。

基本的には高音圧で

LANDRは音圧レベルを3段階で選べます。

具体的にはこれくらい

・高音圧(High) は RMS-10dB
・中音圧(Medium)は RMS-12dB
・低音圧(Low) は RMS-16dB

CDや配信であれば、高音圧でマスタリングすることになります。

ダイナミクスが大きい曲でなければ、元のファイルのレベルは関係なくこの音圧に揃えてくれます。この、常に同じ音圧で出力されるというのをうまく活用したいところ。

高音圧の時に美しくなるように逆算して音作りをするのが1つのコツですね。アルバムの場合は、ミックスダウンの段階で質感を合わせておく。

音楽素材マーケットプレイスで販売する、映像で使われるような、音圧がそんなに必要でない曲は、軽くリミッティングがかかる程度の中音圧で統一しておくと、購入した方も使いやすくていいかもしれないですね。

デスクトップアプリかブラウザ、使いやすいほうを使う

・デスクトップアプリは進行状況がわかりやすく、アップロード、ダウンロードまで自動、等。

・ブラウザ版は他のバージョンをすぐ作れる、等。

一長一短なので、自分の使い方に合ったほうを選びましょう。

どちらも毎回ログインする必要があり、めんどくさいので、ここは改善してほしいです。

ニコニコ動画など、ラウドネス・ノーマライゼーションがないサイトのマスタリングには向かない

ニコニコ動画は、音源ごとのラウドネスを揃える、ラウドネス・ノーマライゼーションがないため、なるべく音圧を突っ込んだほうがかっこよく聴こえます。というか音圧を上げないと他の曲に比べて迫力がなく聴こえる。

その点ではLANDRは最大で-10dB程度までしか音圧が出せないので、向いていません。

CDやYoutube、Sptifyなど、ラウドネス値を合わせてくれるサービスや、決まった音圧にしたい場合はうまくハマると思います。

クライアントワークには使いづらい

細かい調整ができないので、クライアントワークのような、リテイクが出る仕事には使いづらいです。リテイクが出るたびに毎回LANDRに通すのも時間がかかりますし。

ミックスまでOKをもらって、あとは質感を変えずに音圧だけ揃えて納品、という場面ではなかなかよいかなと思いますが。

小規模なゲームや映像用の音楽集で、音圧をそろえたい時などはいけそうですね。追加で発注されても同じ音圧にできるのがいい。

色々検証してみた

使いこなすためには、特性を知っておかなければ、ということでファイルを色々突っ込んでみました。

ロックではないが激しめの曲→良好

ジャズテイストな激しめの曲で、まだミックス途中のものを入れてみました。

とても印象がいいです。この精度だったら普通にリリースしてもいいくらい。

■マスタリング前。わりとばらつきがありますね。

■低音圧 波形の形はほとんど変わってないんですが、低音が太くなった印象。若干わざとらしいですが、ポップスだったらこのくらいの低音のほうがよさそう。

■中音圧 低音圧の時のようなローの太さもありつつ、自然に音圧が上がっています。

■高音圧 かなり音圧が上がっていますが自然です。

元のファイルをマキシマイザーに突っ込んだだけだと、一番盛り上がる場所でシンバルがうるさくなってボーカルが聴こえづらくなってしまうのですが、LANDRだと高域が落ち着いていてボーカルが良く聴こえます。

周波数のバランスを見てみます。

■マスタリング前。高音圧と同じレベルまで上げています。

■高音圧。低域と高域がなだらかに上がっていますね。はっきりと上げている感じではなく、元のミックスからあまり質感を変えないような感じです。

ポップスのバラード→良好

■マスタリング前。ダイナミクスにメリハリのあるバラードです。

■低音圧 そのまま上げている感じですね。音もほとんど変わっていません。

■中音圧 盛り上がっている部分だけリミッティングされている感じ。

■高音圧 少しコンプ臭くはなりましたが、問題ない感じです。こちらも激しめの曲と同じく、最も盛り上がる場所でシンバルがうるさくならずに、ボーカルが良く聴こえます。

他の場所でもドラムの音の硬さがなくなって、歌が聴きやすくなりました。そもそも音圧が上がりづらい曲だったので、自分でやるよりもよい結果なのでは、と感じました。

■マスタリング前 周波数

■高音圧 すこし高域が持ち上がってますね。高域は奥にいったように感じたのですが。ピークっぽいのは取れてないです。

デモ→ほとんどそのまま音圧だけ上がる

きちんとミックスしたものだとどのくらい補正してくれるのかわかりづらかったので、明らかに音が良くない、弾き語りのデモ段階のものを入れてみました。

■マスタリング前

■高音圧 モノのファイルはモノのままでマスタリングされるようです。音の印象は変わってないですね。

レンジが足りないせいか、他のものよりも音圧は低く、11、12dBくらいなんですが、潰し方はとても自然です。

■マスタリング前の周波数。mp3をデコードしたものなので、超高域がバッサリなくなってますね。

■高音圧 ほんの少し低音域があがっているだけで、全体的にはほとんど変わってないですね。元のファイルから大きく補正をかけてくれるということはないようです。

クラシック→苦手

サン=サーンス「死の舞踏」の打ち込みで試してみました。

■マスタリング前 かなりダイナミクスがあります。

■高音圧 でマスタリング後。ほとんど変わってないですね。一番音量が大きい場所だけ少しリミッティングされている感じ。

周波数のバランスもほぼ変わっておらず、オーケストラにはあまり効果的ではないなと感じました。

たまに音量が大きく上がるような、ゆったりした曲では特定の音源でクリップが発生してしまうことがありますね。しかも再現性があり、何度やっても取り除けないので、元の音源を修正するか、他の方法でマスタリングするしかないようです。

料金

スタジオにマスタリングをお願いすると1曲5000円~ですが、LANDRだと~4000円で複数曲のマスタリングができます。

アルバムを作るときに1ヵ月だけ契約してLANDRに音圧をそろえてもらう、というのはなかなかアリだと思います。

どういう人がLANDRを使うとよいか

自分自身の作品かつ、予算をかけられない場面が一番よさそうですね。

細かいケアができないので、ミックスがうまい人が使ったほうがいいと思うのですが、うまい人は自分でマスタリングもできるというジレンマはあります。

マスタリングは好みもありますが「どのシステムでも聴いても問題ない」というような、客観的な視点も求められます。その点では、自分でできる人も、自動といえど外部に任せちゃうというのはなかなかアリなのではないかなと思いました。

僕自身は微妙なところで、続けて使うのかめちゃくちゃ悩んでます。やはりネックなのは料金ですね。自分でマスタリングをやるより劇的によくなるのか、というとそうでもないですし。今回の研究で使い方を理解できたので、もうちょっと使ってみようと思ってますが。

おわりに

ジャンルや質感の指定ができたり、複数曲の質感をそろえてくれる、みたいな機能が増えたら神に近づくと思います。

LANDRのつづりは「L and R」と覚えるとよいですよ!ではでは。

リンク

■LANDR

 
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